映画『大地 THE GOOD EARTH』4.9★/5 原作:パール・バック 1937年 監督:シドニー・フランクリン L・ライナー他
映画『大地』をみる。
パール・バック原作の『大地』は、高校生の頃に読んだことがある。
文庫本にして、分厚目四冊の『大地』は、かなり読み応えがあり、かなりの感動をうけた。
本や詩歌や和歌などを読むときに色を感じる私は、重厚な不透明のオーレオリンの印象を持った。
映画ではモノクロに見える部分にも、透明の上品なオーレオリンのフィルターがかけてある部分があり、作品としての『大地』への期待度を増していた。
女優のL・ライナーが事細かにリアルで勝つデフォルメした印象の演技をされていて、見入ってしまう。
俳優全体はエキゾチックな中国人に感じていたが、まさか、西洋人が演技とメイクで中国人を演じていたとは、驚きであった。
半ばからは、顔の印象も誇張され、若干京劇風のメイクと目力、品を作って中国風を強調され、歌舞伎でいうならば子役さんの台詞の言い回しのように誇張と言い回しの一体感を示されているようで、アジア舞台の映画として、それにちなむ多くのテクニックを用いられていると感じた。
劇中劇で京劇や評弾があったが、西洋人が感じる京劇と、アジア人が感じる京劇では異なることを知った。
おそらく歌舞伎や能楽でも、西洋人が鑑賞すると、日本人が感じるのとは微妙に違うのだろうと感じた。
この映画は言葉で語らずして、目力や表情で事を物語るのがうまい。
例えば、オランに最後の子が生まれたが、北に逃げねばならない時、
「でも、あかんぼうを連れては北には行けないだろう。(要約)」
「赤ん坊は死んだ。」
「しかしさっき、鳴き声がしただろう。(要約)」
「赤ん坊は死んだ!」
オランは、「赤ん坊は死んだ!」の一言で、家族を守り北へ逃げる、悲しいまでもの母としての決意(これ以上は言いますまい)を語る。
また、 色を求め北へ逃げる際、飢餓状態の子供が道端に死ぬ人を食らうとまでは表現せず、目力で物語る。
さてさて、原作も素晴らしい『大地』は、映画で見ても面白かった。
あの長い『大地』が、せいぜい2時間強に濃縮し、このような感動の作品に仕上げられるのかと、感心した。
オラン、君こそが、大地だ。(要約)
満足のいく映画であった。
今回も見たという簡単な記録だけで、失礼致します。
大地
THE GOOD EARTH
上映時間:138分 監督 シドニー・フランクリン 脚本 タルボット・ジェニングス テス・スレシンジャー クローディン・ウェスト 出演者 ポール・ムニ ルイーゼ・ライナー ウォルター・コノリー 以下は、映画ナタリー(https://natalie.mu/eiga/film/151044) 解説 アメリカの代表的女流作家P・バックの原作の映画化で、中国ロケを敢行した大作。 1930年代のアメリカ映画の力と水準の高さをまざまざと感じさせる作品である。 貧農の百姓ワンは奴隷奉公の娘オランを嫁にして苦しいながらも畑を耕していく。 二人は苦労して働き、その甲斐あって田畑は増え、子供も生まれた。 だが大地は干ばつ、飢餓、イナゴの大群といった災害を生み、一家は苦難と闘う。 やがて月日が流れ、成長した息子の婚礼の日、長年夫に付き添い苦楽をともにした妻、オランが死ぬ……。 S・フランクリンは、欧米人が東洋人を演じるという困難な問題も、巧みなメイクアップと、俳優たちの優れた演技によって解決。 正攻法の演出で、原作のダイジェスト版に終わらせることなく、見事に感動的で壮大なドラマに仕上げた。 オランを演じたL・ライナーがアカデミー賞主演女優賞を受賞。