52: 『三三九度 ―盃事の民俗誌 日本的契約の民俗誌』
神崎宣武
岩波書店,
2001 年
221 ページ
データーベースより
酒と盃は、契約の場には必須である。日本社会ではかつてさまざまな儀式で盃事が行われていた。結婚式の「三三九度」にはじまり「親子盃」「兄弟盃」「襲名盃」など、ひとつの盃を当事者と参列者で回し、約束事を固めるそのスタイルは、無形ながら拘束性を持つ契約事であり、生涯を契る儀式である。ムラ社会の盃事から、テキヤ・ヤクザ世界の襲名儀礼に到るまで、日本的契約の伝統をさぐる。
盃の酒を三口で飲み、それを三度繰り返す三三九度。日本社会では結婚式のみならず、「親子盃」「兄弟盃」「襲名盃」など、約束を固める儀礼として盃事が行われてきた。民俗学者であり現役の神主でもある著者が、ムラ社会の盃事からテキヤ・ヤクザ世界の襲名儀礼に至るまで、フィールドワークと文献を駆使し日本的契約の伝統を探る。小さな盃と酒から見たユニークな日本文化論。
目次
序章 吉備高原上の祭礼
1章 輪島・「お当渡し」の盃
2章 テキヤ社会における盃事
3章 親子盃と兄弟盃
4章 祝言での女夫盃
終章 日本文化としての「盃事」
『三三九度 ―盃事の民俗誌 日本的契約の民俗誌』を読了。
盃や酒にまつわる神事や行事や作法を、糸色な立場から描く。
著者は宮本常一氏の元で民俗学を学ばれたという。また、赤松啓介氏、柳田國男氏(本に記される順)の名が出てくるのも興味深い。
また。昭和五十年ことからフィールドワークとしてテキ屋さんなどを取材。よって、わたくしたちのいかにも関わりのないお話しに触れることができるのも面白い、
3章 親子盃と兄弟盃では他の民俗学の本にも出てくる事柄が示され、また、時間を見つけてそういった本も楽しみたいと感じた。
また。本書二は小笠原式礼法としての三三九度に触れられていた。しかし、同一日にわたくしが読んだ『小笠原流礼法入門』(小笠原清忠)とは若干異なっていた。話はさらに飛ぶが、『○○往来』(影印)の「小笠原流礼法」の書かれた部分。これをコピーに取り半分くらい読んだまま、置き去りにしていることを思い出す。読まねば…。
本題とは離れるのかもしれないが、終章 日本文化としての「盃事」に良いことが書かれていたのでい録しておこう。
せめて年に一度、正月くらいは家族の間で、新年の無事を祈念して盃事を執り行ってはいかがだろうか。………。内輪でも少し改まって挨拶をかわす、その僅かな礼講時間を大切にしようではないか。何も、その一つだと言って懐古趣味だの復古趣味と大げさに構えることはない。例えば、酒を飲み干したその盃の器面の湿り艶がすっと底部に吸い込まれる。実は見事な景色であり、日本人がもつ美意識のようなものがうなずける………。………。 (『三三九度 ―盃事の民俗誌 日本的契約の民俗誌』 213ページより引用)