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『絵入 好色一代男』八全之内 巻一 五 煩悩(ほんのう)の垢(あか)かき 【1】十六丁オ 井原西鶴

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 絵入  好色一代男   八前之内 巻一  井原西鶴
 天和二壬戌年陽月中旬 
 大阪思案橋 孫兵衞可心板



  『絵入 好色一代男』八全之内 巻一 五 煩悩(ほんのう)の垢(あか)かき 【1】十六丁オ 井原西鶴

 

十三夜の月、待宵(まつよい)めいげつ、いつくハ、あれと須磨(すま)は

殊更と、波(なみ)爰元(こゝもと)に、借(か)りきりの小舟(こぶね)、和田(わだ)の御崎

をめくれは、角(つの)の松原塩屋(まつはらしおや)といふ所ハ、敦盛(あつもり)をとつて

おさえて、熊谷(くまかへ)が付さしせしとほり、源氏酒(けんじさけ)と、たハ

ふれしもと、笑(わら)ひて、海(うみ)すこし見わたす、浜庇(はまひさし)に

舎(やど)りて、京よりもたさる、舞鶴(まいつる)花橘(はなたちはな)の

口をきりて、宵(よい)の程ハなくさむ業(わざ)も、次第(したい)に、月さへ

物すこく、一羽の声(こゑ)ハ、つまなし鳥かと、なを淋(さい)しく

一夜も、只ハ暮らし難(かた)し、若ひ蜑(あま)人ハないかと、有ものに

まねかせててみるに、髪(かみ)に指櫛(さしくし)もなく、顔(かほ)に何(なに)塗(ぬる)事も

 

十三夜の月、待宵名月、何處はあれど、須磨は

殊更と、波 爰元に、借りきり小舟、和田の御崎

をめくれば、角の松原塩屋といふ所ハ、敦盛をとつて

おさえて、熊谷(くまがへ くまがいか)源氏酒(げんじさけ)と、戯

れしもと、笑いて、海少し見わたす、浜庇(はまびさし)に

舎(やど)りて、京よりもたさる、舞鶴(まいづる)花橘(はなたちばな)の

口をきりて、宵(よい)の程ハ 慰む業(わざ)も、次第(しだい)に、月さへ

物すこく、一羽の声(こゑ)ハ、妻無し鳥かと、尚 淋(さい→さみ 掛詞)しく

一夜も、只ハ暮らし難(がた)し、若い蜑(あま)人ハ無いかと、有(無、有 掛詞)ものに

招かせててみるに、髪に指櫛(さしくし)も無く、顔(かお)に何塗(ぬる)事も

 

源氏酒(げんじさけ)  大辞林

 〘名〙 酒席での遊びの一つ。二組に分かれて、「源氏物語」の巻の名を挙げながら酒杯のやりとりをするものと、源平の二組に分かれて、それぞれの武将の名を名のりながら酒杯のやりとりをするものとの二つの方法がある。源氏酒盛り。  ※咄本・私可多咄(1671)一「むかし、かぶきの子共をあつめ、源氏酒(ゲンジざけ)しけるに」

浜庇(はまびさし)

 《万葉集・二七五三の「浜久木(はまひさぎ)」の表記を伊勢物語で読み誤ってできた語という》

 (はまびさし)浜辺の家のひさし。また、浜辺の家。多く「久し」の序詞として用いられる。
 「浪間より見ゆる小島の―久しくなりぬ君に逢ひ見で」〈伊勢・一一六

蜑(あま) 【海人 蜑】

 魚介とったり藻塩焼いたりするのを業とする者。漁師古く海部(あまべ)に属した。あまびと。いさりびと。 「 -の釣舟古今 羇旅




『絵入 好色一代男』八全之内 巻一 五 煩悩(ほんのう)の垢(あか)かき 

【1】十六丁オ 井原西鶴

十三夜の月、待宵(まつよい)めいげつ、いつくハ、あれと須磨(すま)は

殊更と、波(なみ)爰元(こゝもと)に、借(か)りきりの小舟(こぶね)、和田(わだ)の御崎

をめくれは、角(つの)の松原塩屋(まつはらしおや)といふ所ハ、敦盛(あつもり)をとつて

おさえて、熊谷(くまかへ)が付さしせしとほり、源氏酒(けんじさけ)と、たハ

ふれしもと、笑(わら)ひて、海(うみ)すこし見わたす、浜庇(はまひさし)に

舎(やど)りて、京よりもたさる、舞鶴(まいつる)花橘(はなたちはな)の

口をきりて、宵(よい)の程ハなくさむ業(わざ)も、次第(したい)に、月さへ

物すこく、一羽の声(こゑ)ハ、つまなし鳥かと、なを淋(さい)しく

一夜も、只ハ暮らし難(かた)し、若ひ蜑(あま)人ハないかと、有ものに

まねかせててみるに、髪(かみ)に指櫛(さしくし)もなく、顔(かほ)に何(なに)塗(ぬる)事も

 

十三夜の月、待宵名月、何處はあれど、須磨は

殊更と、波 爰元に、借りきり小舟、和田の御崎

をめくれば、角の松原塩屋といふ所ハ、敦盛をとつて

おさえて、熊谷(くまがへ くまがいか)源氏酒(げんじさけ)と、戯

れしもと、笑いて、海少し見わたす、浜庇(はまびさし)に

舎(やど)りて、京よりもたさる、舞鶴(まいづる)花橘(はなたちばな)の

口をきりて、宵(よい)の程ハ 慰む業(わざ)も、次第(しだい)に、月さへ

物すこく、一羽の声(こゑ)ハ、妻無し鳥かと、尚 淋(さい→さみ 掛詞)しく

一夜も、只ハ暮らし難(がた)し、若い蜑(あま)人ハ無いかと、有(無、有 掛詞)ものに

招かせててみるに、髪に指櫛(さしくし)も無く、顔(かお)に何塗(ぬる)事も

 

 

 

 


『The Tooth and the Nail 復讐のトリック』2017年 韓国 109分 監督:チョン・シク、キム・フィ

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 『The Tooth and the Nail 復讐のトリック』2017年 韓国 109分 監督:チョン・シク、キム・フィ

 

 韓国映画の『The Tooth and the Nail 復讐のトリック』を見た。

 逆光や光の捉え方が美しい。

 画面及び話の展開重厚。私は興味深く感じた。

 最後の三度の繰り返しの言葉(内容)、

「僕が彼女を愛したんだ…(要約)」

としたしみじみとした台詞(字幕)と表情が印象深い。

 

 今回も記録のみにて失礼いたします。

 

以下はwowow公式HP ▼

監督 チョン・シク 監督 キム・フィ 脚本 チョン・シク 脚本 イ・ジョンホ 撮影 ユン・ジョンホ 音楽 キム・ジュンソク 音楽 キル・チャンウク

死体なき奇怪な殺人事件をめぐって、息詰まる法廷ドラマが展開。やがてその背後に浮かび上がる事件の意外な真相とは? 「天命の城」のコ・ス主演の韓国製娯楽サスペンス。

1947年、韓国のソウル。ある晩、凄惨な殺人事件が起きたと匿名の通報があり、現場に駆けつけた警察は切断された指を発見。遺体は既に火炉の中ですっかり焼き尽くされていた。お抱え運転手のチェ・スンマンを殺害した容疑で資産家のナム・ドジンが逮捕されて、やがて裁判が始まり、遺留品や複数の証人をもとにドジンの有罪を立証しようとする検事と、無罪を主張するドジン側の弁護団との間で激しい攻防戦が繰り広げられていく。

 

役名 役者名 イ・ソクジン/チェ・スンマン コ・ス ナム・ドジン キム・ジュヒョク ソン・テソク パク・ソンウン ユン・ヨンファン ムン・ソングン チョン・ハヨン イム・ファヨン

『絵入 好色一代男』八全之内 巻一 五 煩悩(ほんのう)の垢(あか)かき 【2】十六丁ウ 井原西鶴

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 絵入  好色一代男   八前之内 巻一  井原西鶴
 天和二壬戌年陽月中旬 
 大阪思案橋 孫兵衞可心板



  『絵入 好色一代男』八全之内 巻一 五 煩悩(ほんのう)の垢(あか)かき 【2】十六丁ウ 井原西鶴

 

しらず、袖(そて)ちいさく、裾(すそ)みぢかく、わけもなふ磯くさく、こゝち

よからざりしを、延齢丹(ゑんれいたん)などにて、胸(むね)おさえ、「昔(むか)し行平(ゆきひら)

何(なに)ものにか、足(あし)さすらせ、気をとらせ給ひ、あまつさへ

別(わかれ)にか、香(かう)包(つゝみ)、衛士籠(ゑじかご)しやくし、擂鉢(すりはち)三とせの世帯道(だう)

具まで、とらされけるよ」と、又の日ハ、兵庫(ひやうご)迄(まで)来(き)て、遊女(ゆうちよ)

の有様、昼夜(ちうや)のわかちありて、半(はん)夜と、せハしく

かきり定めるハ、今にも此(この)津(つ)ハ、風にまかする身(み)とて

、舟子(ふなこ)のよびたる声(こゑ)に、小歌(こうた)を聞(きゝ)さし、或(あるい)は

戴(いたゞひ)て、さし捨(すて)にして行ハ、こゝろのこすハ、のこる

べし、何とやら騒々(そう/″\)しく、是(これ)によこるゝもと、すぐに

風呂(ふろ)に入て、「名(な)のたゝば、水(みず)さします」なとと、口びるそつて

 

知らず、袖(そで)小さく、裾(すそ)短く、訳も無う磯臭く、心地

良からざりしを、延齢丹(えんれいたん)などにて、胸(むね)おさえ、「昔 行平(ゆきひら)

何者にか、足さすらせ、気をとらせ給い、あまつさへ

別れにか、香包(こうづつみ)、衛士籠(えじかご)杓子、擂鉢(すりばち)、三年(みとせ)の世帯道

具まで、とらされけるよ」と、又の日ハ、兵庫(ひょうご)迄来て、遊女(ゆうじょ)

の有様、昼夜のわかちありて、半夜と、せわしく

かぎり定めるは、今にも此(この)津(つ)は、風に任まかする身(み)とて

、舟子(ふなこ)の呼びたる声に、小歌(こうた)を聞きさし、或は

戴(いただい)て、さし捨てにして行くは、心残すハ、残る

べし、何とやら騒々しく、是(これ)によこるるもと、すぐに

風呂に入て、「名のたたば、水 さします」などと、口びるそって

 

 

延齢丹(えんれいたん)   大辞林

 江戸時代の健康常備薬。曲直瀬道三(まなせどうさん)の養子 玄朔(げんさく)の創製  

曲直瀬道三(まなせどうさん)    大辞林

 (1507~1594) 安土桃山の医者。京都生まれ。号、翠竹院、盍静翁(こうせいおう)など。

 正親(お荻町)天皇や足利義輝の寵遇を受ける。

 京都にに医学舎啓迪院(けいてきいん)を設立。

玄朔(げんさく)   ウィキペディア

 曲直瀬 玄朔(まなせ げんさく、天文18年 (1594) - 寛永年(1632))は、安土桃山時代、江戸時代の医師。義父は曲直瀬道三。

あまつさへ (剰え)副詞

 ①そればかりか。 出典平家物語 一・鱸 「あまっさへ丞相(しようじやう)の位にいたる」[訳] そればかりか大臣の位に至る。

 ②事もあろうに。 出典平家物語 一一・文之沙汰 「あまっさへ封をも解かず」[訳] 事もあろうに封も解かずに。    参考「あまりさへ」の促音便。現代語では音便の意識がなくなって「あまつさえ」となったが、古文では「アマッサエ」と促音で読む。   衛士籠(えじかご 籠、篭)〔衛士がたくかがり火の籠に形が似るところから〕    空薫そらだきに用いる道具。一寸(約3センチメートル)四方ほどの網に香をのせて針金の鉤かぎにかけ、火鉢などに刺して用いる。   舟子(ふなこ)  船子、舟子    船頭の指揮の下にある水夫。船人。水手かこ。水主。 「楫取かじとり、-どもに曰いわく/土左」   名のたたば   大辞林   (浮世が立ったら) (「名のたたば、水 さします」は湯に埋める、浮世がたつにかけてある)

 



『絵入 好色一代男』八全之内 巻一 五 煩悩(ほんのう)の垢(あか)かき 

【1】十六丁オ 井原西鶴

十三夜の月、待宵(まつよい)めいげつ、いつくハ、あれと須磨(すま)は

殊更と、波(なみ)爰元(こゝもと)に、借(か)りきりの小舟(こぶね)、和田(わだ)の御崎

をめくれは、角(つの)の松原塩屋(まつはらしおや)といふ所ハ、敦盛(あつもり)をとつて

おさえて、熊谷(くまかへ)が付さしせしとほり、源氏酒(けんじさけ)と、たハ

ふれしもと、笑(わら)ひて、海(うみ)すこし見わたす、浜庇(はまひさし)に

舎(やど)りて、京よりもたさる、舞鶴(まいつる)花橘(はなたちはな)の

口をきりて、宵(よい)の程ハなくさむ業(わざ)も、次第(したい)に、月さへ

物すこく、一羽の声(こゑ)ハ、つまなし鳥かと、なを淋(さい)しく

一夜も、只ハ暮らし難(かた)し、若ひ蜑(あま)人ハないかと、有ものに

まねかせててみるに、髪(かみ)に指櫛(さしくし)もなく、顔(かほ)に何(なに)塗(ぬる)事も

十三夜の月、待宵名月、何處はあれど、須磨は

殊更と、波 爰元に、借りきり小舟、和田の御崎

をめくれば、角の松原塩屋といふ所ハ、敦盛をとつて

おさえて、熊谷(くまがへ くまがいか)源氏酒(げんじさけ)と、戯

れしもと、笑いて、海少し見わたす、浜庇(はまびさし)に

舎(やど)りて、京よりもたさる、舞鶴(まいづる)花橘(はなたちばな)の

口をきりて、宵(よい)の程ハ 慰む業(わざ)も、次第(しだい)に、月さへ

物すこく、一羽の声(こゑ)ハ、妻無し鳥かと、尚 淋(さい→さみ 掛詞)しく

一夜も、只ハ暮らし難(がた)し、若い蜑(あま)人ハ無いかと、有(無、有 掛詞)ものに

招かせててみるに、髪に指櫛(さしくし)も無く、顔(かお)に何塗(ぬる)事も

【2】十六丁ウ 井原西鶴

しらず、袖(そて)ちいさく、裾(すそ)みぢかく、わけもなふ磯くさく、こゝち

よからざりしを、延齢丹(ゑんれいたん)などにて、胸(むね)おさえ、「昔(むか)し行平(ゆきひら)

何(なに)ものにか、足(あし)さすらせ、気をとらせ給ひ、あまつさへ

別(わかれ)にか、香(かう)包(つゝみ)、衛士籠(ゑじかご)しやくし、擂鉢(すりはち)三とせの世帯道(だう)

具まで、とらされけるよ」と、又の日ハ、兵庫(ひやうご)迄(まで)来(き)て、遊女(ゆうちよ)

の有様、昼夜(ちうや)のわかちありて、半(はん)夜と、せハしく

かきり定めるハ、今にも此(この)津(つ)ハ、風にまかする身(み)とて

、舟子(ふなこ)のよびたる声(こゑ)に、小歌(こうた)を聞(きゝ)さし、或(あるい)は

戴(いたゞひ)て、さし捨(すて)にして行ハ、こゝろのこすハ、のこる

べし、何とやら騒々(そう/″\)しく、是(これ)によこるゝもと、すぐに

風呂(ふろ)に入て、「名(な)のたゝば、水(みず)さします」なとと、口びるそつて

知らず、袖(そで)小さく、裾(すそ)短く、訳も無う磯臭く、心地

良からざりしを、延齢丹(えんれいたん)などにて、胸(むね)おさえ、「昔 行平(ゆきひら)

何者にか、足さすらせ、気をとらせ給い、あまつさへ

別れにか、香包(こうづつみ)、衛士籠(えじかご)杓子、擂鉢(すりばち)、三年(みとせ)の世帯道

具まで、とらされけるよ」と、又の日ハ、兵庫(ひょうご)迄来て、遊女(ゆうじょ)

の有様、昼夜のわかちありて、半夜と、せわしく

かぎり定めるは、今にも此(この)津(つ)は、風に任まかする身(み)とて

、舟子(ふなこ)の呼びたる声に、小歌(こうた)を聞きさし、或は

戴(いただい)て、さし捨てにして行くは、心残すハ、残る

べし、何とやら騒々しく、是(これ)によこるるもと、すぐに

風呂に入て、「名のたたば、水 さします」などと、口びるそって

 

 

 

『絵入 好色一代男』八全之内 巻一 五 煩悩(ほんのう)の垢(あか)かき 【3】十七丁ウ 井原西鶴

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 絵入  好色一代男   八前之内 巻一  井原西鶴
 天和二壬戌年陽月中旬 
 大阪思案橋 孫兵衞可心板



  『絵入 好色一代男』八全之内 巻一 五 煩悩(ほんのう)の垢(あか)かき 【3】十七丁ウ 井原西鶴

  

中高(なかたか)なる顔にて、秀句(しうく)よくいへる女あり、とらえて、

「御名(な)ゆかしき」と問(と)へば、忠度(たゞのり)と申、「いか様 是を只(ただ)は

置(をか)れじ」と、うす約束(やくそく)するよりはや、あがり湯(ゆ)の

、くれやう、ちらしをのませ、浴衣(ゆかた)の取(とり)さばき、火入(ひいれ)に

気(き)をつけ、鬢水(びんみづ)を運(はこ)び、鏡(かゞみ)かすやら、其(その)もてなし

、何国(いづく)も替(かは)る事(こと)なし、風義(ふうぎ)ハ、ひとつきる物、つまたるに、

白帯(しろおび) こゝろまゝ引しめ、「やれたらば 親(おや)方のそん、

久三、提灯(てうちん)ともしや」と、いふかた手に、草履(ざうり)取出し

くゞり戸(ど)出まわり、調子高(てうし たか)に、はうばいを譏(そし)り、

朝夕の、汁(しる)がうすひの、「はさみを、くれる筈(はず)じやが、

たるゝか、しらぬ」と、ひとつとして、聞(きく)べき事にもあらバ

 

中高(なかたか)なる顔にて、秀句(しゅうく)よく言える女あり、とらえて、

「御名(な)ゆかしき」と問えば、忠度(たゞのり)と申、「いか様(さま) 是を只(ただ)は

置れじ」と、うす約束するより早、あがり湯の

くれやう、ちらしを飲ませ、浴衣の取りさばき、火入れに

気を付け、鬢水(びんみず)を運び、鏡かすやら、其 もてなし

、何国(いづく)も替る事なし、風儀(ふうぎ)は、ひとつ きる物、妻たるに

白帯(しろおび) 心(の)まま引きしめ、「やれたらば 親方の損、

久三、提灯 灯しゃ」と、言う片手に、草履 取出し

潜り戸(ど)いでまわり、調子高 に、はうばいを譏(そし)り、

朝夕の、汁が薄いの、「はさみを、くれる筈じゃが、

足るるか知らんと、ひとつとして、聞くべき事にもあらば

 

