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Channel: 乱鳥の書きなぐり
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太宰治『魚服記に就て』  細谷博 著『太宰治』に記された『魚服記』が気になっったので、『魚服記に就て』を書き写す。

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    太宰治『魚服記に就て』  細谷博 著『太宰治』に記された『魚服記』が気になっったので、『魚服記に就て』を書き写す。

 

   

太宰治全集 11 随想 (筑摩書房) 『魚服記に就て』を写す   P.5

 

 

『魚服記に就て』

 魚服記といふのは支那の古い書物にをさめられてゐる短い物語の題ださうです。それを日本の上田秋成が飜譯して、代も夢應の鯉魚と改め、雨月物語巻二に収録しました。

 私のせつない生活をしてゐた期間にこの雨月物語をよみました。夢應の鯉魚は、三井寺の興義といふ鯉の書のうまい僧の、ひととせの大病にかかつて、その魂魄が金色の鯉となって琵琶湖を心ゆくまで逍遥した、といふ話なのですが、私は之をよんで、魚になりたいと思いました。魚になって日頃私を辱しめ虐げてゐる人たちを笑つてやらうと考へました。
 私のこの企ては、どうやら失敗したやうであります。笑つてやらう、などといふのが、そもそもよくない料簡だつたのかも知れません。

 (筑摩書房 太宰治全集 11 『魚服記に就て』を写す)

 

 

「夢応の鯉魚」について  (http://www.pat.hi-ho.ne.jp/nobu-nisi/kokugo/muounorugyo.htm)

 昔、三井寺に興義といふ僧がいた。 絵がうまく、湖で漁師から買い取って湖水に放した魚を描いているうちに、見事に描けるようになった。 ある時、湖水で魚と遊ぶ夢を見たのを絵に描いて「夢応の鯉魚」と名付けた。

 

魂魄(こんぱく)とは (精選版 日本国語大辞典)

〘名〙 (「こんばく」とも。「魂」は心、「魄」は心のよりどころとなる形あるもの) 心身。または、たましい。霊魂。 ※菅家文草(900頃)三・路遇白頭翁「已無二妻子一又無レ財、容体魂魄具陳述」 〔春秋左伝‐昭公七年〕 [補注]「観智院本名義抄」には「魂魄」を掲げ、「魂」に対して「ヲタマシヒ」、「魄」に対して「メタマシヒ」の訓を記すと共に、両字について「二並タマシヒ」とある。

 

逍遥(しょうしょう)とは  (とデジタル大辞泉)

[名](スル)気ままにあちこちを歩き回ること。そぞろ歩き。散歩。「郊外を逍遥する」 [類語]歩く・ぶらつく・ほっつく・散歩・散策・漫歩・漫遊・巡歴・足任せ・そぞろ歩き・遊歩・行脚あんぎゃ・跋渉ばっしょう・杖を曳ひく

 

虐げる(しえたげる)

 しいたげるに同じ。

 

 

『太宰治』細谷博 著 岩波新書560 215ページ

太宰治全集 11 随想 (筑摩書房) 『魚服記に就て』

 

 

 

 


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