『明暗』4 夏目漱石全集 8 筑摩全集類聚 昭和46年 〈十話〉まで
「ところが癒らない。愈(いよいよ)厄介なことになっちまった」 6
といい、妻の話を聞き捨てて表へ出る。
「でもそれは悪いわ、貴方。せっかくああ云って呉れるものを断っちゃ」 7
と、芝居を断るのをためらう妻。
状況が状況だけに、アクセントをつければ、喜劇にもなりうる。
私のような一般凡人にはリアリティのない内容で、劇ちゅ劇のように感じてしまう妻。
妻の名は、「お延」 9
お延が一概に津田の依頼を退けたのは、夫に同情がないというよりも、寧ろ岡本に対する見栄に制せられたのだという事が漸く津田の腑に落ちた。 13
岡本
お延の叔父
芝居の券を津田、お延夫婦に進呈しようとしていた人物。
吉川 14
お延側の重役
ここでも『夏目漱石最後の〈笑い〉 『明暗』の凡常』が役に立つ。関係性がわかりやすい。
事実を言うと津田は吉川よりも却って細君の方と懇意であった。足を此処まで運んで来る途中の頭の中には、既に最初から細君に会おうという気分が大分働いていた。 15
リアリティに欠けるシャボン玉のような妻に対して、えらくリアルな男性心理ではないかと思わせ、女性が読むと多少ハラハラさせる表現。
津田と吉川の細君との一件サバサバとした会話で、〈十話〉は終了する。
『悪夢』1857年
フレディック・サンディーズ
ビクトリア・アンド・アルパート博物館
あべのハルカス美術館「アリス展」にて
今回の美術展の中で『悪夢』と、ダリの作品(3点ほど)が好きでした。
『明暗』4 夏目漱石全集 8 筑摩全集類聚 昭和46年 332ページ
『夏目漱石最後の〈笑い〉 『明暗』の凡常』 細谷博 著 進典社 南山大学学術業書
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