中高

 1 中央が小高く盛り上がって、周囲が低くなっていること。また、そのさま。「料理を中高に盛る」

 2 鼻筋が通って整った顔であること。また、そのさま。「中高な(の)面立ち」

中高(なかたか)なる顔

 鼻筋が通って整った顔

ゆかし 形容詞シク活用   古語辞典  ①見たい。聞きたい。知りたい。  出典徒然草 一三七  ②心が引かれる。慕わしい。懐かしい。  出典野ざらし 俳文   御名ゆかしき  お名前をお聞きしたい   忠度  (平忠度)  平安時代の平家一門の武将。平清盛の異母弟。  謡曲『忠度』有り。   如何様(いかさま)  いかにもその者らしい の意。偽物。まがい物。 ( 副 )  ① かなりの確率を抱きながら、推測する場合に用いる。いかにも。きっと。恐らく。   ② 決意を表す語。きっと。  (形動ナリ)  どのよう。いかよう。いかよう。 ( 感 )  なるほど。いかにも。  如何様(いかよう)と読む場合は、
 どのようにも、どんなふうでも、といった意味の表現。

只(ただ)は置(をか)れじ

 只(ただ)は、忠信の掛詞

ちらし

 線香、こがし

浴衣(ゆかた)の取(とり)さばき

 「浴衣(ゆかた)の取(とり)さばき」という言葉で、片岡仁左衛門の鯔背なゆかたの着こなし(浴衣を宙にさっ!と 広げ上げて、両手を通し、浴衣を着る)を思い浮かべた。

風義(ふうぎ) 

 風儀のこと

はうばい(朋輩) 

 なかま。友だち

 

 



『絵入 好色一代男』八全之内 巻一 五 煩悩(ほんのう)の垢(あか)かき 

【1】十六丁ウ 井原西鶴

十三夜の月、待宵(まつよい)めいげつ、いつくハ、あれと須磨(すま)は

殊更と、波(なみ)爰元(こゝもと)に、借(か)りきりの小舟(こぶね)、和田(わだ)の御崎

をめくれは、角(つの)の松原塩屋(まつはらしおや)といふ所ハ、敦盛(あつもり)をとつて

おさえて、熊谷(くまかへ)が付さしせしとほり、源氏酒(けんじさけ)と、たハ

ふれしもと、笑(わら)ひて、海(うみ)すこし見わたす、浜庇(はまひさし)に

舎(やど)りて、京よりもたさる、舞鶴(まいつる)花橘(はなたちはな)の

口をきりて、宵(よい)の程ハなくさむ業(わざ)も、次第(したい)に、月さへ

物すこく、一羽の声(こゑ)ハ、つまなし鳥かと、なを淋(さい)しく

一夜も、只ハ暮らし難(かた)し、若ひ蜑(あま)人ハないかと、有ものに

まねかせててみるに、髪(かみ)に指櫛(さしくし)もなく、顔(かほ)に何(なに)塗(ぬる)事も

十三夜の月、待宵名月、何處はあれど、須磨は

殊更と、波 爰元に、借りきり小舟、和田の御崎

をめくれば、角の松原塩屋といふ所ハ、敦盛をとつて

おさえて、熊谷(くまがへ くまがいか)源氏酒(げんじさけ)と、戯

れしもと、笑いて、海少し見わたす、浜庇(はまびさし)に

舎(やど)りて、京よりもたさる、舞鶴(まいづる)花橘(はなたちばな)の

口をきりて、宵(よい)の程ハ 慰む業(わざ)も、次第(しだい)に、月さへ

物すこく、一羽の声(こゑ)ハ、妻無し鳥かと、尚 淋(さい→さみ 掛詞)しく

一夜も、只ハ暮らし難(がた)し、若い蜑(あま)人ハ無いかと、有(無、有 掛詞)ものに

招かせててみるに、髪に指櫛(さしくし)も無く、顔(かお)に何塗(ぬる)事も

【2】十七丁オ 井原西鶴

しらず、袖(そて)ちいさく、裾(すそ)みぢかく、わけもなふ磯くさく、こゝち

よからざりしを、延齢丹(ゑんれいたん)などにて、胸(むね)おさえ、「昔(むか)し行平(ゆきひら)

何(なに)ものにか、足(あし)さすらせ、気をとらせ給ひ、あまつさへ

別(わかれ)にか、香(かう)包(つゝみ)、衛士籠(ゑじかご)しやくし、擂鉢(すりはち)三とせの世帯道(だう)

具まで、とらされけるよ」と、又の日ハ、兵庫(ひやうご)迄(まで)来(き)て、遊女(ゆうちよ)

の有様、昼夜(ちうや)のわかちありて、半(はん)夜と、せハしく

かきり定めるハ、今にも此(この)津(つ)ハ、風にまかする身(み)とて

、舟子(ふなこ)のよびたる声(こゑ)に、小歌(こうた)を聞(きゝ)さし、或(あるい)は

戴(いたゞひ)て、さし捨(すて)にして行ハ、こゝろのこすハ、のこる

べし、何とやら騒々(そう/″\)しく、是(これ)によこるゝもと、すぐに

風呂(ふろ)に入て、「名(な)のたゝば、水(みず)さします」なとと、口びるそつて

知らず、袖(そで)小さく、裾(すそ)短く、訳も無う磯臭く、心地

良からざりしを、延齢丹(えんれいたん)などにて、胸(むね)おさえ、「昔 行平(ゆきひら)

何者にか、足さすらせ、気をとらせ給い、あまつさへ

別れにか、香包(こうづつみ)、衛士籠(えじかご)杓子、擂鉢(すりばち)、三年(みとせ)の世帯道

具まで、とらされけるよ」と、又の日ハ、兵庫(ひょうご)迄来て、遊女(ゆうじょ)

の有様、昼夜のわかちありて、半夜と、せわしく

かぎり定めるは、今にも此(この)津(つ)は、風に任まかする身(み)とて

、舟子(ふなこ)の呼びたる声に、小歌(こうた)を聞きさし、或は

戴(いただい)て、さし捨てにして行くは、心残すハ、残る

べし、何とやら騒々しく、是(これ)によこるるもと、すぐに

風呂に入て、「名のたたば、水 さします」などと、口びるそって

【3】十七丁ウ

中高(なかたか)なる顔にて、秀句(しうく)よくいへる女あり、とらえて、

「御名(な)ゆかしき」と問(と)へば、忠度(たゞのり)と申、「いか様 是を只(ただ)は

置(をか)れじ」と、うす約束(やくそく)するよりはや、あがり湯(ゆ)の

、くれやう、ちらしをのませ、浴衣(ゆかた)の取(とり)さばき、火入(ひいれ)に

気(き)をつけ、鬢水(びんみづ)を運(はこ)び、鏡(かゞみ)かすやら、其(その)もてなし

、何国(いづく)も替(かは)る事(こと)なし、風義(ふうぎ)ハ、ひとつきる物、つまたるに、

白帯(しろおび) こゝろまゝ引しめ、「やれたらば 親(おや)方のそん、

久三、提灯(てうちん)ともしや」と、いふかた手に、草履(ざうり)取出し

くゞり戸(ど)出まわり、調子高(てうし たか)に、はうばいを譏(そし)り、

朝夕の、汁(しる)がうすひの、「はさみを、くれる筈(はず)じやが、

たるゝか、しらぬ」と、ひとつとして、聞(きく)べき事にもあらバ

中高(なかたか)なる顔にて、秀句(しゅうく)よく言える女あり、とらえて、

「御名(な)ゆかしき」と問えば、忠度(たゞのり)と申、「いか様(さま) 是を只(ただ)は

置れじ」と、うす約束するより早、あがり湯の

くれやう、ちらしを飲ませ、浴衣の取りさばき、火入れに

気を付け、鬢水(びんみず)を運び、鏡かすやら、其 もてなし

、何国(いづく)も替る事なし、風儀(ふうぎ)は、ひとつ きる物、妻たるに

白帯(しろおび) 心(の)まま引きしめ、「やれたらば 親方の損、

久三、提灯 灯しゃ」と、言う片手に、草履 取出し

潜り戸(ど)いでまわり、調子高 に、はうばいを譏(そし)り、

朝夕の、汁が薄いの、「はさみを、くれる筈じゃが、

足るるか知らんと、ひとつとして、聞くべき事にもあらば

 

 

 

『絵入 好色一代男』八全之内 巻一 五 煩悩(ほんのう)の垢(あか)かき 【4】十八丁オ 井原西鶴

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 絵入  好色一代男   八前之内 巻一  井原西鶴
 天和二壬戌年陽月中旬 
 大阪思案橋 孫兵衞可心板



  『絵入 好色一代男』八全之内 巻一 五 煩悩(ほんのう)の垢(あか)かき 【4】十八丁オ 井原西鶴

  

座敷(さしき)に入さまに、置わたを壁(かへ)につき、立ながらあん

どんまハして、すこし小闇(こぐら)き、中程(ほと)にざして、

雁首(がんくひ)、火になる程(ほと)はまさず、おり/\あくびして

用捨(ようしや)もなく、小便(せうへん)に立、障子(しやうし)引たつるさまも、物(もの)

あらく、からだを横(よこ)に置(をき)ながら、屏風(べうぶ)へだてたる

かたへ、咄(はな)しを仕懸(しかけ)みもだへして、蚤(のみ)をさがし

夜半(よはん)、八つの、鐘(かね)のせんさく、我かこゝろにそまぬ

事ハ、返事(へんじ)もせず、そこ/\にあしらひ、鼻紙(はなかみ)

も人のつかひ、其後(そのゝち)鼾(いびき)のみ、どこやらひえたる

すねを、人にもたせ、「たくよ、くむよ」と、寝言(ねごと)まじりに

、いかに事(こと)欠(かけ)なればとて、いつの程(ほと)より、かく物毎(ものごと)を

 

座敷に入るさまに、置綿を壁に付き、立ながら あん

どん回して、少し小暗き、中程に座して、

雁首、火になる程はまさず、おり/\あくびして

用捨(ようしゃ)も無く、小便(しょうべん)に立ち、障子(しょうじ)引きたつる様も、物(もの)

荒く、体を横に置きながら、屏風(びょうぶ)隔てたる

かたへ、咄(はな)しを仕掛け、身悶えして、蚤(のみ)を探し

夜半、八つの鐘の詮索、我か心にそまぬ

事は返事もせず、そこ/\にあしらい、鼻紙(はながみ)

も人の遣い、其後(そのゝち)鼾(いびき)のみ、どこやら冷えたる

すねを、人に持たせ、「たくよ、くむよ」と、寝言まじりに

、いかに事 欠けなればとて、いつの程より、かく物事(ものごと)を

 

小闇き(こぐらき)

 小暗き

雁首(がんくび)

 1キセルの、火皿(ひざら)の付いた頭部。ここに刻みタバコを詰めて火をつける。

 2首・頭の俗称。

まさず(ます 増す、在る)   心にそまぬ  自分の気持ちに合わない。   物毎(ものごと)  物事



『絵入 好色一代男』八全之内 巻一 五 煩悩(ほんのう)の垢(あか)かき 

【1】十六丁ウ 井原西鶴

十三夜の月、待宵(まつよい)めいげつ、いつくハ、あれと須磨(すま)は

殊更と、波(なみ)爰元(こゝもと)に、借(か)りきりの小舟(こぶね)、和田(わだ)の御崎

をめくれは、角(つの)の松原塩屋(まつはらしおや)といふ所ハ、敦盛(あつもり)をとつて

おさえて、熊谷(くまかへ)が付さしせしとほり、源氏酒(けんじさけ)と、たハ

ふれしもと、笑(わら)ひて、海(うみ)すこし見わたす、浜庇(はまひさし)に

舎(やど)りて、京よりもたさる、舞鶴(まいつる)花橘(はなたちはな)の

口をきりて、宵(よい)の程ハなくさむ業(わざ)も、次第(したい)に、月さへ

物すこく、一羽の声(こゑ)ハ、つまなし鳥かと、なを淋(さい)しく

一夜も、只ハ暮らし難(かた)し、若ひ蜑(あま)人ハないかと、有ものに

まねかせててみるに、髪(かみ)に指櫛(さしくし)もなく、顔(かほ)に何(なに)塗(ぬる)事も

十三夜の月、待宵名月、何處はあれど、須磨は

殊更と、波 爰元に、借りきり小舟、和田の御崎

をめくれば、角の松原塩屋といふ所ハ、敦盛をとつて

おさえて、熊谷(くまがへ くまがいか)源氏酒(げんじさけ)と、戯

れしもと、笑いて、海少し見わたす、浜庇(はまびさし)に

舎(やど)りて、京よりもたさる、舞鶴(まいづる)花橘(はなたちばな)の

口をきりて、宵(よい)の程ハ 慰む業(わざ)も、次第(しだい)に、月さへ

物すこく、一羽の声(こゑ)ハ、妻無し鳥かと、尚 淋(さい→さみ 掛詞)しく

一夜も、只ハ暮らし難(がた)し、若い蜑(あま)人ハ無いかと、有(無、有 掛詞)ものに

招かせててみるに、髪に指櫛(さしくし)も無く、顔(かお)に何塗(ぬる)事も

【2】十七丁オ 井原西鶴

しらず、袖(そて)ちいさく、裾(すそ)みぢかく、わけもなふ磯くさく、こゝち

よからざりしを、延齢丹(ゑんれいたん)などにて、胸(むね)おさえ、「昔(むか)し行平(ゆきひら)

何(なに)ものにか、足(あし)さすらせ、気をとらせ給ひ、あまつさへ

別(わかれ)にか、香(かう)包(つゝみ)、衛士籠(ゑじかご)しやくし、擂鉢(すりはち)三とせの世帯道(だう)

具まで、とらされけるよ」と、又の日ハ、兵庫(ひやうご)迄(まで)来(き)て、遊女(ゆうちよ)

の有様、昼夜(ちうや)のわかちありて、半(はん)夜と、せハしく

かきり定めるハ、今にも此(この)津(つ)ハ、風にまかする身(み)とて

、舟子(ふなこ)のよびたる声(こゑ)に、小歌(こうた)を聞(きゝ)さし、或(あるい)は

戴(いたゞひ)て、さし捨(すて)にして行ハ、こゝろのこすハ、のこる

べし、何とやら騒々(そう/″\)しく、是(これ)によこるゝもと、すぐに

風呂(ふろ)に入て、「名(な)のたゝば、水(みず)さします」なとと、口びるそつて

知らず、袖(そで)小さく、裾(すそ)短く、訳も無う磯臭く、心地

良からざりしを、延齢丹(えんれいたん)などにて、胸(むね)おさえ、「昔 行平(ゆきひら)

何者にか、足さすらせ、気をとらせ給い、あまつさへ

別れにか、香包(こうづつみ)、衛士籠(えじかご)杓子、擂鉢(すりばち)、三年(みとせ)の世帯道

具まで、とらされけるよ」と、又の日ハ、兵庫(ひょうご)迄来て、遊女(ゆうじょ)

の有様、昼夜のわかちありて、半夜と、せわしく

かぎり定めるは、今にも此(この)津(つ)は、風に任まかする身(み)とて

、舟子(ふなこ)の呼びたる声に、小歌(こうた)を聞きさし、或は

戴(いただい)て、さし捨てにして行くは、心残すハ、残る

べし、何とやら騒々しく、是(これ)によこるるもと、すぐに

風呂に入て、「名のたたば、水 さします」などと、口びるそって

【3】十七丁ウ

中高(なかたか)なる顔にて、秀句(しうく)よくいへる女あり、とらえて、

「御名(な)ゆかしき」と問(と)へば、忠度(たゞのり)と申、「いか様 是を只(ただ)は

置(をか)れじ」と、うす約束(やくそく)するよりはや、あがり湯(ゆ)の

、くれやう、ちらしをのませ、浴衣(ゆかた)の取(とり)さばき、火入(ひいれ)に

気(き)をつけ、鬢水(びんみづ)を運(はこ)び、鏡(かゞみ)かすやら、其(その)もてなし

、何国(いづく)も替(かは)る事(こと)なし、風義(ふうぎ)ハ、ひとつきる物、つまたるに、

白帯(しろおび) こゝろまゝ引しめ、「やれたらば 親(おや)方のそん、

久三、提灯(てうちん)ともしや」と、いふかた手に、草履(ざうり)取出し

くゞり戸(ど)出まわり、調子高(てうし たか)に、はうばいを譏(そし)り、

朝夕の、汁(しる)がうすひの、「はさみを、くれる筈(はず)じやが、

たるゝか、しらぬ」と、ひとつとして、聞(きく)べき事にもあらバ

中高(なかたか)なる顔にて、秀句(しゅうく)よく言える女あり、とらえて、

「御名(な)ゆかしき」と問えば、忠度(たゞのり)と申、「いか様(さま) 是を只(ただ)は

置れじ」と、うす約束するより早、あがり湯の

くれやう、ちらしを飲ませ、浴衣の取りさばき、火入れに

気を付け、鬢水(びんみず)を運び、鏡かすやら、其 もてなし

、何国(いづく)も替る事なし、風儀(ふうぎ)は、ひとつ きる物、妻たるに

白帯(しろおび) 心(の)まま引きしめ、「やれたらば 親方の損、

久三、提灯 灯しゃ」と、言う片手に、草履 取出し

潜り戸(ど)いでまわり、調子高 に、はうばいを譏(そし)り、

朝夕の、汁が薄いの、「はさみを、くれる筈じゃが、

足るるか知らんと、ひとつとして、聞くべき事にもあらば

【4】十八丁オ

座敷(さしき)に入さまに、置わたを壁(かへ)につき、立ながらあん

どんまハして、すこし小闇(こぐら)き、中程(ほと)にざして、

雁首(がんくひ)、火になる程(ほと)はまさず、おり/\あくびして

用捨(ようしや)もなく、小便(せうへん)に立、障子(しやうし)引たつるさまも、物(もの)

あらく、からだを横(よこ)に置(をき)ながら、屏風(べうぶ)へだてたる

かたへ、咄(はな)しを仕懸(しかけ)みもだへして、蚤(のみ)をさがし

夜半(よはん)、八つの、鐘(かね)のせんさく、我かこゝろにそまぬ

事ハ、返事(へんじ)もせず、そこ/\にあしらひ、鼻紙(はなかみ)

も人のつかひ、其後(そのゝち)鼾(いびき)のみ、どこやらひえたる

すねを、人にもたせ、「たくよ、くむよ」と、寝言(ねごと)まじりに

、いかに事(こと)欠(かけ)なればとて、いつの程(ほと)より、かく物毎(ものごと)を

座敷に入るさまに、置綿を壁に付き、立ながら あん

どん回して、少し小暗き、中程に座して、

雁首、火になる程はまさず、おり/\あくびして

用捨(ようしゃ)も無く、小便(しょうべん)に立ち、障子(しょうじ)引きたつる様も、物(もの)

荒く、体を横に置きながら、屏風(びょうぶ)隔てたる

かたへ、咄(はな)しを仕掛け、身悶えして、蚤(のみ)を探し

夜半、八つの鐘の詮索、我か心にそまぬ

事は返事もせず、そこ/\にあしらい、鼻紙(はながみ)

も人の遣い、其後(そのゝち)鼾(いびき)のみ、どこやら冷えたる

すねを、人に持たせ、「たくよ、くむよ」と、寝言まじりに

、いかに事 欠けなればとて、いつの程より、かく物事(ものごと)を

 

 

 

『絵入 好色一代男』八全之内 巻一 六 煩悩(ほんのう)の垢(あか)かき 【5】十八丁ウ 井原西鶴  一巻五読了

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 絵入  好色一代男   八前之内 巻一  井原西鶴
 天和二壬戌年陽月中旬 
 大阪思案橋 孫兵衞可心板



