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『夏目漱石最後の〈笑い〉『明暗』の凡常』 1  細谷博 著 進典社 南山大学学術業書    メモ

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二月、青蓮院(京都)にて

 

 

 

『夏目漱石最後の〈笑い〉『明暗』の凡常』 1  細谷博 著 進典社 南山大学学術業書   メモ

 

 

 夏目漱石の『明暗』の雰囲気がわかり始めたので、『夏目漱石最後の〈笑い〉『明暗』の凡常』を読み始める。

 というか恥ずかしい話だが、十代の頃『明暗』を読んでいた事を、〈お延〉それにも増して、〈吉川の細君〉との会話が始まったところで思い出した。

 夏目漱石の有名な小説は十代でほとんど読んだと記録しているが、『明暗』もそのうちの一冊だった。

 だが、読み方が悪く、理解はおろか覚えていないのが、本当のところ。

 夏目漱石は書生に対しての言動で、私の場合はこの作家の多くを読むことは断念したことを覚えているが、今となっては些細なことだった。

『明暗』は実に面白い。

 そして、『明暗』を取り上げられた『夏目漱石最後の〈笑い〉『明暗』の凡常』は実に丁寧に読者に語りかけ、読書の姿勢を促す。

 

 まだじゅわまでしか読めてない『明暗』だが、面白く感じたところ、奇妙だと思ったところなど興味の持った箇所を、本書は説明してくださっている。

 例えば、私の場合、

  実際に読んでみればー何度も繰り返すが『明暗』は大変面白い小説。それは一見重厚と見えて、実におかしみに満ちている。皮肉で飄々とした軽みを持ち、自在で軽快な流れと見えながら、なおかつシリアスな追いかけもはらんでいる。(31)

とある。

 まだ小説の重話までだか、上のような内容は、津田と妻のお延との会話でさえ感じ取れる。

 二人の会話と態度がかみ合っているのかいないのか、リアルなのかリアルでないのかがわからないほど面白く、読者の私はお延の言葉を〈劇中劇〉のようにさえ感じてしまった。

 

  また『明暗』は、たんに 事実のありそうなリアリティを追求しただけの小説ではなく、より意識的な〈巧まれた世界〉を見ることができる。(45)

とも記されている。

 

 

 吉川夫人

   津田の援護者、且つ、お延の天敵  (38)

 上にも書いたが、この〈吉川の細君〉で、読んだことを思い出した。

 

 

 

 最後に『夏目漱石最後の〈笑い〉『明暗』の凡常』第一生を読んで、好きな言葉があったので、記録しておきたい。

 

 人は誰しも自身を感受している。そして「自分」という意識をひたすらに把持し、保とうと欲する。そうした、逃れようもない自己意識の轡縛の下に置かれたものの裡に、しばしば生じるものが孤立であり、孤独である。それは、現代のわれわれにとっては、ごく当たり前の自己の感触の一部であり、生の証しとさえ感じられるものだが、ともするとそこには「恐ろしい魔の支配する」深みが口を開くというものだ。  (23)

 

 

 

 

 

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