『廓文章〜吉田屋』素晴らしい仁左衛門の伊左衛門☆「まことにおめでとうさぶらいける」
『廓文章〜吉田屋』 2/6記録
『名作歌舞伎全集 第七巻』「廓文章」東京創元新社(仁左衛門に感動し、読む) 2/7記録
前回、仁左衛門丈の『廓文章〜吉田屋』伊左衛門の性格の表現に感動した舞台を、『名作歌舞伎全集 第七巻』「廓文章」をふまえた上で観た。
藤十郎丈の和事はすこぶる好きだが、藤十郎丈とはまた違った味わい。
仁左衛門丈の伊左衛門も品良く、超二枚目で三枚目の性格をあらわされる。
流石にお家芸。
「伊左衛門」「喜左衛門」と呼ばれるたびに、等の本人「仁左衛門」と聞こえる脚本のうまさ。
はじめから最後まで各バネんが最後に集約され物の見事にめでたしめでたしとなるが、『吉田屋』だが、仁左衛門丈の伊左衛門はそれがリアルで強調される。
伊左衛門という男は美男子でかわいく、また、助六を思わすほどの男前出なければならない。
この演じ方をまねようとされていたのが、染五郎さんだと気づいた。染五郎さんは本気!!で古典歌舞伎の取り組まれると、割合にいい味を出される無くてはならない役者さんの一人だと感じる。
染五郎さんはさておき、仁左衛門丈
これでもかこれでもかと三枚目の絶世の美男子を演じられる。
家で観ているので、その度に、キャーと、声ペが出る。大向こうをはるという状態ではない。
観ていられないほどのかわいらしさ、二枚目ぶりを発揮する品の良い若旦那。観ている私は自然に照れている。直視できない。
観ている間はしゃいでいたわたくし。横で静かに観る家族。
家族も、この舞台は見事だという。
さてさて、大変縁起の良い『吉田屋』
侍が傾城をける だの
高坏を鼓かわりに萬歳を踊り歌う だの前回で書いていたが、
『名作歌舞伎全集 第七巻』「廓文章」によれば
「なぜ侍にけられた?」という台詞は「なぜ侍に…。」と男女の仲をにおわせているとある。
今回『廓文章〜吉田屋』を観ていてそれは誠であった。
「伊左衛門もける。…」云々の場は割合に長いが、『名作歌舞伎全集 第七巻』「廓文章」をふまえて観ていると、またひと味違った芝居に感じられた。
今までにも何度も何度もいろいろな役者さんで楽しんでいた好きな演目の一つ『廓文章〜吉田屋』
伊左衛門などの大和萬歳のまねた場で
「まことにおめでとうそうらいける」 と聞こえた言葉は、『吉田屋』では
「まことにおめでとうさぶらいける」
であった。
さぶらい=侍
「まことにおめでとうそうらいける」=萬歳の決まり文句のようなもの
この演目をはじめ、歌舞伎(など)は、まことに掛詞が多い。
見る度に観るほどに面白い芝居かな
である。
本編尺:80分
製作年:2013年
出演:片岡仁左衛門 片岡秀太郎 坂東秀調 片岡千之助 大谷桂三 坂東彌十郎 坂東玉三郎
情緒溢れる上方和事の名作。上方美男の伊左衛門を仁左衛門が、恋人夕霧を玉三郎が演じた当代最高の顔合わせの「吉田屋」は、こけら落とし五月興行の一番の眼目だったお芝居。二人を取り持つ太鼓持(たいこもち)に左衛門の孫千之助が出ているのも見どころ。
伊左衛門は勘当されて、みすぼらしい紙衣(かみこ)姿になりながらも夕霧に逢いたいと大坂新町吉田屋へやって来る。若旦那のことだから、みすぼらしい身なりでも上品。主人喜左衛門夫婦のはからいで、伊左衛門は座敷へ通される。夕霧が小走りで姿を見せるが、伊左衛門はすねてつれなく当る。恋する二人ならではのたわいない痴話げんかなのだ。そこへ、勘当が許された知らせと千両箱が届き、伊左衛門は夕霧を身請けすることになる。
(2013年/平成25年5月・歌舞伎座)