  『絵入 好色一代男』八全之内 巻一 六 煩悩(ほんのう)の垢(あか)かき 【5】十八丁ウ 井原西鶴

  

さもしくなしむ、抑(そも/\)丹前風(たんぜんふう)と申ハ、江戸(ゑど)にて

丹後殿前に、風呂ありし時、勝山(かつやま)といえるおんな、

すぐれて、情(なさけ)もふかく、髪かたち とりなり、袖口(そでぐち)廣(ひろ)く

つま高(たか)く、万(よろつ)に付(つけ)て、世の人に替(かハ)りて、一流(りう)是

よりはじめて、後(のち)ハもてはやして、吉原(よしはら)にしゆつ

せして、不思議(ふしぎ)の御かたにまでそいべし、ためし

なき女の侍り

 

さもしく なしむ、抑(そも/\)丹前風と申すは、江戸にて

丹後殿前に、風呂ありし時、勝山(かつやま)と言える女、

優れて、情けも深く、髪形 とりなり、袖口 広く

つま高く、万(よろづ)に付けて、世の人に替りて、一流 是

寄りはじめて、後はもてはやして、吉原に出

世して、不思議の御方にまでそうべし、試し

無き 女の侍り

抑(そも/\)

 そもそも【抑】

 1.《接》説き起こす時に使う語。

 2.《副》元来。   抑 (ヨク・おさえる そもそも)    1.おさえつける。おさえつけてとめる。  「抑圧・抑制・抑止・抑留・謙抑」  2.さげる。「抑揚」   とりなり (身の取り回し)  

しゆつせして (出世して)

 

   



『絵入 好色一代男』八全之内 巻一 六 煩悩(ほんのう)の垢(あか)かき 

【1】十六丁ウ 井原西鶴

十三夜の月、待宵(まつよい)めいげつ、いつくハ、あれと須磨(すま)は

殊更と、波(なみ)爰元(こゝもと)に、借(か)りきりの小舟(こぶね)、和田(わだ)の御崎

をめくれは、角(つの)の松原塩屋(まつはらしおや)といふ所ハ、敦盛(あつもり)をとつて

おさえて、熊谷(くまかへ)が付さしせしとほり、源氏酒(けんじさけ)と、たハ

ふれしもと、笑(わら)ひて、海(うみ)すこし見わたす、浜庇(はまひさし)に

舎(やど)りて、京よりもたさる、舞鶴(まいつる)花橘(はなたちはな)の

口をきりて、宵(よい)の程ハなくさむ業(わざ)も、次第(したい)に、月さへ

物すこく、一羽の声(こゑ)ハ、つまなし鳥かと、なを淋(さい)しく

一夜も、只ハ暮らし難(かた)し、若ひ蜑(あま)人ハないかと、有ものに

まねかせててみるに、髪(かみ)に指櫛(さしくし)もなく、顔(かほ)に何(なに)塗(ぬる)事も

十三夜の月、待宵名月、何處はあれど、須磨は

殊更と、波 爰元に、借りきり小舟、和田の御崎

をめくれば、角の松原塩屋といふ所ハ、敦盛をとつて

おさえて、熊谷(くまがへ くまがいか)源氏酒(げんじさけ)と、戯

れしもと、笑いて、海少し見わたす、浜庇(はまびさし)に

舎(やど)りて、京よりもたさる、舞鶴(まいづる)花橘(はなたちばな)の

口をきりて、宵(よい)の程ハ 慰む業(わざ)も、次第(しだい)に、月さへ

物すこく、一羽の声(こゑ)ハ、妻無し鳥かと、尚 淋(さい→さみ 掛詞)しく

一夜も、只ハ暮らし難(がた)し、若い蜑(あま)人ハ無いかと、有(無、有 掛詞)ものに

招かせててみるに、髪に指櫛(さしくし)も無く、顔(かお)に何塗(ぬる)事も

【2】十七丁オ 井原西鶴

しらず、袖(そて)ちいさく、裾(すそ)みぢかく、わけもなふ磯くさく、こゝち

よからざりしを、延齢丹(ゑんれいたん)などにて、胸(むね)おさえ、「昔(むか)し行平(ゆきひら)

何(なに)ものにか、足(あし)さすらせ、気をとらせ給ひ、あまつさへ

別(わかれ)にか、香(かう)包(つゝみ)、衛士籠(ゑじかご)しやくし、擂鉢(すりはち)三とせの世帯道(だう)

具まで、とらされけるよ」と、又の日ハ、兵庫(ひやうご)迄(まで)来(き)て、遊女(ゆうちよ)

の有様、昼夜(ちうや)のわかちありて、半(はん)夜と、せハしく

かきり定めるハ、今にも此(この)津(つ)ハ、風にまかする身(み)とて

、舟子(ふなこ)のよびたる声(こゑ)に、小歌(こうた)を聞(きゝ)さし、或(あるい)は

戴(いたゞひ)て、さし捨(すて)にして行ハ、こゝろのこすハ、のこる

べし、何とやら騒々(そう/″\)しく、是(これ)によこるゝもと、すぐに

風呂(ふろ)に入て、「名(な)のたゝば、水(みず)さします」なとと、口びるそつて

知らず、袖(そで)小さく、裾(すそ)短く、訳も無う磯臭く、心地

良からざりしを、延齢丹(えんれいたん)などにて、胸(むね)おさえ、「昔 行平(ゆきひら)

何者にか、足さすらせ、気をとらせ給い、あまつさへ

別れにか、香包(こうづつみ)、衛士籠(えじかご)杓子、擂鉢(すりばち)、三年(みとせ)の世帯道

具まで、とらされけるよ」と、又の日ハ、兵庫(ひょうご)迄来て、遊女(ゆうじょ)

の有様、昼夜のわかちありて、半夜と、せわしく

かぎり定めるは、今にも此(この)津(つ)は、風に任まかする身(み)とて

、舟子(ふなこ)の呼びたる声に、小歌(こうた)を聞きさし、或は

戴(いただい)て、さし捨てにして行くは、心残すハ、残る

べし、何とやら騒々しく、是(これ)によこるるもと、すぐに

風呂に入て、「名のたたば、水 さします」などと、口びるそって

【3】十七丁ウ

中高(なかたか)なる顔にて、秀句(しうく)よくいへる女あり、とらえて、

「御名(な)ゆかしき」と問(と)へば、忠度(たゞのり)と申、「いか様 是を只(ただ)は

置(をか)れじ」と、うす約束(やくそく)するよりはや、あがり湯(ゆ)の

、くれやう、ちらしをのませ、浴衣(ゆかた)の取(とり)さばき、火入(ひいれ)に

気(き)をつけ、鬢水(びんみづ)を運(はこ)び、鏡(かゞみ)かすやら、其(その)もてなし

、何国(いづく)も替(かは)る事(こと)なし、風義(ふうぎ)ハ、ひとつきる物、つまたるに、

白帯(しろおび) こゝろまゝ引しめ、「やれたらば 親(おや)方のそん、

久三、提灯(てうちん)ともしや」と、いふかた手に、草履(ざうり)取出し

くゞり戸(ど)出まわり、調子高(てうし たか)に、はうばいを譏(そし)り、

朝夕の、汁(しる)がうすひの、「はさみを、くれる筈(はず)じやが、

たるゝか、しらぬ」と、ひとつとして、聞(きく)べき事にもあらバ

中高(なかたか)なる顔にて、秀句(しゅうく)よく言える女あり、とらえて、

「御名(な)ゆかしき」と問えば、忠度(たゞのり)と申、「いか様(さま) 是を只(ただ)は

置れじ」と、うす約束するより早、あがり湯の

くれやう、ちらしを飲ませ、浴衣の取りさばき、火入れに

気を付け、鬢水(びんみず)を運び、鏡かすやら、其 もてなし

、何国(いづく)も替る事なし、風儀(ふうぎ)は、ひとつ きる物、妻たるに

白帯(しろおび) 心(の)まま引きしめ、「やれたらば 親方の損、

久三、提灯 灯しゃ」と、言う片手に、草履 取出し

潜り戸(ど)いでまわり、調子高 に、はうばいを譏(そし)り、

朝夕の、汁が薄いの、「はさみを、くれる筈じゃが、

足るるか知らんと、ひとつとして、聞くべき事にもあらば

【4】十八丁オ

座敷(さしき)に入さまに、置わたを壁(かへ)につき、立ながらあん

どんまハして、すこし小闇(こぐら)き、中程(ほと)にざして、

雁首(がんくひ)、火になる程(ほと)はまさず、おり/\あくびして

用捨(ようしや)もなく、小便(せうへん)に立、障子(しやうし)引たつるさまも、物(もの)

あらく、からだを横(よこ)に置(をき)ながら、屏風(べうぶ)へだてたる

かたへ、咄(はな)しを仕懸(しかけ)みもだへして、蚤(のみ)をさがし

夜半(よはん)、八つの、鐘(かね)のせんさく、我かこゝろにそまぬ

事ハ、返事(へんじ)もせず、そこ/\にあしらひ、鼻紙(はなかみ)

も人のつかひ、其後(そのゝち)鼾(いびき)のみ、どこやらひえたる

すねを、人にもたせ、「たくよ、くむよ」と、寝言(ねごと)まじりに

、いかに事(こと)欠(かけ)なればとて、いつの程(ほと)より、かく物毎(ものごと)を

座敷に入るさまに、置綿を壁に付き、立ながら あん

どん回して、少し小暗き、中程に座して、

雁首、火になる程はまさず、おり/\あくびして

用捨(ようしゃ)も無く、小便(しょうべん)に立ち、障子(しょうじ)引きたつる様も、物(もの)

荒く、体を横に置きながら、屏風(びょうぶ)隔てたる

かたへ、咄(はな)しを仕掛け、身悶えして、蚤(のみ)を探し

夜半、八つの鐘の詮索、我か心にそまぬ

事は返事もせず、そこ/\にあしらい、鼻紙(はながみ)

も人の遣い、其後(そのゝち)鼾(いびき)のみ、どこやら冷えたる

すねを、人に持たせ、「たくよ、くむよ」と、寝言まじりに

、いかに事 欠けなればとて、いつの程より、かく物事(ものごと)を

【5】十八丁ウ

さもしくなしむ、抑(そも/\)丹前風(たんぜんふう)と申ハ、江戸(ゑど)にて

丹後殿前に、風呂ありし時、勝山(かつやま)といえるおんな、

すぐれて、情(なさけ)もふかく、髪かたち とりなり、袖口(そでぐち)廣(ひろ)く

つま高(たか)く、万(よろつ)に付(つけ)て、世の人に替(かハ)りて、一流(りう)是

よりはじめて、後(のち)ハもてはやして、吉原(よしはら)にしゆつ

せして、不思議(ふしぎ)の御かたにまでそいべし、ためし

なき女の侍り

さもしく なしむ、抑(そも/\)丹前風と申すは、江戸にて

丹後殿前に、風呂ありし時、勝山(かつやま)と言える女、

優れて、情けも深く、髪形 とりなり、袖口 広く

つま高く、万(よろづ)に付けて、世の人に替りて、一流 是

寄りはじめて、後はもてはやして、吉原に出

世して、不思議の御方にまでそうべし、試し

無き 女の侍り

 

 

 

『古今集遠鏡 巻一』 15  古今集遠鏡  はしがき 七ウ  本居宣長

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 『古今集遠鏡 巻一』 15  古今集遠鏡  はしがき 七ウ  本居宣長  

 

『古今集遠鏡』6冊。寛政5年(1793)頃成立。同9年刊行。

 

はしがき 七ウ 

れども、俗語に さ はいハざれバ、中々にうとし、同じことながら、「春露たち

かくすらん、山の桜をなどハ、山の桜は露がカクシテアルデアラウ二」、と訳してよ

ろしく、又 「かの見ん人は見よ」なども、「見ヤウト思フ人ハ」と うつれバ、俗語にも

かなへり、歌のさまによりてハ、かうやうにもうつすべし、)

◯「らん」の訳(ウツシ)ハ、くさ/″\あり、「春たつけふの風や とくらん」などハ、「風ガトカスデア

ラウカ」と訳す、アラウランにあたりガ上のやに あたれり、「いつの人まに うつろひぬら

ん」などハ、「イツノヒマ二散テシマウタ「ヤラ」」と訳す、「ヤラ」らんにあたれり、「人に知られ

ぬ花やさくらん」などハ、「人二シラサヌ花が咲タカシラヌ」と訳す、「カシラヌやとらん」

とにあたれり、又 「上にや何」などといふ、うたがひことばなくて、「らん」と結びたる

にハ、「ドウイフことデ」といふ詞をそへてうつすも多し、又 「相坂のゆふつけ鳥も

------------------------ ------------------------

れども、俗語に さ は 言わざれば、中々にうとし、同じ事ながら、「春露たち

隠すらん、山の桜を などは、山の桜は露が隠してあるであろうに(カクシテアルデアラウ二)」、と訳して よ

ろしく、又 「かの見ん人は、見よ」なども、「見ようと思う人は」と うつれば、俗語にも

かなえり、歌の様に依りては、この(こう)ようにも写すべし、

◯「らん」の訳(ウツシ)は、種々(くさぐさ)あり、「春立つ今日の風や とくらん」などは、「風がとかすであろうか(風ガトカスデア

ラウカ)」と訳す、「あろうらん(アラウラン)」にあたりが上の「や」に 当たれり、「いつの人まに うつろいぬら

ん」などハ、「いつの日に散してしもうた「やら」」と訳す、「やら」「らん」に当たれり、「人に知られ」

ぬ花や咲くらん」などは、「人に知らさぬ花が咲たかしらぬ」と訳す、「かしらぬ やとらん」

とに当たれり、又 「上にや何」などと言う、疑い詞無くて、「らん」と結びたる

には、「どう言う事で」と言う詞を添えて写すも多し、又 「相坂の夕つけ鳥も

------------------------ ------------------------

さ (然 副詞 そう。そのように。)  古語辞典

よろしく

 宜し(形容詞) {(しく)・しから/しく・しかり/し/しき・しかる/しけれ/しかれ}

 1 まずまずだ。まあよい。悪くない。

 2 好ましい。満足できる。

 3 ふさわしい。適当だ。

 4 普通だ。ありふれている。たいしたことはない。

 よろし(副詞 いかにももっとも。なるほど。) 古語辞典

かう

 斯う(副詞 このように)

種々

 くさぐさ

らん(らむ)助動詞  中世以降「らん」と表記する。

《接続》活用語の終止形に付く。ただし、ラ変型活用の語には連体形に付く。

 1 〔現在の推量〕今ごろは…しているだろう。▽目の前以外の場所で現在起こっている事態を推量する。

 2 〔現在の原因の推量〕…(のため)だろう。どうして…だろう。▽目の前の事態からその原因・理由となる事柄を推量する。

 3 〔現在の伝聞・婉曲(えんきよく)〕…という。…とかいう。…のような。▽多く連体形で用いて、伝聞している現在の事柄を不確かなこととして述べる。

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古今集遠鏡 

 

はしがき一オ 2

   雲のゐるとほきこずゑもときかゞ

     せばこゝにみねのもみちば

此書ハ、古今集の歌どもを、こと/″\くいまの無の俗語(サトビゴト)に訳(ウツ)せ
る也、そも/\此集ハ、よゝに物よくしれりし人々の、ちうさくども
のあまた有て、のこれるふしもあらざなるに、今更さるわざハ、い
かなれバといふに、かの注釈といふすぢハ、たとへばいとはるかなる高き
山の梢どもの、ありとバかりハ、ほのかにみやれど、その木とだに、あや
めもわかむを、その山ちかき里人の、明暮のつま木のたよりにも、よ
く見しれるに、さしてかれハと ゝひたらむに、何の木くれの木、も

はしがき一ウ 3

とだちハしか/″\、梢の有るやうハ、かくなむとやうに、語り聞せたらむ
がそとし、さるハいかによくしりて、いかにちぶさに物したらむにも、人づて
の耳(ミヽ)ハ、かぎりしあれバ、ちかくて見るめのまさしきにハ、猶にるべくも
あらざめるを、世に遠めがねといふなる物のあるして、うつし見るに
はいかにとほきも、あさましきまで、たゞこゝもとにうつりきて、枝さ
しの長きみじかき、下葉の色のこきうすきまで、のこるくまなく、見
え分れて、軒近き庭のうゑ木に、こよなきけぢめもあらざるばかり
に見るにあらずや、今此遠き代の言の葉のくれなゐ深き心ばへ
を安くちかき、手染の色うつして見するも、もはらこのめがね
のたとひにかなへらむ物を、やがて此事ハ志と、尾張の横井、千秋

はしがき二オ 4

ぬしの、はやくよりこひもとめられれたるすぢにて、はじめよりうけひき
てハ有ける物から、なにくれといとまなく、事しげきにうちまぎれて、
えしのはださず、あまたの年へぬるを、いかに/ \と、しば/″\おどろかさる
るに、あながちに思ひおくして、こたみかく物しつるを、さきに神代のまさ
ことも、此同じぬしのねぎことこそ有しか、御のミ聞けむとやうに、
しりうごつともがらも有べかめれど、例の心も深くまめなるこゝ
ろざしハ、みゝなし心の神とハなしに、さてへすべくもあらびてなむ、
◯うひまなびなどのためのは、ちうさくハ、いかにくはしくときた
るも、物のあぢハひを、甘しからしと、人のかたるを聞たらむやう
にて、詞のいきほひ、「てにをは」のはたらきなど、たまりなる趣にいたり

はしがき二ウ 5

てハ、猶たしかにはえあらねどば、其事を今おのが心に思ふがごとハ、里
りえがたき物なるを、さとびごとに訳(ウツ)したるハ、たゞにみづからさ思ふ
にひとしくて、物の味を、ミづからなめて、しれるがごとく、いにしへの雅事(ミヤビゴト)
ミな、おのがはらの内のおとしなれゝバ、一うたのこまかなる心ばへの、
こよなくたしかにえラルことおほきぞかし、
◯俗言(サトビゴト)ハかの国この里と、ことなきとおほきが中には、みやびごとに
ちかきもあれども、かたよれるゐなかのことばゝ、あまねくよもには
わたしがたれバ、かゝるとにとり用ひがたし、大かたハ京わたりの
詞して、うつすべきわざなり、ただし京のにも、えりすつべきハ有
て、なべてハとりがたし、

はしがき三オ 6

◯俗言(サトビゴト)にも、しな/″\のある中に、あまりいやしき、又たハれすぎたる、又
時ゞのいまめきことばなどハ、はぶくべし、又うれしくもてつけていふと、
うちときたるもの、たがひあるを、歌ハことに思ふ情(こゝろ)のあるやうのまゝに、廠
眺め出たる物なれば、そのうちときたる詞して、訳(ウツ)すべき也、うちとけ
たるハ、心のまゝにいひ出したる物にて、みやびごとのいきほひに、今すこ
しよくあればぞかし、又男のより、をうなの詞は、ことにうちとき
たることの多くて、心に思ふすぢの、ふとあらハなるものなれバ、歌のい
きほひに、よくかなへることおほ彼ば、をうなめ きたるをも、つかふべ
きなり、又いはゆるかたしも用ふべし、たちへばおのがことを、うる
はしくハ「わたくし」といふを、はぶきてつねに、ワタシともワシともい日、ワ

はしがき三ウ 7

シハといふべきを、「ワシヤ<」、それを「ソレヤ」、すればを「スレヤ」といふたぐひ、又その
やうなこのやうなを、「ソンナコンナ」といひ、ならばたらバを、ばをはぶきて、ナ
ラタラざうしてを「ソシテ」、よかろうを「ヨカロ」、とやふにいふたぐひ、ことにうち
ときたることなるを、これはた いきほひ にしたがひてハ、中/\にうるハしく
いふよりハ、ちかくあたりて聞ゆるふしおほければなり、
◯すべて人の語ハ、同じくいふとも、いひざるいきほひにしたがひて、深くも浅
くも、をかしくも、うれたくも聞こゆるわざにて、歌ハことに、心のあるようをたゞ
にうち出したる趣なる物なるに、その詞の、いまさま いきほひハ しも
よみ人の心をおしえかりえて、そのいきほひを訳(ウツ)すべき也、たとへバ「春

はしがき四オ 8

されバ野べにまづさく云々、といつるせどうかの、訳(ウツシ)のはててに、へゝ/\
へゝ/\と、笑ふ声をへそたるなど、さらにおのづがいまの、たハぶれにはあら
図、此ノ下ノ句の、たハぶれていへる詞なることを、さとさせりとてぞかし、かゝる
ことをダウぞへざれバ、たハふ(ム)れの善(へ)なるよしの、わらハれがたけれぞかし、
かゝるたぐ日、いろ/\おほし、なすらへてさとるべし、
◯みやびごとハ、二つにも三つにも分れたることを、さとび言には、合をて一ツ
にいふあり、又雅言(ミヤビゴト)ハ一つながら、さとびごとにてハ、二つ三つにわかれたる
もあるゆゑに、ひとつ俗言(サトビゴト)を、これにもかれにもあつるとある也、
◯まさしくあつべき俗言のなき詞には、一つに二ツ三ツをつらねてう

はしがき四ウ 9

つすこちあり、又は上下の語の訳(うつし)の中小、其言をこむることもあり、あるハ
二句三句を合わせて、そのすべての言をもて訳(ウツ)すもあり、そハたとへバ「ことな
らバさかずやむあらぬ桜花などの、ことならばといふ詞など、一つはなち
てハ、いかにもうつすべき俗言なれバ、二句を合わせて、トテモ此ヤワニ早ウ散(ル)クラい
ナラバ一向ニ初(メ)カラサカヌガヨイニナゼサカヌニハヰヌゾ、と訳(ウツ)せるがごとし、
◯歌によりて、もとの語のつゞきざま、「てにをは」などにもかゝハらで、すべて
の言をえて訳(ウツ)すべきあり、もとの詞つゞき、「てにをハ」などを、かたくまも
りてハ、かへりて一かたの言にうとくなることもあれバ也、たとへば「こぞと
やいはむ、ことしとやいはむなど、詞をまもらバ、去年ト云(ハ)ウカ今年トイハ
ウカ、と、訳すべけれども、さてハ俗言の例にうとし、去年ト云タモノデアラウカ

はしがき五オ 10

今年ト云タモノデアラウカとうつすぞよくあたれる、又春くることを「たれ
かしらまし」など、春ノキタトヲ云々、と訳(ウツ)さゞれバ、あたりがたし、「来(ク)る」と
「来(キ)タ」とハ、たがひあれども、此歌などの「来(キ)ぬる」と有べきことなるを、
さはいひがたき所に、「くる」とハいつるなれバ、そのこゝろをえて、「キタ」と訳(ウツ)
すべき也、かゝるたぐひ、いとおほし、なすらへて、さとるべし、
◯詞をかへてうつすべきあり、「花と見て」などの「見て」ハ、俗語には、「見て」と
ハいはざれバ、「花ヂヤト思ウテ」と訳すべし、「わぶとこゝろへよ」、などの類の「こ
たふる」ハ、俗言には、「こたふ」とハいはず、たゞ「イフ」といへば、「難-儀ヲシテ居ルト
イヘ」と訳すべし、又「てにをは」をかへて訳すべきも有リ、「春ハ来にけり」な
どのエモジハ、「春ガキタワイ」と、ガにかふ、此類多し、又「てにをは」を添(フ)べ

はしがき五ウ 11

きもあり・「花咲にけり」などハ、「花が咲いタワイ」と、「ガ」うをそふ、此類ハ殊におほし、す べて俗言にハ、「ガ」と

いふことの多き也、雅言のぞをも、多くハ「ガ」といへり、「花なき」

などハ、「花ノナイ里」と、「ノ」をそふ、又はぶきて訳すべきも、「人しなけれバ」「ぬきて

をゆかむ」などの、「しもじ」を「もじ」、訳言(ウツシコトバ)をあゝハ、中々にわろし、

◯詞のところををおきかへてうつすべきことおほし、「あかずとやなくや山郭公」

などハ、「郭公」を上へうつして、「郭公ハ残リオホウ思フテアノヤウニ鳴クカ」と訳し、「よるさ

へ見よ」とてらす月影は、ヨルマデ見ヨ」トテ「月の影をテラス」とうつし、「ちくさに物

を思ふゝろかな」のたぐひは、「こゝろ」を上にうつして、「コノゴロハイロ/\」ト物思ヒノ

シゲイ「カナ」とやくし、「うらさびしくも見てわたるかな」ハ、「すてる」を上へう

つして、「見ワタシタトコロガキツウマアものサビシウ見エル」「カナ」と訳すたぐひにて、これ

はしがき六オ 12

雅事(ミヤビゴト)と俗事(サトゴト)と、いふやうのたがひ也、又「てにをは」も、ところをかへて訳

すべきあり、「ものうかるねに鶯ぞなく」など、「ものうかる春にぞ」と、「ぞ」も

じハ、上にあるべきことなれども、さいハひがたき所に、鶯の下におけるなれば、

其こゝろをえて、訳(ウツ)すべき也、此例多し、皆なすらふべし、ふべし、

◯「てにをは」の事、「ぞ」もじハ、訳すべき詞なし、たとへバ「花ぞ昔の香ににほひける

のごとき、殊に力(ラ)を入(レ)たるぞなるを、俗言にハ、花ガといひて、其所にちからを入れ

て、いきほひにて、雅語のぞの意に聞(カ)することなるを、しか口にいふいきほひハ、物

にハ出るべくもあらざれバ、今ハサといふ辞を添(ヘ)て、ぞにあてゝ、花ガサ昔

ノ云々と訳す、ぞもじの例、みな然り、こそハ、つかひざま大かた二つある中に、

「花こそちらめ、根さへかれねや」などやうに、むかへていふことあるハ、さとびごと

はしがき六ウ 13

も同じく、こそといへり、今風にこそ見ざるべらなれ、「雪とのみこそ花ハ

ちるらめ」などのたぐひこそハ、うつすべき詞なし、これハ「ぞ」にいとちかければ、「ぞ」の例によなり、「山風ぞ」云々、「雪とのミぞ」云々、とひたらむに、いく

ばくのたがひもあらざれバ也、さるをしひていさゝかのけぢめをもわか

むろすれバ、中々にうとくなること也、「たがそでふれしや、どの梅ぞ」と、「恋も

するかな」などのたぐひの「も」もじハ、「マァ」と訳す、「マァ」ハ、やがて此もの訳(ウツ)れる

にぞあらむ、疑ひの「や」もじハ、俗語にハ皆、力といふ「春やとき、花やおそき」とハ、「春が早イ

ノカ、花ガオソイノカ」と訳すがごとし、

◯「ん」は、俗語にはすべて皆「ウ」といふ、来んゆかんを、「ゴウイカウ」といふ類也

はしがき 七オ 14

「けんなん」などの「ん」も同じ、「花やちりけん」ハ、「花ガチッタデアラウカ」、「花や

ちりなん」は、「花ガチツタデアラウカ」と訳す、さて此、「チツタデ」といふと、「チルデ」といふと

のかハりをもて「けん」と「なん」とのけぢめをも、さとるべし、さて又語の

つゞきたるなからにあるは、多くハうつしがたし、たとへば「見ん人」は「見よ」、

「ちりなん」後ぞ、「ちりなん」小野のなどのたぐひ、人へゞき、後へつゞき、小野へ

つゞきて、「ん」ハ皆「なからう」有り、此類は、俗語にハたゞに、見る人ハ、「チツテ」後二、

「チル」小野ノとやうにいひて、「見ヤウ(ん)人」ハ、「チルデ(なん)アラウ」後二、「チルデ(なん)アラウ」小野ノ、などハいは

ざれバ也、然るに此類をも、「しひてんなんらん」のことを、こまかに訳さむ

とならバ、「散なん」後ぞハ、「オツゝケチチルデアラウガ散タ後二サ」と訳し、「ちるらん

小野の」は、「サダメテ此ゴロハ萩ノ花ガチルでアラウ(らん)ガ其野ノ」、とやうに訳すべし、然

はしがき 七ウ 15

れども、俗語に さ はいハざれバ、中々にうとし、同じことながら、「春露たち

かくすらん、山の桜をなどハ、山の桜は露がカクシテアルデアラウ二」、と訳してよ

ろしく、又 「かの見ん人は見よ」なども、「見ヤウト思フ人ハ」と うつれバ、俗語にも

かなへり、歌のさまによりてハ、かうやうにもうつすべし、)

◯「らん」の訳(ウツシ)ハ、くさ/″\あり、「春たつけふの風や とくらん」などハ、「風ガトカスデア

ラウカ」と訳す、アラウランにあたりガ上のやに あたれり、「いつの人まに うつろひぬら

ん」などハ、「イツノヒマ二散テシマウタ「ヤラ」」と訳す、「ヤラ」らんにあたれり、「人に知られ

ぬ花やさくらん」などハ、「人二シラサヌ花が咲タカシラヌ」と訳す、「カシラヌやとらん」

とにあたれり、又 「上にや何」などといふ、うたがひことばなくて、「らん」と結びたる

にハ、「ドウイフことデ」といふ詞をそへてうつすも多し、又 「相坂のゆふつけ鳥も

れども、俗語に さ は 言わざれば、中々にうとし、同じ事ながら、「春露たち

隠すらん、山の桜を などは、山の桜は露が隠してあるであろうに(カクシテアルデアラウ二)」、と訳して よ

ろしく、又 「かの見ん人は、見よ」なども、「見ようと思う人は」と うつれば、俗語にも

かなえり、歌の様に依りては、この(こう)ようにも写すべし、

◯「らん」の訳(ウツシ)は、種々(くさぐさ)あり、「春立つ今日の風や とくらん」などは、「風がとかすであろうか(風ガトカスデア

ラウカ)」と訳す、「あろうらん(アラウラン)」にあたりが上の「や」に 当たれり、「いつの人まに うつろいぬら

ん」などハ、「いつの日に散してしもうた「やら」」と訳す、「やら」「らん」に当たれり、「人に知られ」

ぬ花や咲くらん」などは、「人に知らさぬ花が咲たかしらぬ」と訳す、「かしらぬ やとらん」

とに当たれり、又 「上にや何」などと言う、疑い詞無くて、「らん」と結びたる

には、「どう言う事で」と言う詞を添えて写すも多し、又 「相坂の夕つけ鳥も

 

 

 

『古今集遠鏡 巻一』 16  古今集遠鏡  はしがき 八オ  本居宣長

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 『古今集遠鏡 巻一』 16  古今集遠鏡  はしがき 八オ  本居宣長  

 

『古今集遠鏡』6冊。寛政5年(1793)頃成立。同9年刊行。

 

はしがき 八オ

わがごとく、「人や意しき、音のミ 鳴らん」などハ、「人が恋シイヤラ声ヲアゲテヒタスラナク」

とうつす、「これハ」とちぢめの「らん」の疑ひを、上へうつして、「や」と合わせて、「ヤラ」といふ也、

「ヤラバ すなわちやらん」といふこと也、「又玉かづら 今ハたゆとや、吹風の春にも

人のきこえざるらん」 などのたぐひも、同じく上へうつして、「や」と合せて、「ヤラ」

と訳して下ノ句をば、一向ニ「オトヅレモセヌ」と、落としつけてとぢむ、これらハ「らん」

とうたがつる事ハ、上にありて、下にはあらざれバ「なり」

◯「らし」ハ、「サウナ」と訳す、「サウナ」ハ、さまなるといふことなるを、春便りに「サウ」と

いひ、「る」をはぶける也、然れバ言の本のことを、「らしく」と同じおもむきに

あたる辞也、たとへば「物思ふらし」を、「物ヲモウサウナ」と訳すが如き、「らし」も

「サウナ」と共に、人の物思ふさまなるを見て、おしはかりたる春なれバ也、さてついで

 

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わがごとく、「人や意識、音のみ 鳴らん」などは、「人が恋しいやら声を上げてひたすら鳴く」

と写す、「これは」と縮めの「らん」の疑ひを、上へ写して、「や」と合わせて、「やら」と言う也、

「やらば すなわち やらん」と言う事也、又玉葛(たまかずら) 今は絶ゆとや、吹風の春にも

人の聞こえざるらん」 などの類も、同じく上へ写して、「や」と合せて、「やら」

と訳して下の句をば、一向に「訪れもせぬ」と、落とし付けて閉じむ、これらは「らん」

と疑つる事は、上にありて、下にはあらざれば「なり」

◯「らし」は、「そうな」と訳す、「そうな」は、「さまなる」と言う事成るを、春便りに「そう」と

言い、「る」を省ける也、然れば言の本の事を、「らしく」と同じ趣に

あたる辞也、例えば「物思うらし」を、「物思うそうな」と訳すが如き、「らし」も

「そうな」と共に、「人の物思う様成るを見て、推しはかりたる春なれば也」、さてついで

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たゆ (絶ゆ) 

[動ヤ下二] 絶えるの文語体

玉葛(た巻かずら)[名]

 1 つる草の美称。「―はふ木あまたになりぬれば絶えぬ心のうれしげもなし」〈伊勢一一八〉
 2 [枕]つるがのび広がるところから、「長し」「延(は)ふ」「繰る」「絶えず」などにかかる。
 謡曲『玉葛』あり。

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古今集遠鏡 

 

はしがき一オ 2

   雲のゐるとほきこずゑもときかゞ

     せばこゝにみねのもみちば

此書ハ、古今集の歌どもを、こと/″\くいまの無の俗語(サトビゴト)に訳(ウツ)せ
る也、そも/\此集ハ、よゝに物よくしれりし人々の、ちうさくども
のあまた有て、のこれるふしもあらざなるに、今更さるわざハ、い
かなれバといふに、かの注釈といふすぢハ、たとへばいとはるかなる高き
山の梢どもの、ありとバかりハ、ほのかにみやれど、その木とだに、あや
めもわかむを、その山ちかき里人の、明暮のつま木のたよりにも、よ
く見しれるに、さしてかれハと ゝひたらむに、何の木くれの木、も

はしがき一ウ 3

とだちハしか/″\、梢の有るやうハ、かくなむとやうに、語り聞せたらむ
がそとし、さるハいかによくしりて、いかにちぶさに物したらむにも、人づて
の耳(ミヽ)ハ、かぎりしあれバ、ちかくて見るめのまさしきにハ、猶にるべくも
あらざめるを、世に遠めがねといふなる物のあるして、うつし見るに
はいかにとほきも、あさましきまで、たゞこゝもとにうつりきて、枝さ
しの長きみじかき、下葉の色のこきうすきまで、のこるくまなく、見
え分れて、軒近き庭のうゑ木に、こよなきけぢめもあらざるばかり
に見るにあらずや、今此遠き代の言の葉のくれなゐ深き心ばへ
を安くちかき、手染の色うつして見するも、もはらこのめがね
のたとひにかなへらむ物を、やがて此事ハ志と、尾張の横井、千秋

はしがき二オ 4

ぬしの、はやくよりこひもとめられれたるすぢにて、はじめよりうけひき
てハ有ける物から、なにくれといとまなく、事しげきにうちまぎれて、
えしのはださず、あまたの年へぬるを、いかに/ \と、しば/″\おどろかさる
るに、あながちに思ひおくして、こたみかく物しつるを、さきに神代のまさ
ことも、此同じぬしのねぎことこそ有しか、御のミ聞けむとやうに、
しりうごつともがらも有べかめれど、例の心も深くまめなるこゝ
ろざしハ、みゝなし心の神とハなしに、さてへすべくもあらびてなむ、
◯うひまなびなどのためのは、ちうさくハ、いかにくはしくときた
るも、物のあぢハひを、甘しからしと、人のかたるを聞たらむやう
にて、詞のいきほひ、「てにをは」のはたらきなど、たまりなる趣にいたり

はしがき二ウ 5

てハ、猶たしかにはえあらねどば、其事を今おのが心に思ふがごとハ、里
りえがたき物なるを、さとびごとに訳(ウツ)したるハ、たゞにみづからさ思ふ
にひとしくて、物の味を、ミづからなめて、しれるがごとく、いにしへの雅事(ミヤビゴト)
ミな、おのがはらの内のおとしなれゝバ、一うたのこまかなる心ばへの、
こよなくたしかにえラルことおほきぞかし、
◯俗言(サトビゴト)ハかの国この里と、ことなきとおほきが中には、みやびごとに
ちかきもあれども、かたよれるゐなかのことばゝ、あまねくよもには
わたしがたれバ、かゝるとにとり用ひがたし、大かたハ京わたりの
詞して、うつすべきわざなり、ただし京のにも、えりすつべきハ有
て、なべてハとりがたし、

はしがき三オ 6

◯俗言(サトビゴト)にも、しな/″\のある中に、あまりいやしき、又たハれすぎたる、又
時ゞのいまめきことばなどハ、はぶくべし、又うれしくもてつけていふと、
うちときたるもの、たがひあるを、歌ハことに思ふ情(こゝろ)のあるやうのまゝに、廠
眺め出たる物なれば、そのうちときたる詞して、訳(ウツ)すべき也、うちとけ
たるハ、心のまゝにいひ出したる物にて、みやびごとのいきほひに、今すこ
しよくあればぞかし、又男のより、をうなの詞は、ことにうちとき
たることの多くて、心に思ふすぢの、ふとあらハなるものなれバ、歌のい
きほひに、よくかなへることおほ彼ば、をうなめ きたるをも、つかふべ
きなり、又いはゆるかたしも用ふべし、たちへばおのがことを、うる
はしくハ「わたくし」といふを、はぶきてつねに、ワタシともワシともい日、ワ

はしがき三ウ 7

シハといふべきを、「ワシヤ<」、それを「ソレヤ」、すればを「スレヤ」といふたぐひ、又その
やうなこのやうなを、「ソンナコンナ」といひ、ならばたらバを、ばをはぶきて、ナ
ラタラざうしてを「ソシテ」、よかろうを「ヨカロ」、とやふにいふたぐひ、ことにうち
ときたることなるを、これはた いきほひ にしたがひてハ、中/\にうるハしく
いふよりハ、ちかくあたりて聞ゆるふしおほければなり、
◯すべて人の語ハ、同じくいふとも、いひざるいきほひにしたがひて、深くも浅
くも、をかしくも、うれたくも聞こゆるわざにて、歌ハことに、心のあるようをたゞ
にうち出したる趣なる物なるに、その詞の、いまさま いきほひハ しも
よみ人の心をおしえかりえて、そのいきほひを訳(ウツ)すべき也、たとへバ「春

はしがき四オ 8

されバ野べにまづさく云々、といつるせどうかの、訳(ウツシ)のはててに、へゝ/\
へゝ/\と、笑ふ声をへそたるなど、さらにおのづがいまの、たハぶれにはあら
図、此ノ下ノ句の、たハぶれていへる詞なることを、さとさせりとてぞかし、かゝる
ことをダウぞへざれバ、たハふ(ム)れの善(へ)なるよしの、わらハれがたけれぞかし、
かゝるたぐ日、いろ/\おほし、なすらへてさとるべし、
◯みやびごとハ、二つにも三つにも分れたることを、さとび言には、合をて一ツ
にいふあり、又雅言(ミヤビゴト)ハ一つながら、さとびごとにてハ、二つ三つにわかれたる
もあるゆゑに、ひとつ俗言(サトビゴト)を、これにもかれにもあつるとある也、
◯まさしくあつべき俗言のなき詞には、一つに二ツ三ツをつらねてう

はしがき四ウ 9

つすこちあり、又は上下の語の訳(うつし)の中小、其言をこむることもあり、あるハ
二句三句を合わせて、そのすべての言をもて訳(ウツ)すもあり、そハたとへバ「ことな
らバさかずやむあらぬ桜花などの、ことならばといふ詞など、一つはなち
てハ、いかにもうつすべき俗言なれバ、二句を合わせて、トテモ此ヤワニ早ウ散(ル)クラい
ナラバ一向ニ初(メ)カラサカヌガヨイニナゼサカヌニハヰヌゾ、と訳(ウツ)せるがごとし、
◯歌によりて、もとの語のつゞきざま、「てにをは」などにもかゝハらで、すべて
の言をえて訳(ウツ)すべきあり、もとの詞つゞき、「てにをハ」などを、かたくまも
りてハ、かへりて一かたの言にうとくなることもあれバ也、たとへば「こぞと
やいはむ、ことしとやいはむなど、詞をまもらバ、去年ト云(ハ)ウカ今年トイハ
ウカ、と、訳すべけれども、さてハ俗言の例にうとし、去年ト云タモノデアラウカ

はしがき五オ 10

今年ト云タモノデアラウカとうつすぞよくあたれる、又春くることを「たれ
かしらまし」など、春ノキタトヲ云々、と訳(ウツ)さゞれバ、あたりがたし、「来(ク)る」と
「来(キ)タ」とハ、たがひあれども、此歌などの「来(キ)ぬる」と有べきことなるを、
さはいひがたき所に、「くる」とハいつるなれバ、そのこゝろをえて、「キタ」と訳(ウツ)
すべき也、かゝるたぐひ、いとおほし、なすらへて、さとるべし、
◯詞をかへてうつすべきあり、「花と見て」などの「見て」ハ、俗語には、「見て」と
ハいはざれバ、「花ヂヤト思ウテ」と訳すべし、「わぶとこゝろへよ」、などの類の「こ
たふる」ハ、俗言には、「こたふ」とハいはず、たゞ「イフ」といへば、「難-儀ヲシテ居ルト
イヘ」と訳すべし、又「てにをは」をかへて訳すべきも有リ、「春ハ来にけり」な
どのエモジハ、「春ガキタワイ」と、ガにかふ、此類多し、又「てにをは」を添(フ)べ

はしがき五ウ 11

きもあり・「花咲にけり」などハ、「花が咲いタワイ」と、「ガ」うをそふ、此類ハ殊におほし、す べて俗言にハ、「ガ」と

いふことの多き也、雅言のぞをも、多くハ「ガ」といへり、「花なき」

などハ、「花ノナイ里」と、「ノ」をそふ、又はぶきて訳すべきも、「人しなけれバ」「ぬきて

をゆかむ」などの、「しもじ」を「もじ」、訳言(ウツシコトバ)をあゝハ、中々にわろし、

◯詞のところををおきかへてうつすべきことおほし、「あかずとやなくや山郭公」

などハ、「郭公」を上へうつして、「郭公ハ残リオホウ思フテアノヤウニ鳴クカ」と訳し、「よるさ

へ見よ」とてらす月影は、ヨルマデ見ヨ」トテ「月の影をテラス」とうつし、「ちくさに物

を思ふゝろかな」のたぐひは、「こゝろ」を上にうつして、「コノゴロハイロ/\」ト物思ヒノ

シゲイ「カナ」とやくし、「うらさびしくも見てわたるかな」ハ、「すてる」を上へう

つして、「見ワタシタトコロガキツウマアものサビシウ見エル」「カナ」と訳すたぐひにて、これ

はしがき六オ 12

雅事(ミヤビゴト)と俗事(サトゴト)と、いふやうのたがひ也、又「てにをは」も、ところをかへて訳

すべきあり、「ものうかるねに鶯ぞなく」など、「ものうかる春にぞ」と、「ぞ」も

じハ、上にあるべきことなれども、さいハひがたき所に、鶯の下におけるなれば、

其こゝろをえて、訳(ウツ)すべき也、此例多し、皆なすらふべし、ふべし、

◯「てにをは」の事、「ぞ」もじハ、訳すべき詞なし、たとへバ「花ぞ昔の香ににほひける

のごとき、殊に力(ラ)を入(レ)たるぞなるを、俗言にハ、花ガといひて、其所にちからを入れ

て、いきほひにて、雅語のぞの意に聞(カ)することなるを、しか口にいふいきほひハ、物

にハ出るべくもあらざれバ、今ハサといふ辞を添(ヘ)て、ぞにあてゝ、花ガサ昔

ノ云々と訳す、ぞもじの例、みな然り、こそハ、つかひざま大かた二つある中に、

「花こそちらめ、根さへかれねや」などやうに、むかへていふことあるハ、さとびごと

はしがき六ウ 13

も同じく、こそといへり、今風にこそ見ざるべらなれ、「雪とのみこそ花ハ

ちるらめ」などのたぐひこそハ、うつすべき詞なし、これハ「ぞ」にいとちかければ、「ぞ」の例によなり、「山風ぞ」云々、「雪とのミぞ」云々、とひたらむに、いく

ばくのたがひもあらざれバ也、さるをしひていさゝかのけぢめをもわか

むろすれバ、中々にうとくなること也、「たがそでふれしや、どの梅ぞ」と、「恋も

するかな」などのたぐひの「も」もじハ、「マァ」と訳す、「マァ」ハ、やがて此もの訳(ウツ)れる

にぞあらむ、疑ひの「や」もじハ、俗語にハ皆、力といふ「春やとき、花やおそき」とハ、「春が早イ

ノカ、花ガオソイノカ」と訳すがごとし、

◯「ん」は、俗語にはすべて皆「ウ」といふ、来んゆかんを、「ゴウイカウ」といふ類也

はしがき 七オ 14

「けんなん」などの「ん」も同じ、「花やちりけん」ハ、「花ガチッタデアラウカ」、「花や

ちりなん」は、「花ガチツタデアラウカ」と訳す、さて此、「チツタデ」といふと、「チルデ」といふと

のかハりをもて「けん」と「なん」とのけぢめをも、さとるべし、さて又語の

つゞきたるなからにあるは、多くハうつしがたし、たとへば「見ん人」は「見よ」、

「ちりなん」後ぞ、「ちりなん」小野のなどのたぐひ、人へゞき、後へつゞき、小野へ

つゞきて、「ん」ハ皆「なからう」有り、此類は、俗語にハたゞに、見る人ハ、「チツテ」後二、

「チル」小野ノとやうにいひて、「見ヤウ(ん)人」ハ、「チルデ(なん)アラウ」後二、「チルデ(なん)アラウ」小野ノ、などハいは

ざれバ也、然るに此類をも、「しひてんなんらん」のことを、こまかに訳さむ

とならバ、「散なん」後ぞハ、「オツゝケチチルデアラウガ散タ後二サ」と訳し、「ちるらん

小野の」は、「サダメテ此ゴロハ萩ノ花ガチルでアラウ(らん)ガ其野ノ」、とやうに訳すべし、然

はしがき 七ウ 15

れども、俗語に さ はいハざれバ、中々にうとし、同じことながら、「春露たち

かくすらん、山の桜をなどハ、山の桜は露がカクシテアルデアラウ二」、と訳してよ

ろしく、又 「かの見ん人は見よ」なども、「見ヤウト思フ人ハ」と うつれバ、俗語にも

かなへり、歌のさまによりてハ、かうやうにもうつすべし、)

◯「らん」の訳(ウツシ)ハ、くさ/″\あり、「春たつけふの風や とくらん」などハ、「風ガトカスデア

ラウカ」と訳す、アラウランにあたりガ上のやに あたれり、「いつの人まに うつろひぬら

ん」などハ、「イツノヒマ二散テシマウタ「ヤラ」」と訳す、「ヤラ」らんにあたれり、「人に知られ

ぬ花やさくらん」などハ、「人二シラサヌ花が咲タカシラヌ」と訳す、「カシラヌやとらん」

とにあたれり、又 「上にや何」などといふ、うたがひことばなくて、「らん」と結びたる

にハ、「ドウイフことデ」といふ詞をそへてうつすも多し、又 「相坂のゆふつけ鳥も

れども、俗語に さ は 言わざれば、中々にうとし、同じ事ながら、「春露たち

隠すらん、山の桜を などは、山の桜は露が隠してあるであろうに(カクシテアルデアラウ二)」、と訳して よ

ろしく、又 「かの見ん人は、見よ」なども、「見ようと思う人は」と うつれば、俗語にも

かなえり、歌の様に依りては、この(こう)ようにも写すべし、

◯「らん」の訳(ウツシ)は、種々(くさぐさ)あり、「春立つ今日の風や とくらん」などは、「風がとかすであろうか(風ガトカスデア

ラウカ)」と訳す、「あろうらん(アラウラン)」にあたりが上の「や」に 当たれり、「いつの人まに うつろいぬら

ん」などハ、「いつの日に散してしもうた「やら」」と訳す、「やら」「らん」に当たれり、「人に知られ」

ぬ花や咲くらん」などは、「人に知らさぬ花が咲たかしらぬ」と訳す、「かしらぬ やとらん」

とに当たれり、又 「上にや何」などと言う、疑い詞無くて、「らん」と結びたる

には、「どう言う事で」と言う詞を添えて写すも多し、又 「相坂の夕つけ鳥も

八オ 16

わがごとく、「人や意しき、音のミ 鳴らん」などハ、「人が恋シイヤラ声ヲアゲテヒタスラナク」

とうつす、「これハ」とちぢめの「らん」の疑ひを、上へうつして、「や」と合わせて、「ヤラ」といふ也、

「ヤラバ すなわちやらん」といふこと也、「又玉かづら 今ハたゆとや、吹風の春にも

人のきこえざるらん」 などのたぐひも、同じく上へうつして、「や」と合せて、「ヤラ」

と訳して下ノ句をば、一向ニ「オトヅレモセヌ」と、落としつけてとぢむ、これらハ「らん」

とうたがつる事ハ、上にありて、下にはあらざれバ「なり」

◯「らし」ハ、「サウナ」と訳す、「サウナ」ハ、さまなるといふことなるを、春便りに「サウ」と

いひ、「る」をはぶける也、然れバ言の本のことを、「らしく」と同じおもむきに

あたる辞也、たとへば「物思ふらし」を、「物ヲモウサウナ」と訳すが如き、「らし」も

「サウナ」と共に、人の物思ふさまなるを見て、おしはかりたる春なれバ也、さてついで

わがごとく、「人や意識、音のみ 鳴らん」などは、「人が恋しいやら声を上げてひたすら鳴く」

と写す、「これは」と縮めの「らん」の疑ひを、上へ写して、「や」と合わせて、「やら」と言う也、

「やらば すなわち やらん」と言う事也、又玉葛(たまかずら) 今は絶ゆとや、吹風の春にも

人の聞こえざるらん」 などの類も、同じく上へ写して、「や」と合せて、「やら」

と訳して下の句をば、一向に「訪れもせぬ」と、落とし付けて閉じむ、これらは「らん」

と疑つる事は、上にありて、下にはあらざれば「なり」

◯「らし」は、「そうな」と訳す、「そうな」は、「さまなる」と言う事成るを、春便りに「そう」と

言い、「る」を省ける也、然れば言の本の事を、「らしく」と同じ趣に

あたる辞也、例えば「物思うらし」を、「物思うそうな」と訳すが如き、「らし」も

「そうな」と共に、「人の物思う様成るを見て、推しはかりたる春なれば也」、さてついで

 


『Golden Slumber ゴールデン・スランバー』2018年 韓国 原作:伊坂幸太郎 ノ・ドンソク監督・脚本

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写真は、法隆寺

 

 

 『Golden Slumber ゴールデン・スランバー』2018年 韓国 原作:伊坂幸太郎 ノ・ドンソク監督

 

 映画『Golden Slumber ゴールデン・スランバー』を見る。

 前半は主人公にジャッキー・チェンを重ねて見ていたが、巻き込まれる形で、主人公自体のアクション性は薄い^^

 それもそのはず。題名が『Golden Slumber』である。

 しかしながら、主人公カン・ドンウォンの随所随所の目力は、歌舞伎役者さながらであった^^v

 

 少し話が進むと、私の中で、斯の映画をミュージカル的な舞台に造り替えるとどう成るこう成ると言うイメージと映画の二重構成で楽しんでいた。

 ネタバレは今回も省こうと思うのですが、最後の場面のミュージカル版ならこうだ!と云うイメージは鮮明且つ強烈で、結果今回の映画も楽しんで見ることができた。

 

 今回も簡単な記録のみにて失礼申し上げます。

 

原題/Golden Slumber 制作年/2018 制作国/韓国 内容時間(字幕版)/109分

 

 以下はwowow公式HPより ▼

 日本でも映画化された伊坂幸太郎のベストセラー小説を、韓国で再映画化したサスペンス。次期大統領候補を暗殺したという、ぬれぎぬを着せられた青年役にカン・ドンウォン。

「このミステリーがすごい!」2009年版で第1位になるなど好評を博した伊坂の小説は翌年、日本で映画化されてヒットしたが、本作は「俺たちの明日(2006)」のノ・ドンソク監督が韓国で再映画化したもの。基本的な物語は原作とほぼ同じだが、活況を呈する現在の韓国映画界らしくソウル市街地でのロケ、爆破シーンや車・バイクを使ったチェイスなど、日本版よりもスケールアップする方向にシフトチェンジ。繊細な主人公像も「MASTER/マスター」などの売れっ子男優カン・ドンウォンにぴたりとはまった。

6月27日の庭の草々

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 6月27日の庭の草々

 

ケマンソウ(華鬘草)

鯛釣りと言われる方もいらっしゃいます^^

  おめでたい めでたい鯛をデン!と釣り

  とう もつれれば 嬉しからむ

元は

  おめでたい めでたい鯛をデン!と釣り

  とう もつれれば 嬉れしいな (小学生低学年 我が子)

5月27日は うふふ^^

うふふは 5/24 5/25 5/26 5/27と偶然重なっていまする。

5/24でわんこのももちゃんが5歳になりました^^やっほい^^v

この紫陽花は背丈の1,5倍近くあります^^

横の紫陽花は背丈くらい^^

他にも3株の紫陽花があります。

まだ色付き始めたばかりで、これからの色の変化が楽しみです^^

紫陽花がまだ色づいれないので、ゼラニュームが差し色になっています。

萩は3株

背丈の1,5倍くらいになり、ただいまの季節、多くの蕾が付き始めています。

これは黒龍という椿です。

花が終わり、実がなっています。

この近くには、オリーブを株植えています^^

花が咲き、実がなるかしらん^^

萩の足元にピンクの花

これはなんという花でしたかしらん^^

背丈に届いたレンギョウが3株

花のピークは過ぎ、剪定も終えました。

写真は、残り火のように咲いてくれているビタミンカラーのレンギョウです^^

5月27日の庭の草を眺めてお昼に麺を食べたり、

ポーチのテーブルでコーヒーを飲んだり、

床机に坐ってほっこりした日々を送っています^^

 

 

『絵入 好色一代男』八全之内 巻一 七 別れハ当座のはらひ 【1】十九丁オ 井原西鶴

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 絵入  好色一代男   八前之内 巻一  井原西鶴
 天和二壬戌年陽月中旬 
 大阪思案橋 孫兵衞可心板



  『絵入 好色一代男』八全之内 巻一 七 別れハ当座のはらひ 【1】十九丁オ 井原西鶴

  

別れハ当座のはらひ

茶宇嶋のきれにて、お物師がぬうてくれし、前巾着(まへきんちやく)に

、こまかなる露を、盗(ぬす)みためて、或(ある)夕暮、小者(こもの)あがりの

若き者をまねき、同し心の水のみなかみ、清水八坂に

さし懸(かゝ)り、此あたりの事でハないか、日外(いつそや)ものがたりせし、

歌よくうたふて、酒飲(のん)て、然も憎(にく)からぬ女ハ、菊屋か

三河屋 蔦(つた)屋かと探(さが)して、細道(ほそ道)の萩垣(はぎかき)を、奥に入れば

梅(むめ)に鶯(うくいす)の屏風床(ひやうぶとこ)にハ誰(た)が引捨し、かしの木のさほに、一筋(すぢ)

切れて、むすぶともなく、うるみ朱の、煙草盆(たはこぼん)に、炭団(たどん)の

埋(うつみ)火絶(たへ)ず、畳ハなにとなく、うちしめりて、心地(こゝち)よからず、

おもひながら、れいのとさん出て、祇園細工(きをんさいく)、あしつきに

 

別れは当座の払い

茶宇嶋のきれにて、お物師が縫うてくれし、前巾着(まへきんちゃく)に

、細かなる露を、盗(ぬす)み貯めて、或(ある)夕暮、小者(こもの)あがりの

若き者を招き、同じ心の水の水神(みなかみ)、清水八坂に

さしかかり、此あたりの事ではないか、日外(いつぞや)物語せし、

歌よく歌うて、酒飲(のん)で、然も憎(にく)からぬ女は、菊屋か

三河屋 蔦屋かと探して、細道(ほそ道)の萩垣、奥に入れば

梅に鶯の屏風床(びょうぶどこ)には、誰(た)が引き捨てし、樫(かし)の木の竿に、一筋

切れて、結ぶともなく、うるみ朱の、煙草盆(たばこぼん)に、炭団(たどん)の

埋(うづみ)火絶(たえ)ず、畳は 何となく、うち湿りて、心地(ここち)良からず、

思いながら、例のとさん出て、祇園細工、足つぎに

 

茶宇嶋(絹織物の種類の名)

きれ(布)

お物師(御物師 おものし)

 公家(くげ)や武家に仕えた裁縫師。のち、裁縫専門の女奉公人。ものし。
「―がぬうてくれし前巾着」〈浮・一代男・一〉

露(露銀 ろぎん)

水の水神(みなかみ)清水八坂に   日本古典文学大系『西鶴集 上』頭注

 「水の水神清くして流れの末も久方の空も長閑に廻る日の影 清水の寺とし改めて」(田村の草子)

長閑(のどか)

田村の草子

 御伽草子。

〈とししげ〉将軍の子〈としすけ〉がますだが池の大蛇との間にもうけた利仁将軍は,陸奥国たか山の〈あくる王〉という鬼に妻を奪われた。

 鞍馬の多聞天の守護をこうむって〈あくる王〉を滅ぼし,妻をとり返す。

 その折,陸奥国はつせの郡田むらの郷の賤(しず)の女との間にもうけた子が長じて田村大将軍俊宗となる。

 俊宗は17歳のとき,大和国奈良坂山で,かなつぶてをうつ〈りやうせん〉という化生のものを退治。

 さらに2年後には,伊勢国鈴鹿山の〈大だけ丸〉という鬼神を滅ぼすべしとの宣旨をこうむる。

 鈴鹿御前という天女を妻とし,その助けによって〈大だけ丸〉を退治する。

樫(かし)の木のさほ

 三味線などを作るとき、紫檀などを上等とし樫を下品とした。  日本古典文学大系『西鶴集 上』頭注

 また、樫は硬い木として有名。

 「樫の木のさほ」は、ワハハである^^

 以下しばらくはワハハが続くので、意味は省略

とさん

 酒を捨てる台


 

一巻 七 別れハ当座のはらひ 

【1】十九丁オ

別れハ当座のはらひ

茶宇嶋のきれにて、お物師がぬうてくれし、前巾着(まへきんちやく)に

、こまかなる露を、盗(ぬす)みためて、或(ある)夕暮、小者(こもの)あがりの

若き者をまねき、同し心の水のみなかみ、清水八坂に

さし懸(かゝ)り、此あたりの事でハないか、日外(いつそや)ものがたりせし、

歌よくうたふて、酒飲(のん)て、然も憎(にく)からぬ女ハ、菊屋か

三河屋 蔦(つた)屋かと探(さが)して、細道(ほそ道)の萩垣(はぎかき)を、奥に入れば

梅(むめ)に鶯(うくいす)の屏風床(ひやうぶとこ)にハ誰(た)が引捨し、かしの木のさほに、一筋(すぢ)

切れて、むすぶともなく、うるみ朱の、煙草盆(たはこぼん)に、炭団(たどん)の

埋(うつみ)火絶(たへ)ず、畳ハなにとなく、うちしめりて、心地(こゝち)よからず、

おもひながら、れいのとさん出て、祇園細工(きをんさいく)、あしつきに

別れは当座の払い

茶宇嶋のきれにて、お物師が縫うてくれし、前巾着(まへきんちゃく)に

、細かなる露を、盗(ぬす)み貯めて、或(ある)夕暮、小者(こもの)あがりの

若き者を招き、同じ心の水の水神(みなかみ)、清水八坂に

さしかかり、此あたりの事ではないか、日外(いつぞや)物語せし、

歌よく歌うて、酒飲(のん)で、然も憎(にく)からぬ女は、菊屋か

三河屋 蔦屋かと探して、細道(ほそ道)の萩垣、奥に入れば

梅に鶯の屏風床(びょうぶどこ)には、誰(た)が引き捨てし、樫(かし)の木の竿に、一筋

切れて、結ぶともなく、うるみ朱の、煙草盆(たばこぼん)に、炭団(たどん)の

埋(うづみ)火絶(たえ)ず、畳は 何となく、うち湿りて、心地(ここち)良からず、

思いながら、例のとさん出て、祇園細工、足つぎに

 

 

『絵入 好色一代男』八全之内 巻一 七 別れハ当座のはらひ 【2】十九丁ウ 井原西鶴

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 絵入  好色一代男   八前之内 巻一  井原西鶴
 天和二壬戌年陽月中旬 
 大阪思案橋 孫兵衞可心板



  『絵入 好色一代男』八全之内 巻一 七 別れハ当座のはらひ 【2】十九丁ウ 井原西鶴

  

杉板(すぎいた)につけて、焼きたるとゝ、おお定(さだ)まりの蛸(たこ)、漬梅(つけ梅)、色付の

薑(はじかみ)に、塗竹箸を取そえ、おりふし春ふく、藤色(ふじいろ)の

りきん嶋(しま)に、わけしりだてなる、茶(ちや)じゆすの幅広(はゞひろ)、

はさみ結(むす)びにして、朝鮮(てうせん)さやの二の物を、ほのかに

、のべ紙(かみ)に、数(かず)歯枝(ようじ)をみせ懸(かけ)髪ハ四つ折(おり)に、しどけ

なくつかねて、左(ひだり)の御手に、朱葢のつるを引提(ひつかけ)、たち

出るより「淋(さひ)しさうなる事かな、少 さゝなど、是より

給(たべ)まして」といふもいやらしく、屢(しば)しハ、実(み)のなき垣(かや)を

荒らして、ありしが、無下(むげ)に捨(すて)難(かたく)、いたゞけば、濱焼(はまやき)の

中程(ほと)を、ふつゝかにはさみて、抑えますかといふ、はしめの

程ハ、たまわり兼(かね)、さらに又、所(ところ)を替(かえ)てとおもふ内に、せハしく

 

杉板(すぎいた)に付けて、焼きたると と、大定(さだ)まりの蛸(たこ)、漬梅(つけ梅)、色付の

薑(はじかみ)に、塗竹箸を取(とり)添え、折節 春ぶく、藤色(ふじいろ)の

りきん嶋(じま)に、訳 知りだてなる、茶(ちゃ)繻子(しゅす)の幅広(はばひろ)、

挟み結びにして、朝鮮(ちょうせん)鞘の二の物を、ほのかに

、のべ紙に、数(かず)楊枝(ようじ)を見せ懸(かけ)髪は 四つ折に、しどけ

なく つかねて、左の御手に、朱葢のつるを引っ掛け、立ち

給(たべ)まして」と言うもいやらしく、屢(しば)しは、実の無き垣(かや)を

荒らしてありしがが、無下(むげ)に捨て難く、頂けば、濱焼(はまやき)の

中程を、不束(ふつつか)に挟みて、「抑えまする」と言う、初めの

程は、たまわりかね、さらに又、所を替と思う内に、忙しく(せわしく)

出るより「淋しそうなる事かな、少 ささなど、是より

 

りきん嶋(未詳)

幅広(はゞひろ)

 幅の広い帯

朝鮮(てうせん)鞘(さや)

 朝鮮の紋の無い沙織

二の物

 腰巻

茶(ちゃ)じゅす

 茶色の繻子

さゝ(ささ)

 酒

屢(しばしば)

 1 しばしば、度々、繰り返し

 2 わずらわしい

 


 

一巻 七 別れハ当座のはらひ 

【1】十九丁オ

別れハ当座のはらひ

茶宇嶋のきれにて、お物師がぬうてくれし、前巾着(まへきんちやく)に

、こまかなる露を、盗(ぬす)みためて、或(ある)夕暮、小者(こもの)あがりの

若き者をまねき、同し心の水のみなかみ、清水八坂に

さし懸(かゝ)り、此あたりの事でハないか、日外(いつそや)ものがたりせし、

歌よくうたふて、酒飲(のん)て、然も憎(にく)からぬ女ハ、菊屋か

三河屋 蔦(つた)屋かと探(さが)して、細道(ほそ道)の萩垣(はぎかき)を、奥に入れば

梅(むめ)に鶯(うくいす)の屏風床(ひやうぶとこ)にハ誰(た)が引捨し、かしの木のさほに、一筋(すぢ)

切れて、むすぶともなく、うるみ朱の、煙草盆(たはこぼん)に、炭団(たどん)の

埋(うつみ)火絶(たへ)ず、畳ハなにとなく、うちしめりて、心地(こゝち)よからず、

おもひながら、れいのとさん出て、祇園細工(きをんさいく)、あしつきに

別れは当座の払い

茶宇嶋のきれにて、お物師が縫うてくれし、前巾着(まへきんちゃく)に

、細かなる露を、盗(ぬす)み貯めて、或(ある)夕暮、小者(こもの)あがりの

若き者を招き、同じ心の水の水神(みなかみ)、清水八坂に

さしかかり、此あたりの事ではないか、日外(いつぞや)物語せし、

歌よく歌うて、酒飲(のん)で、然も憎(にく)からぬ女は、菊屋か

三河屋 蔦屋かと探して、細道(ほそ道)の萩垣、奥に入れば

梅に鶯の屏風床(びょうぶどこ)には、誰(た)が引き捨てし、樫(かし)の木の竿に、一筋

切れて、結ぶともなく、うるみ朱の、煙草盆(たばこぼん)に、炭団(たどん)の

埋(うづみ)火絶(たえ)ず、畳は 何となく、うち湿りて、心地(ここち)良からず、

思いながら、例のとさん出て、祇園細工、足つぎに

【2】十九丁ウ

杉板(すぎいた)につけて、焼きたるとゝ、おお定(さだ)まりの蛸(たこ)、漬梅(つけ梅)、色付の

薑(はじかみ)に、塗竹箸を取そえ、おりふし春ふく、藤色(ふじいろ)の

りきん嶋(しま)に、わけしりだてなる、茶(ちや)じゆすの幅広(はゞひろ)、

はさみ結(むす)びにして、朝鮮(てうせん)さやの二の物を、ほのかに

、のべ紙(かみ)に、数(かず)歯枝(ようじ)をみせ懸(かけ)髪ハ四つ折(おり)に、しどけ

なくつかねて、左(ひだり)の御手に、朱葢のつるを引提(ひつかけ)、たち

出るより「淋(さひ)しさうなる事かな、少 さゝなど、是より

給(たべ)まして」といふもいやらしく、屢(しば)しハ、実(み)のなき垣(かや)を

荒らして、ありしが、無下(むげ)に捨(すて)難(かたく)、いたゞけば、濱焼(はまやき)の

中程(ほと)を、ふつゝかにはさみて、抑えますかといふ、はしめの

程ハ、たまわり兼(かね)、さらに又、所(ところ)を替(かえ)てとおもふ内に、せハしく

杉板(すぎいた)に付けて、焼きたると と、大定(さだ)まりの蛸(たこ)、漬梅(つけ梅)、色付の

薑(はじかみ)に、塗竹箸を取(とり)添え、折節 春ぶく、藤色(ふじいろ)の

りきん嶋(じま)に、訳 知りだてなる、茶(ちゃ)繻子(しゅす)の幅広(はばひろ)、

挟み結びにして、朝鮮(ちょうせん)鞘の二の物を、ほのかに

、のべ紙に、数(かず)楊枝(ようじ)を見せ懸(かけ)髪は 四つ折に、しどけ

なく つかねて、左の御手に、朱葢のつるを引っ掛け、立ち

給(たべ)まして」と言うもいやらしく、屢(しば)しは、実の無き垣(かや)を

荒らしてありしがが、無下(むげ)に捨て難く、頂けば、濱焼(はまやき)の

中程を、不束(ふつつか)に挟みて、「抑えまする」と言う、初めの

程は、たまわりかね、さらに又、所を替と思う内に、忙しく(せわしく)

出るより「淋しそうなる事かな、少 ささなど、是より

 

 

ヨーグルトを作って、遊んでみました。

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 ヨーグルトを作って、遊んでみました。

 

 

 5月27日 昼12時頃

 ヨーグルトをお茶碗に取り分ける。

 

(1)ヨーグルト容器には、大さじ1,5杯のヨーグルトを残し、ヨーグルト容器に牛乳をなみなみと注ぐ。

(2)清潔なスプーンでかき混ぜ、ラップし、蓋を閉める。

(3)五層程度の分厚い鍋に、2,3センチの水を張り、人肌程度の温度にし、(2)を入れ、鍋の蓋をする。

   

(4)湯の温度が下がれば、(2)を取り出し、人肌程度の湯に入れ、鍋の蓋。これを数度繰り返す。

(5)数時間ほどすると、ヨーグルトが固まっているが、表面だけなのかそこまで固まっているかは定かで無いので、一晩置いておく。

   

(6)朝(13時間後)見ると、ナベボ水が冷たいのに、ヨーグルト容器は心なしか暖かい。

  ヨーグルトはかなり硬くなっていそうだったので、冷蔵庫へ go!

   

(7)昼の12時(24時間後)、冷えたヨーグルトをスプーンですくってみる。

   

   ウンウン、良い感じ^^

   

   美味しそうだ^^

   

   お味は、元のヨーグルトをまろやかさ且つコクを加えた濃い感じ。

   今回は生協ヨーグルトで作ったが、違うヨーグルトで作るといいかも^^

 

 実はヨーグルトで遊ぶことを思いついたのは、〇〇おばさんのブログのおかげ。ありがとうございます!

 〇〇おばさんは、あずきだのよもぎだので本格的にヨーグルトを作られていらっしゃる。

 私は この方の様にヨーグルト作りの知識が無く、ただただ作ってみたいという衝動に駆られて、簡単且つ安全な形で考えたのが、人肌湯煎でのヨーグルト作りであった。

 ヨーグルトの容器で牛乳代プラスαの材料費で技術なく作れるので、私向き。

 

 お昼に家族と出来立て手作りヨーグルトをいただきながら、イランのヨーグルトの美味しさを語り合った。

 キューリ、或いはニンニクのみじん切りの入ったヨーグルトの美味しさ。

 とろとろのハチミツやざくろソースをかけたハチミツ。

 イランのヨーグルトは、かなり酸っぱくてとても美味しい。

 

 タブリーズと云うイランの町で特徴的な、ヤギのヨーグルトやドゥーグは相当な匂いがし、覚悟して取り掛からないと食べることができない^^

 又、シャブシーブと云うイラクとの国境沿いの村の事。民家の玄関では、木に吊るしたヤギの皮に入れた乳を、女性二人掛かりでバタンバタンと動かし、ドゥーグを作っておられた。

 私はといえば、ヨーグルト容器でヨーグルトができたと、大いに喜んでいる軟弱ぶりである。

 まぁ、そんなことがあってもいい^^

 

映画『The Institute 狂人ドクター』2017年 アメリカ  ジェームズ・フランコ監督  パメラ・ロマノウスキー監督

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 開口健氏も書いた京都のサンボアのドライマティーニ。一口つけてから写真を撮らねばと気がついたので、表面張力なし^^

 

 

   映画『The Institute 狂人ドクター』2017年 アメリカ  ジェームズ・フランコ監督  パメラ・ロマノウスキー監督

 映画『The Institute 狂人ドクター』をみたが、鳥肌が立つほど、怖かった。

 これが実話で、この病院が閉鎖されたのも11年前の2009年というから、怖い。

 

   ↑

 

   実はここに諸国、諸事情と比較して、長ったらしい感想を書いていたが、あえて 省略した。

 

   ↓

 

 突き詰めると、この映画の根本につながる事は明白である云々は、その名残である。

 調べてみると評価の低い映画ではあるが、内容的に考えて、みる価値があると思う。

 この映画自体は残酷な部分は多いが、重厚で、話も練り上げられている。

 

 ラストの、主人公女性の表情と後ろ姿が、脳裏に焼きつく。

 

 

 ローズウッド研究所

 かつて人体実験が行われていたり、劣悪な環境にあったアメリカの11の精神病院

 

 

 

以下はwowow 公式HP

原題/The Institute

2017

アメリカ

99分

「ディザスター・アーティスト」のJ・フランコが、共同監督・共同製作・主演を兼ねた衝撃の問題作。19世紀末、とある療養所で行なわれていた驚くべき医療の実態とは? 

19世紀末、アメリカ東部に開設された特別医療施設〈ローズウッド研究所〉。2009年に閉鎖されるまで実在した同施設で、あくまで治療を名目に、医師たちが上流家庭の若き女性患者たちを相手に行なっていたとされるおぞましい実験的医療の実態を、共同監督・共同製作・主演のひとり3役を兼ねてフランコが映画化。ヒロインに抜擢され、全裸も辞さぬ体当たりの熱演を披露するのは、新星のA・ガッレラーニ。共演は、やはりフランコが監督や出演などを兼ねた「チャイルド・オブ・ゴッド」に主演したT・B・ネルソン

 

 

監督 ジェームズ・フランコ 監督 パメラ・ロマノウスキー 製作 ジェームズ・フランコ 製作 クリスタ・キャンベル 製作 ジェイ・デイヴィスほか 脚本 マット・レイジャー 脚本 アダム・レイジャー 撮影 ペドロ・ゴメス・ミラン 音楽 アダム・クリスタル

 

 

  『絵入 好色一代男』八全之内 巻一 七 別れハ当座のはらひ 【3】二十丁オ 井原西鶴

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 絵入  好色一代男   八前之内 巻一  井原西鶴
 天和二壬戌年陽月中旬 
 大阪思案橋 孫兵衞可心板



    『絵入 好色一代男』八全之内 巻一 七 別れハ当座のはらひ 【3】二十丁オ 井原西鶴

  

銚子(てうし)かえる事あり、興(ふと)腰(こし)つきに え もいはれぬ所ありて

似卜(にぼく)が、やりくり合点(かてん)か、二つ折(おり)の絵(え)むしろに、木枕(まくら)の

音も又おかしく、最前(さいせん)の りきん嶋(しま)うそよごれたる

浅葱(あさき)のに替りて、鼻歌(はなうた)などにて、人まつけしき

今や、世之助十二より、声(こゑ)も替(かハ)りて、おとなはつかしく

、はづるとハなくに、かくしば楽の事も、一世ながら

くハん様の、お引合(ひきあハせ)、末/″\馴染(なじみ)て、若(もし)又お中に、

やうすが、出来(でき)たらば、近所(きんじよ)にさいはい、子安(こやす)の、お地蔵(ぢざう)ハ

御さり、太義(たいぎ)なれと、百の餅舟(もちふね)は、阿爺(とゝ)がするぞ、

機遣(きつかい)をなしに、帯(おび)とけと、ひとつも、口をあかせず

、わるごう有(ある)程(ほど)つくして、物しける、うちときて

 

銚子(ちょうし)かえる事あり、興(ふと)腰付きに え も言われぬ所ありて

似卜(にぼく)が、やりくり合点(がてん)か、二つ折(おり)の絵むしろに、木枕の

音も又おかしく、最前の りきん嶋、うすよごれたる

浅葱(あさぎ)のに替りて、鼻歌(はなうた)などにて、人待つ景色

今や、世之助十二より、声(こゑ)も替(かハ)りて、大人 はづかしく

、はづるとはなくに、かく暫くの事も、一世ながら

くはん様の、お引合(ひきあわせ)、末々馴染(なじみ)て、若(もし)又お中に、

様子が、出来たらば、近所に幸い、子安(こやす)の、お地蔵は

御さり、太義(たいぎ)なれと、百の餅舟(もちふね)は、阿爺(とと)がするぞ、

機遣(気遣い)をなしに、帯(おび)解けと、ひとつも、口をあかせず

、悪ごう有(ある)程 尽くして、物しける、うちときて

 

りきん嶋(未詳)

うそよごれたる(うすよごれたる)

はつかしく( はづかしく)

しば楽(暫く)

機遣(きつかい 気遣い)

 


 

一巻 七 別れハ当座のはらひ 

【1】十九丁オ

別れハ当座のはらひ

茶宇嶋のきれにて、お物師がぬうてくれし、前巾着(まへきんちやく)に

、こまかなる露を、盗(ぬす)みためて、或(ある)夕暮、小者(こもの)あがりの

若き者をまねき、同し心の水のみなかみ、清水八坂に

さし懸(かゝ)り、此あたりの事でハないか、日外(いつそや)ものがたりせし、

歌よくうたふて、酒飲(のん)て、然も憎(にく)からぬ女ハ、菊屋か

三河屋 蔦(つた)屋かと探(さが)して、細道(ほそ道)の萩垣(はぎかき)を、奥に入れば

梅(むめ)に鶯(うくいす)の屏風床(ひやうぶとこ)にハ誰(た)が引捨し、かしの木のさほに、一筋(すぢ)

切れて、むすぶともなく、うるみ朱の、煙草盆(たはこぼん)に、炭団(たどん)の

埋(うつみ)火絶(たへ)ず、畳ハなにとなく、うちしめりて、心地(こゝち)よからず、

おもひながら、れいのとさん出て、祇園細工(きをんさいく)、あしつきに

別れは当座の払い

茶宇嶋のきれにて、お物師が縫うてくれし、前巾着(まへきんちゃく)に

、細かなる露を、盗(ぬす)み貯めて、或(ある)夕暮、小者(こもの)あがりの

若き者を招き、同じ心の水の水神(みなかみ)、清水八坂に

さしかかり、此あたりの事ではないか、日外(いつぞや)物語せし、

歌よく歌うて、酒飲(のん)で、然も憎(にく)からぬ女は、菊屋か

三河屋 蔦屋かと探して、細道(ほそ道)の萩垣、奥に入れば

梅に鶯の屏風床(びょうぶどこ)には、誰(た)が引き捨てし、樫(かし)の木の竿に、一筋

切れて、結ぶともなく、うるみ朱の、煙草盆(たばこぼん)に、炭団(たどん)の

埋(うづみ)火絶(たえ)ず、畳は 何となく、うち湿りて、心地(ここち)良からず、

思いながら、例のとさん出て、祇園細工、足つぎに

【2】十九丁ウ

杉板(すぎいた)につけて、焼きたるとゝ、おお定(さだ)まりの蛸(たこ)、漬梅(つけ梅)、色付の

薑(はじかみ)に、塗竹箸を取そえ、おりふし春ふく、藤色(ふじいろ)の

りきん嶋(しま)に、わけしりだてなる、茶(ちや)じゆすの幅広(はゞひろ)、

はさみ結(むす)びにして、朝鮮(てうせん)さやの二の物を、ほのかに

、のべ紙(かみ)に、数(かず)歯枝(ようじ)をみせ懸(かけ)髪ハ四つ折(おり)に、しどけ

なくつかねて、左(ひだり)の御手に、朱葢のつるを引提(ひつかけ)、たち

出るより「淋(さひ)しさうなる事かな、少 さゝなど、是より

給(たべ)まして」といふもいやらしく、屢(しば)しハ、実(み)のなき垣(かや)を

荒らして、ありしが、無下(むげ)に捨(すて)難(かたく)、いたゞけば、濱焼(はまやき)の

中程(ほと)を、ふつゝかにはさみて、抑えますかといふ、はしめの

程ハ、たまわり兼(かね)、さらに又、所(ところ)を替(かえ)てとおもふ内に、せハしく

杉板(すぎいた)に付けて、焼きたると と、大定(さだ)まりの蛸(たこ)、漬梅(つけ梅)、色付の

薑(はじかみ)に、塗竹箸を取(とり)添え、折節 春ぶく、藤色(ふじいろ)の

りきん嶋(じま)に、訳 知りだてなる、茶(ちゃ)繻子(しゅす)の幅広(はばひろ)、

挟み結びにして、朝鮮(ちょうせん)鞘の二の物を、ほのかに

、のべ紙に、数(かず)楊枝(ようじ)を見せ懸(かけ)髪は 四つ折に、しどけ

なく つかねて、左の御手に、朱葢のつるを引っ掛け、立ち

給(たべ)まして」と言うもいやらしく、屢(しば)しは、実の無き垣(かや)を

荒らしてありしがが、無下(むげ)に捨て難く、頂けば、濱焼(はまやき)の

中程を、不束(ふつつか)に挟みて、「抑えまする」と言う、初めの

程は、たまわりかね、さらに又、所を替と思う内に、忙しく(せわしく)

出るより「淋しそうなる事かな、少 ささなど、是より

【3】二十丁オ

銚子(てうし)かえる事あり、興(ふと)腰(こし)つきに え もいはれぬ所ありて

似卜(にぼく)が、やりくり合点(かてん)か、二つ折(おり)の絵(え)むしろに、木枕(まくら)の

音も又おかしく、最前(さいせん)の りきん嶋(しま)うそよごれたる

浅葱(あさき)のに替りて、鼻歌(はなうた)などにて、人まつけしき

今や、世之助十二より、声(こゑ)も替(かハ)りて、おとなはつかしく

、はづるとハなくに、かくしば楽の事も、一世ながら

くハん様の、お引合(ひきあハせ)、末/″\馴染(なじみ)て、若(もし)又お中に、

やうすが、出来(でき)たらば、近所(きんじよ)にさいはい、子安(こやす)の、お地蔵(ぢざう)ハ

御さり、太義(たいぎ)なれと、百の餅舟(もちふね)は、阿爺(とゝ)がするぞ、

機遣(きつかい)をなしに、帯(おび)とけと、ひとつも、口をあかせず

、わるごう有(ある)程(ほど)つくして、物しける、うちときて

銚子(ちょうし)かえる事あり、興(ふと)腰付きに え も言われぬ所ありて

似卜(にぼく)が、やりくり合点(がてん)か、二つ折(おり)の絵むしろに、木枕の

音も又おかしく、最前の りきん嶋、うすよごれたる

浅葱(あさぎ)のに替りて、鼻歌(はなうた)などにて、人待つ景色

今や、世之助十二より、声(こゑ)も替(かハ)りて、大人 はづかしく

、はづるとはなくに、かく暫くの事も、一世ながら

くはん様の、お引合(ひきあわせ)、末々馴染(なじみ)て、若(もし)又お中に、

様子が、出来たらば、近所に幸い、子安(こやす)の、お地蔵は

御さり、太義(たいぎ)なれと、百の餅舟(もちふね)は、阿爺(とと)がするぞ、

機遣(気遣い)をなしに、帯(おび)解けと、ひとつも、口をあかせず

、悪ごう有(ある)程 尽くして、物しける、うちときて

 


乱鳥の今更人に聞けない言葉の混乱 33 次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウム液

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乱鳥の今更人に聞けない言葉の混乱 33 次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウム液

 

【次亜塩素酸水】 ウィキペディア

 次亜塩素酸水(じあえんそさんすい)は、2002年食品添加物(殺菌料)に指定された(2012年改訂)、10~80ppmの有効塩素濃度を持つ酸性電解水に付けられた名称である。

 

 安全性について食品安全委員会による評価を受け、人の健康を損なうおそれのないということで、成分の規格や、使用の基準を定めたうえで、使用が認められた。

 食品添加物は第9版食品添加物公定書により、製造の基準、成分の規格、品質確保の方法が定められている。(第9版食品添加物公定書(2018年廣川書店)「次亜塩素酸水」D-634~635参照、第9版食品添加物公定書解説書(2019年、廣川書店):「次亜塩素酸水」D-981頁 参照。)

 即ち、塩酸(HCl)または塩化ナトリウム(NaCl)水溶液を電気分解することにより得られる水溶液であり、本品には、強酸性次亜塩素酸水、弱酸性次亜塩素酸水、および微酸性次亜塩素酸水がある。食品添加物(殺菌料)「次亜塩素酸水」を生成するためには、専用の装置が必要であり、装置の規格基準はJIS B 8701として2017年10月に制定された。

 JIS B 8701に記載されている次亜塩素酸水の定義は食品添加物(殺菌料)の定義と異なるため注意が必要である。(JIS B 8701では、次亜塩素酸水生成装置の規格をする際の用語として、次亜塩素酸水のほか、定義を記載しているが、JISとして次亜塩素酸水を定義した訳ではなく、次亜塩素酸水生成装置から得られた次亜塩素酸を含む水溶液を表している。)

 次亜塩素酸(HClO)が含まれる水溶液が商品名次亜塩塩素酸水として販売されているが、それらの有効塩素濃度は規定されていない。

 商品名の次亜塩素酸水として流通する製品には、次亜塩素酸ナトリウム水溶液や次亜塩素酸カルシウム水溶液、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム水溶液、トリクロロイソシアヌル酸ナトリウム水溶液などを原料とした製品がある。これらについては食品添加物の「次亜塩素酸水」とは製造方法、並びに成分等が異なりうるため、原材料に使用される化学成分の安全データを確認することが望ましい。

 

【次亜塩素酸ナトリウム液】 ウィキペディア

 次亜塩素酸ナトリウム(じあえんそさんナトリウム、sodium hypochlorite)は次亜塩素酸のナトリウム塩である。

 化学式は NaClO で、次亜塩素酸ソーダとも呼ばれる。

 希釈された水溶液はアンチホルミンとも呼ばれる。次亜塩素酸ナトリウム

 次亜塩素酸ナトリウムはアルカリ性を示す。

 次亜塩素酸ナトリウムの水溶液に塩素を通じて得られる。

 不安定なため、通常は水溶液として貯蔵、使用される。

 水溶液は安定で長期保存が可能だが、時間と共に自然分解し酵素を放って塩化ナトリウム水溶液(食塩水)に変化していく。

 また、不均化も発生する。

 高濃度の状態ほど分解しやすく、低濃度になると分解しにくくなる。高温や紫外線で分解が加速するため、常温保存では濃度維持が出来ない。

 それを逆手に取って、水道水には微量の次亜塩素酸ナトリウムが消毒のために混ざっていて魚に悪影響を与えるので、直射日光に当てることにより次亜塩素酸を除去して観賞魚の飼育に比較的適した水にすることも行われる。

特異な臭気(プールや漂白剤の臭い。ただしプールの次亜塩素酸ナトリウムの濃度はかなり薄く単独では匂うほどではなく、プールの匂いは次亜塩素酸ナトリウムを構成する塩素と、汗や尿の一成分であるアンモニアが化学反応して生成されたクロラミンによるものである)を有し、酸化作用、漂白作用、殺菌作用がある。

生成方法としては、上記の反応のほかに、海水を電気分解する方法もある。この方法は主に、海を航行する船舶や臨海にある工場施設において、海水を流す配管に海洋生物が付着するのを防ぐために使われる。2016(平成28)年度日本国内生産量(12 %換算)は 891,976 t、消費量は 29,622 t である。



乱鳥の今更人に聞けない言葉の混乱 1「引歌」と「本歌取り」
乱鳥の今更人に聞けない言葉の混乱 2「影印」と「印影」、「影印本」(景印本、影印)と「覆刻本」
乱鳥の今更人に聞けない言葉の混乱 3丈(じょう )と 丈(たけ)
乱鳥の今更人に聞けない言葉の混乱 4「草紙」と「草子」と「双紙」と「冊子」
乱鳥の今更人に聞けない言葉の混乱 5「清元」と「常磐津」と「長唄」と「義太夫」
乱鳥の今更人に聞けない言葉の混乱 6「千秋楽」と「千穐楽」と「千穐樂」
乱鳥の今更人に聞けない言葉の混乱 7「文化功労者」と「文化勲章」 
乱鳥の今更人に聞けない言葉の混乱 8「気功」と「気」の違い、及び「気功」と「気」の中国と日本の違い 
乱鳥の今更人に聞けない言葉の混乱 9「忖度」江戸時代すでに言葉の変化が認められた事を『玉あられ』(本居宣長著)で再確認した。
乱鳥の今更人に聞けない言葉の混乱 10弥生(日本に置ける3月)、暮の春、建辰月、月宿、夢見月
乱鳥の今更人に聞けない言葉の混乱 11東大寺 修二会(お水取り)について再度確認しておきたい。
乱鳥の今更人に聞けない言葉の混乱 12一旦停止の位置は如何様であろうとも、停止線手前で止まるべし
乱鳥の今更人に聞けない言葉の混乱 13「全集とは」                       
乱鳥の今更人に聞けない言葉の混乱 14「釈文」と「書き下し文」と「訓読文」、「しゃく‐ぶん【釈文】」と「しゃく‐もん【釈文】」の違い
乱鳥の今更人に聞けない言葉の混乱 15「Pythagoras ピタゴラス(ピュタゴラス)」 「万物は数なり」について
乱鳥の今更人に聞けない言葉の混乱 16「Dennis Vincent Brutus ブルータス」について
乱鳥の今更人に聞けない言葉の混乱 17風流踊(ふりゅうおどり)または風流(ふりゅう)
乱鳥の今更人に聞けない言葉の混乱 18相手が悶々としない時間を「折り返し」と言うのだということがわかりスッキリした。
乱鳥の今更人に聞けない言葉の混乱 19合巻とは (そして、合本、合冊とは)
乱鳥の今更人に聞けない言葉の混乱 20『役者手鑑 全』を楽しむに当たって  「連句」について
乱鳥の今更人に聞けない言葉の混乱 21『役者手鑑 全』を楽しむに当たって  「俳諧」について
乱鳥の今更人に聞けない言葉の混乱 22『役者手鑑 全』を楽しむに当たって  「俳諧」を探るために、「歌仙」について
乱鳥の今更人に聞けない言葉の混乱 23『掘川波鼓』(2019年南座顔見世)を見る為に『名作歌舞伎全集』『近松全集』を読むに当たって  「姦通 
乱鳥の今更人に聞けない言葉の混乱 24AEDとは(AED,人工呼吸、人工マッサージ法を習いました)
乱鳥の今更人に聞けない言葉の混乱 25江戸時代の句読点  「区切りなく、そのまま文が続けられる」と「、」と「・」と「。」
乱鳥の今更人に聞けない言葉の混乱 26「377」はどう読むの? 「7777」なら、どう読むの?
乱鳥の今更人に聞けない言葉の混乱 27書く程でも無いが、3/3(雛祭り)に、ふと芥川の『雛』の表現の一部思い出す。
乱鳥の今更人に聞けない言葉の混乱 28「ミングる」と「ミングル」の違い。N●Kニュースが 「ミングる」事を避けるように警告。
乱鳥の今更人に聞けない言葉の混乱 29能惠法師について 
乱鳥の今更人に聞けない言葉の混乱 30法師 ←→ 暗証の禅師とは
乱鳥の今更人に聞けない言葉の混乱 31合本(がっぽん)とは 

ブログの仕様が変わり、これまでの方法では、リンクが貼れなくなりました。

乱鳥の今更人に聞けない言葉の混乱

https://blog.goo.ne.jp/usuaomidori/e/fc315eb05b7365cc34fee9ca2b633dc3 32 抗体検査と抗原検査とPGR検査

https://blog.goo.ne.jp/usuaomidori/e/8a0328c97f1bd4c7eab402c70d87bae9 33 次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウム液

『絵入 好色一代男』八全之内 巻一 七 別れハ当座のはらひ 【4】二十一丁オ 井原西鶴

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 絵入  好色一代男   八前之内 巻一  井原西鶴
 天和二壬戌年陽月中旬 
 大阪思案橋 孫兵衞可心板



    『絵入 好色一代男』八全之内 巻一 七 別れハ当座のはらひ 【4】二十一丁オ 井原西鶴

  

後、此女さしうつむいて、物をもいらず、泪(なみた)くみてあり

しを、こゝろもとなく尋(たつね)をれば、二 三度ハ、いはさしが

しめやらなる物こしして、「われ今こそあれ、此跡(あと)も

出替(いでかわり)りまでは、さる宮様(みやさま)かたにありしが、不慮(ふりょ)に

おこゝろを、かけさせられ、すへがすへのわがすむもとに

、しのび入替結ひ、むつましう、語(かた)わし  其歌は

忘(わす)れもやらず、雪(ゆき)のあさ/\と降(ふり)そめし、十一月

三日、かたじけなくも、御手づ から、一かたまりを、「わか

はだへハ是しや」と、ほゝに投(なげ)入させ給ふ時の、御すかた

今かたさまにおもひ合、昔(むか)しが思ハいつれをるゝ」と語(かた)る さてハ

其宮様(みやさま)に似(に)たとハ、どこが似(に)たと戯(たハふ)ゝ、いつれを

 

後、此女さし俯いて、物をもいらず、泪ぐみてあり

しを、心許なく 尋ねおれば、二 三度は、言わさしが

しめやらなる物腰して、「われ今こそあれ、此跡(あと)も

出で替わりまでは、さる宮様方に在りしが、不慮に

お心を、かけさせられ、末が末の我が住むもとに

、忍び入れ替え結び、むつましう、語(かた)わし  其歌は

忘れもやらず、雪の あさ/\と降りそめし、十一月

三日、かたじけなくも、御手水 から、一かたまりを、「わか

はだへハ是しや」と、ほゝに投(なげ)入させ給ふ時の、御すかた

今かたさまにおもひ合、昔(むか)しが思ハいつれをるゝ」と語(かた)る さてハ

其宮様(みやさま)に似(に)たとハ、どこが似(に)たと戯(たハふ)ゝ、いつれを

 

出替(いでかわり)り(いでかわり 最後の「り」はママ)

御手づ(御手水)

 

一巻 七 別れハ当座のはらひ 

【1】十九丁ウ

別れハ当座のはらひ

茶宇嶋のきれにて、お物師がぬうてくれし、前巾着(まへきんちやく)に

、こまかなる露を、盗(ぬす)みためて、或(ある)夕暮、小者(こもの)あがりの

若き者をまねき、同し心の水のみなかみ、清水八坂に

さし懸(かゝ)り、此あたりの事でハないか、日外(いつそや)ものがたりせし、

歌よくうたふて、酒飲(のん)て、然も憎(にく)からぬ女ハ、菊屋か

三河屋 蔦(つた)屋かと探(さが)して、細道(ほそ道)の萩垣(はぎかき)を、奥に入れば

梅(むめ)に鶯(うくいす)の屏風床(ひやうぶとこ)にハ誰(た)が引捨し、かしの木のさほに、一筋(すぢ)

切れて、むすぶともなく、うるみ朱の、煙草盆(たはこぼん)に、炭団(たどん)の

埋(うつみ)火絶(たへ)ず、畳ハなにとなく、うちしめりて、心地(こゝち)よからず、

おもひながら、れいのとさん出て、祇園細工(きをんさいく)、あしつきに

別れは当座の払い

茶宇嶋のきれにて、お物師が縫うてくれし、前巾着(まへきんちゃく)に

、細かなる露を、盗(ぬす)み貯めて、或(ある)夕暮、小者(こもの)あがりの

若き者を招き、同じ心の水の水神(みなかみ)、清水八坂に

さしかかり、此あたりの事ではないか、日外(いつぞや)物語せし、

歌よく歌うて、酒飲(のん)で、然も憎(にく)からぬ女は、菊屋か

三河屋 蔦屋かと探して、細道(ほそ道)の萩垣、奥に入れば

梅に鶯の屏風床(びょうぶどこ)には、誰(た)が引き捨てし、樫(かし)の木の竿に、一筋

切れて、結ぶともなく、うるみ朱の、煙草盆(たばこぼん)に、炭団(たどん)の

埋(うづみ)火絶(たえ)ず、畳は 何となく、うち湿りて、心地(ここち)良からず、

思いながら、例のとさん出て、祇園細工、足つぎに

【2】二十丁オ

杉板(すぎいた)につけて、焼きたるとゝ、おお定(さだ)まりの蛸(たこ)、漬梅(つけ梅)、色付の

薑(はじかみ)に、塗竹箸を取そえ、おりふし春ふく、藤色(ふじいろ)の

りきん嶋(しま)に、わけしりだてなる、茶(ちや)じゆすの幅広(はゞひろ)、

はさみ結(むす)びにして、朝鮮(てうせん)さやの二の物を、ほのかに

、のべ紙(かみ)に、数(かず)歯枝(ようじ)をみせ懸(かけ)髪ハ四つ折(おり)に、しどけ

なくつかねて、左(ひだり)の御手に、朱葢のつるを引提(ひつかけ)、たち

出るより「淋(さひ)しさうなる事かな、少 さゝなど、是より

給(たべ)まして」といふもいやらしく、屢(しば)しハ、実(み)のなき垣(かや)を

荒らして、ありしが、無下(むげ)に捨(すて)難(かたく)、いたゞけば、濱焼(はまやき)の

中程(ほと)を、ふつゝかにはさみて、抑えますかといふ、はしめの

程ハ、たまわり兼(かね)、さらに又、所(ところ)を替(かえ)てとおもふ内に、せハしく

杉板(すぎいた)に付けて、焼きたると と、大定(さだ)まりの蛸(たこ)、漬梅(つけ梅)、色付の

薑(はじかみ)に、塗竹箸を取(とり)添え、折節 春ぶく、藤色(ふじいろ)の

りきん嶋(じま)に、訳 知りだてなる、茶(ちゃ)繻子(しゅす)の幅広(はばひろ)、

挟み結びにして、朝鮮(ちょうせん)鞘の二の物を、ほのかに

、のべ紙に、数(かず)楊枝(ようじ)を見せ懸(かけ)髪は 四つ折に、しどけ

なく つかねて、左の御手に、朱葢のつるを引っ掛け、立ち

給(たべ)まして」と言うもいやらしく、屢(しば)しは、実の無き垣(かや)を

荒らしてありしがが、無下(むげ)に捨て難く、頂けば、濱焼(はまやき)の

中程を、不束(ふつつか)に挟みて、「抑えまする」と言う、初めの

程は、たまわりかね、さらに又、所を替と思う内に、忙しく(せわしく)

出るより「淋しそうなる事かな、少 ささなど、是より

【3】二十丁ウ

銚子(てうし)かえる事あり、興(ふと)腰(こし)つきに え もいはれぬ所ありて

似卜(にぼく)が、やりくり合点(かてん)か、二つ折(おり)の絵(え)むしろに、木枕(まくら)の

音も又おかしく、最前(さいせん)の りきん嶋(しま)うそよごれたる

浅葱(あさき)のに替りて、鼻歌(はなうた)などにて、人まつけしき

今や、世之助十二より、声(こゑ)も替(かハ)りて、おとなはつかしく

、はづるとハなくに、かくしば楽の事も、一世ながら

くハん様の、お引合(ひきあハせ)、末/″\馴染(なじみ)て、若(もし)又お中に、

やうすが、出来(でき)たらば、近所(きんじよ)にさいはい、子安(こやす)の、お地蔵(ぢざう)ハ

御さり、太義(たいぎ)なれと、百の餅舟(もちふね)は、阿爺(とゝ)がするぞ、

機遣(きつかい)をなしに、帯(おび)とけと、ひとつも、口をあかせず

、わるごう有(ある)程(ほど)つくして、物しける、うちときて

銚子(ちょうし)かえる事あり、興(ふと)腰付きに え も言われぬ所ありて

似卜(にぼく)が、やりくり合点(がてん)か、二つ折(おり)の絵むしろに、木枕の

音も又おかしく、最前の りきん嶋、うすよごれたる

浅葱(あさぎ)のに替りて、鼻歌(はなうた)などにて、人待つ景色

今や、世之助十二より、声(こゑ)も替(かハ)りて、大人 はづかしく

、はづるとはなくに、かく暫くの事も、一世ながら

くはん様の、お引合(ひきあわせ)、末々馴染(なじみ)て、若(もし)又お中に、

様子が、出来たらば、近所に幸い、子安(こやす)の、お地蔵は

御さり、太義(たいぎ)なれと、百の餅舟(もちふね)は、阿爺(とと)がするぞ、

機遣(気遣い)をなしに、帯(おび)解けと、ひとつも、口をあかせず

、悪ごう有(ある)程 尽くして、物しける、うちときて

【4】二十一丁オ

後、此女さしうつむいて、物をもいらず、泪(なみた)くみてあり

しを、こゝろもとなく尋(たつね)をれば、二 三度ハ、いはさしが

しめやらなる物こしして、「われ今こそあれ、此跡(あと)も

出替(いでかわり)りまでは、さる宮様(みやさま)かたにありしが、不慮(ふりょ)に

おこゝろを、かけさせられ、すへがすへのわがすむもとに

、しのび入替結ひ、むつましう、語(かた)わし  其歌は

忘(わす)れもやらず、雪(ゆき)のあさ/\と降(ふり)そめし、十一月

三日、かたじけなくも、御手づ から、一かたまりを、「わか

はだへハ是しや」と、ほゝに投(なげ)入させ給ふ時の、御すかた

今かたさまにおもひ合、昔(むか)しが思ハいつれをるゝ」と語(かた)る さてハ

其宮様(みやさま)に似(に)たとハ、どこが似(に)たと戯(たハふ)ゝ、いつれを

後、此女さし俯いて、物をもいらず、泪ぐみてあり

しを、心許なく 尋ねおれば、二 三度は、言わさしが

しめやらなる物腰して、「われ今こそあれ、此跡(あと)も

出で替わりまでは、さる宮様方に在りしが、不慮に

お心を、かけさせられ、末が末の我が住むもとに

、忍び入れ替え結び、むつましう、語(かた)わし  其歌は

忘れもやらず、雪の あさ/\と降りそめし、十一月

三日、かたじけなくも、御手水 から、一かたまりを、「わか

はだへハ是しや」と、ほゝに投(なげ)入させ給ふ時の、御すかた

今かたさまにおもひ合、昔(むか)しが思ハいつれをるゝ」と語(かた)る さてハ

其宮様(みやさま)に似(に)たとハ、どこが似(に)たと戯(たハふ)ゝ、いつれを

 

 

 

『絵入 好色一代男』八全之内【一帖 読了】 七 別れハ当座のはらひ 【5】二十一丁ウ 井原西鶴

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 絵入  好色一代男   八前之内 巻一  井原西鶴
 天和二壬戌年陽月中旬 
 大阪思案橋 孫兵衞可心板



 『絵入 好色一代男』【一帖 読了】 

  八全之内 巻一 七 別れハ当座のはらひ 【5】二十一丁ウ 井原西鶴

  

申へきや、ひとつとして、いきうつし、殊更(ことさら)風の

はけしき朝、「いかゞ暮する」とて、白ぬめの、着物(きるもの)語り

、又 西陣(にしちん)に、母を一人持(もち)候を、不憫(ふびん)とて、米味噌(こめみそ)

薪(たきぎ)、家賃(やちん)までを、十一歳にして、かしこくも、あそばし

ける、貴様も、よろつに、気(き)のつきそうなる、おかた

さまと見えて、一しほ お尤愛(いと)しう、おもふおもふ」なとゝ、

はや、其年に通ふまゝの事共、其相手(あいて)を見て、

是ぞ、都の人たらしぞかし

 

申すべきや、ひとつとして、生き写し、殊更(ことさら)風の

激しき朝、「いかが暮する」とて、白ぬめの、着る物語り

、又 西陣に、母を一人持ち候を、不憫とて、米味噌(こめみそ)

薪(たきぎ)、家賃(やちん)までを、十一歳にして、賢くも、あそばし

ける、貴様も、よろづに、気の付来そうなる、お方

様と見えて、一塩 お尤愛(いと)しう、思う」などと、

はや、其年に通ふままの事共、其の相手を見て、

是ぞ、都の人たらしぞかし

 

 

一巻 七 別れハ当座のはらひ 

【1】十九丁ウ

別れハ当座のはらひ

茶宇嶋のきれにて、お物師がぬうてくれし、前巾着(まへきんちやく)に

、こまかなる露を、盗(ぬす)みためて、或(ある)夕暮、小者(こもの)あがりの

若き者をまねき、同し心の水のみなかみ、清水八坂に

さし懸(かゝ)り、此あたりの事でハないか、日外(いつそや)ものがたりせし、

歌よくうたふて、酒飲(のん)て、然も憎(にく)からぬ女ハ、菊屋か

三河屋 蔦(つた)屋かと探(さが)して、細道(ほそ道)の萩垣(はぎかき)を、奥に入れば

梅(むめ)に鶯(うくいす)の屏風床(ひやうぶとこ)にハ誰(た)が引捨し、かしの木のさほに、一筋(すぢ)

切れて、むすぶともなく、うるみ朱の、煙草盆(たはこぼん)に、炭団(たどん)の

埋(うつみ)火絶(たへ)ず、畳ハなにとなく、うちしめりて、心地(こゝち)よからず、

おもひながら、れいのとさん出て、祇園細工(きをんさいく)、あしつきに

別れは当座の払い

茶宇嶋のきれにて、お物師が縫うてくれし、前巾着(まへきんちゃく)に

、細かなる露を、盗(ぬす)み貯めて、或(ある)夕暮、小者(こもの)あがりの

若き者を招き、同じ心の水の水神(みなかみ)、清水八坂に

さしかかり、此あたりの事ではないか、日外(いつぞや)物語せし、

歌よく歌うて、酒飲(のん)で、然も憎(にく)からぬ女は、菊屋か

三河屋 蔦屋かと探して、細道(ほそ道)の萩垣、奥に入れば

梅に鶯の屏風床(びょうぶどこ)には、誰(た)が引き捨てし、樫(かし)の木の竿に、一筋

切れて、結ぶともなく、うるみ朱の、煙草盆(たばこぼん)に、炭団(たどん)の

埋(うづみ)火絶(たえ)ず、畳は 何となく、うち湿りて、心地(ここち)良からず、

思いながら、例のとさん出て、祇園細工、足つぎに

【2】二十丁オ

杉板(すぎいた)につけて、焼きたるとゝ、おお定(さだ)まりの蛸(たこ)、漬梅(つけ梅)、色付の

薑(はじかみ)に、塗竹箸を取そえ、おりふし春ふく、藤色(ふじいろ)の

りきん嶋(しま)に、わけしりだてなる、茶(ちや)じゆすの幅広(はゞひろ)、

はさみ結(むす)びにして、朝鮮(てうせん)さやの二の物を、ほのかに

、のべ紙(かみ)に、数(かず)歯枝(ようじ)をみせ懸(かけ)髪ハ四つ折(おり)に、しどけ

なくつかねて、左(ひだり)の御手に、朱葢のつるを引提(ひつかけ)、たち

出るより「淋(さひ)しさうなる事かな、少 さゝなど、是より

給(たべ)まして」といふもいやらしく、屢(しば)しハ、実(み)のなき垣(かや)を

荒らして、ありしが、無下(むげ)に捨(すて)難(かたく)、いたゞけば、濱焼(はまやき)の

中程(ほと)を、ふつゝかにはさみて、抑えますかといふ、はしめの

程ハ、たまわり兼(かね)、さらに又、所(ところ)を替(かえ)てとおもふ内に、せハしく

杉板(すぎいた)に付けて、焼きたると と、大定(さだ)まりの蛸(たこ)、漬梅(つけ梅)、色付の

薑(はじかみ)に、塗竹箸を取(とり)添え、折節 春ぶく、藤色(ふじいろ)の

りきん嶋(じま)に、訳 知りだてなる、茶(ちゃ)繻子(しゅす)の幅広(はばひろ)、

挟み結びにして、朝鮮(ちょうせん)鞘の二の物を、ほのかに

、のべ紙に、数(かず)楊枝(ようじ)を見せ懸(かけ)髪は 四つ折に、しどけ

なく つかねて、左の御手に、朱葢のつるを引っ掛け、立ち

給(たべ)まして」と言うもいやらしく、屢(しば)しは、実の無き垣(かや)を

荒らしてありしがが、無下(むげ)に捨て難く、頂けば、濱焼(はまやき)の

中程を、不束(ふつつか)に挟みて、「抑えまする」と言う、初めの

程は、たまわりかね、さらに又、所を替と思う内に、忙しく(せわしく)

出るより「淋しそうなる事かな、少 ささなど、是より

【3】二十丁ウ

銚子(てうし)かえる事あり、興(ふと)腰(こし)つきに え もいはれぬ所ありて

似卜(にぼく)が、やりくり合点(かてん)か、二つ折(おり)の絵(え)むしろに、木枕(まくら)の

音も又おかしく、最前(さいせん)の りきん嶋(しま)うそよごれたる

浅葱(あさき)のに替りて、鼻歌(はなうた)などにて、人まつけしき

今や、世之助十二より、声(こゑ)も替(かハ)りて、おとなはつかしく

、はづるとハなくに、かくしば楽の事も、一世ながら

くハん様の、お引合(ひきあハせ)、末/″\馴染(なじみ)て、若(もし)又お中に、

やうすが、出来(でき)たらば、近所(きんじよ)にさいはい、子安(こやす)の、お地蔵(ぢざう)ハ

御さり、太義(たいぎ)なれと、百の餅舟(もちふね)は、阿爺(とゝ)がするぞ、

機遣(きつかい)をなしに、帯(おび)とけと、ひとつも、口をあかせず

、わるごう有(ある)程(ほど)つくして、物しける、うちときて

銚子(ちょうし)かえる事あり、興(ふと)腰付きに え も言われぬ所ありて

似卜(にぼく)が、やりくり合点(がてん)か、二つ折(おり)の絵むしろに、木枕の

音も又おかしく、最前の りきん嶋、うすよごれたる

浅葱(あさぎ)のに替りて、鼻歌(はなうた)などにて、人待つ景色

今や、世之助十二より、声(こゑ)も替(かハ)りて、大人 はづかしく

、はづるとはなくに、かく暫くの事も、一世ながら

くはん様の、お引合(ひきあわせ)、末々馴染(なじみ)て、若(もし)又お中に、

様子が、出来たらば、近所に幸い、子安(こやす)の、お地蔵は

御さり、太義(たいぎ)なれと、百の餅舟(もちふね)は、阿爺(とと)がするぞ、

機遣(気遣い)をなしに、帯(おび)解けと、ひとつも、口をあかせず

、悪ごう有(ある)程 尽くして、物しける、うちときて

【4】二十一丁オ

後、此女さしうつむいて、物をもいらず、泪(なみた)くみてあり

しを、こゝろもとなく尋(たつね)をれば、二 三度ハ、いはさしが

しめやらなる物こしして、「われ今こそあれ、此跡(あと)も

出替(いでかわり)りまでは、さる宮様(みやさま)かたにありしが、不慮(ふりょ)に

おこゝろを、かけさせられ、すへがすへのわがすむもとに

、しのび入替結ひ、むつましう、語(かた)わし  其歌は

忘(わす)れもやらず、雪(ゆき)のあさ/\と降(ふり)そめし、十一月

三日、かたじけなくも、御手づ から、一かたまりを、「わか

はだへハ是しや」と、ほゝに投(なげ)入させ給ふ時の、御すかた

今かたさまにおもひ合、昔(むか)しが思ハいつれをるゝ」と語(かた)る さてハ

其宮様(みやさま)に似(に)たとハ、どこが似(に)たと戯(たハふ)ゝ、いつれを

後、此女さし俯いて、物をもいらず、泪ぐみてあり

しを、心許なく 尋ねおれば、二 三度は、言わさしが

しめやらなる物腰して、「われ今こそあれ、此跡(あと)も

出で替わりまでは、さる宮様方に在りしが、不慮に

お心を、かけさせられ、末が末の我が住むもとに

、忍び入れ替え結び、むつましう、語(かた)わし  其歌は

忘れもやらず、雪の あさ/\と降りそめし、十一月

三日、かたじけなくも、御手水 から、一かたまりを、「わか

はだへハ是しや」と、ほゝに投(なげ)入させ給ふ時の、御すかた

今かたさまにおもひ合、昔(むか)しが思ハいつれをるゝ」と語(かた)る さてハ

其宮様(みやさま)に似(に)たとハ、どこが似(に)たと戯(たハふ)ゝ、いつれを

【5】二十一丁ウ

申へきや、ひとつとして、いきうつし、殊更(ことさら)風の

はけしき朝、「いかゞ暮する」とて、白ぬめの、着物(きるもの)語り

、又 西陣(にしちん)に、母を一人持(もち)候を、不憫(ふびん)とて、米味噌(こめみそ)

薪(たきぎ)、家賃(やちん)までを、十一歳にして、かしこくも、あそばし

ける、貴様も、よろつに、気(き)のつきそうなる、おかた

さまと見えて、一しほ お尤愛(いと)しう、おもふおもふ」なとゝ、

はや、其年に通ふまゝの事共、其相手(あいて)を見て、

是ぞ、都の人たらしぞかし

申すべきや、ひとつとして、生き写し、殊更(ことさら)風の

激しき朝、「いかが暮する」とて、白ぬめの、着る物語り

、又 西陣に、母を一人持ち候を、不憫とて、米味噌(こめみそ)

薪(たきぎ)、家賃(やちん)までを、十一歳にして、賢くも、あそばし

ける、貴様も、よろづに、気の付来そうなる、お方

様と見えて、一塩 お尤愛(いと)しう、思う」などと、

はや、其年に通ふままの事共、其の相手を見て、

是ぞ、都の人たらしぞかし

 

 

 

『平安 名家家集切  平安 戌辰切和漢朗詠集』より「藤」紀貫之 含   日本名跡業刊

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『平安 名家家集切  平安 戌辰切和漢朗詠集』より「藤」紀貫之  含   日本名跡業刊

 

 

  

        山種美術館蔵

 

 

    藤

悵望慈思三月尽コトシ紫藤花落鳥開々  白   紫藤露底残花色翡竹煙中暮鳥声    相規   たこのうらのそらさへにほうふゝぢのはな   かさしてゆかむ見ぬ人のため   ときはなつまつのなたてにあやしくも   かゝれるふちのさきてちるかな  貫之     悵望す慈思に三月の尽きるがごとし 紫藤の花落ちて鳥 開々(ママ かんかん)たり  白楽天   紫藤の露の底に残る花の色 翡竹の煙の中に暮鳥声    源相規   田子の浦の空さえ匂う藤の花 かざしてゆかん 見ぬ人のため  (蔵忌寸蝉丸)   時は夏 松の名だてにあやしくも   かゝれる藤の咲きて散るかな  紀貫之  

悵(ちょう うら-む)

  四字熟語  悲歌悵飲 (ひかちょういん)

悵望(名)心をいためて思いやること。うらめしげに見やること。

  「七夕の深き契によりて驪山の雲に-すること勿れ/今鏡 すべらぎ中」

 

『伊勢音頭恋寝刃』1999 歌舞伎座 片岡考夫 玉三郎 歌右衛門 勘三郎 田之助 中村扇雀 中村翫雀 他

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 『伊勢音頭恋寝刃』1999 歌舞伎座 片岡考夫 玉三郎 歌右衛門 勘三郎 田之助 中村扇雀 中村翫雀 他

  寛政8年(1794)7月、大坂 角の芝居にて初演。近松徳三ほか作

 

 

 久々に『伊勢音頭恋寝刃』を見た。

 片岡考夫 玉三郎 歌右衛門の組み合わせは、歌舞伎チャンネルだったか衛星劇場だったかで何度も見た舞台の為、懐かしく感じる。

 それにしても、豪華な顔ぶれである。

 考えただけでもワクワクするのに、考玉とあっては劇場でなく見ちゃって「面目無い!」と言い、一礼して手を合わせて拝みつつ見たくなるお舞台^^

 ま!私ったら、

      乙女^^  (アホか!)

 

「音頭の始まり、始まりぃ〜〜〜」

の言葉とともに、次の場面を想像し、奥庭の場での一部始終で、観客は圧倒される。

 ただ残酷なだけに終わらず、片岡考夫 玉三郎 歌右衛門の組み合わせでは、十人斬りの場で、ユーモアも交えられており、こういった演出も印象深い。

 見得よろしくとばかりに、形良く決める考夫(現在 仁左衛門)はほんに良い役者である。

      ブラボー〜〜〜!

 

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