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Channel: 乱鳥の書きなぐり
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『外郎売』

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 『外郎売』


出演:尾上松緑 河原崎権十郎 坂東亀三郎 坂東亀寿 尾上松也 中村梅枝 中村萬太郎 尾上右近 片岡亀蔵 市村萬次郎 市川團蔵 坂東三津五郎
2011年
40分
カラー
お正月にふさわしい曽我狂言、早口の言いたてが見どころ聴きどころ。 遠くに富士を望む大磯の遊廓。工藤祐経が小林朝比奈やその妹舞鶴たちを従え廓で休息していると、小田原名物の外郎売に身をやつした曽我五郎がやって来る。祐経に評判の早口の言い立てを所望された五郎は、妙薬である外郎の故事来歴や効能を立て板に水の如く披露しながら、祐経への敵討ちの機を狙っているが、兄の十郎に時節を待てとたしなめられる。親を思う心を察した祐経は、狩場での再会を約束するのだった。 松緑の曽我五郎に、権十郎の朝比奈、萬次郎の舞鶴、松也の曽我十郎、三津五郎の工藤祐経ほかの出演でお届けする。 (2011年/平成23年11月・新橋演舞場)


『名作歌舞伎全集』(東京創元社)で早口言葉を言ってみたが、なかなか難しくって…
 おまけに仕草までつけると、頭は真っ白となりまする☆


 拙者 親方と申すは
 お立合いの中(うち)にご存知のお方もござりましょうが
 お江戸を発(た)ってニ十里上方
 相州小田原一色町をお過ぎなされて
 青物町を登りへおいでなさるれば
 欄干橋虎屋藤右衛門(らんかんばし とらや とうえもん)
 只今は剃髪致して円斎(えんさい)と名乗りまする。

 元朝(がんちょう)より大晦日(おおつごもり)まで
 お手に入れまするこの薬は
 昔、珍(ちん)の国の唐人(とうじん) 
 外郎(ういろう)という人
 わが朝(ちょう)へ来たり
 帝(みかど)へ参内(さんだい)の折から
 この薬を深く籠(こ)め置き
 用ゆる時は一粒(いちりゅう)ずつ
 冠(かんむり)の隙間より取り出(いだ)す。

 依(よ)ってその名を帝(みかど)より
 透頂香(とうちんこう)と賜る)。

 即ち文字(もんじ)には
「頂(いただ)き・透(す)く・香(にお)い」
 と書いて、とうちんこうと申す。

 只今はこの薬
 殊の外(ことのほか)
 世上(せじょう)に弘(ひろ)まり
 方々(ほうぼう)に似看板(にせかんばん)を出(いだ)し
 イヤ
 小田原の
 灰俵の
 さん俵の
 炭俵の
 といろいろに申せども
 平仮名をもって「ういろう」と記(しる)せしは
 親方円斎ばかり

 もしやお立合いの中(うち)に
 熱海か搭(とう)の沢へ
 湯冶にお出(おいで)なさるか
 又は伊勢御参宮(ごさんぐう)の折りからは
 必ず門違い(かどちがい)なされまするな。

 お登りならば右の方(かた)
 お下りなれば左側
 八方(はっぽう)が八つ棟(やつむね)
 表が三つ棟(みつむね)
 玉堂造り(ぎょくどうづくり)
 破風(はふ)には
 菊に桐の薹(とう)の御紋を
 御赦免(ごしゃめん)あって系図正しき薬でござる。

 いや最前(さいぜん)より 
 家名の自慢ばかり申しても
 ご存知ない方には
 正身(しょうしん)の胡椒の丸呑み
 白河夜船(しらかわよふね)。

 さらば一粒(いちりゅう)食べかけて
 その気味合いをお目にかけましょう。

 先(ま)ずこの薬をかように一粒(いちりゅう)
 舌の上にのせまして
 腹内(ふくない)へ納めますると
 イヤ
 どうも言えぬは
 胃・心・肺・肝(い・しん・はい・かん)がすこやかになって
 薫風(くんぷう)喉(のんど)より来たり。
 口中(こうちゅう)微涼(びりょう)を生ずるが如し。
 魚鳥(ぎょちょう)・茸(きのこ)・麺類の食い合わせ
 その外(ほか)万病(まんびょう)速効ある事
 神(かみ)の如(ごと)し。

 さてこの薬
 第一の奇妙には
 舌のまわることが
 銭独楽(ぜにごま)がはだしで逃げる。

 ひょっと舌がまわり出すと
 矢も盾もたまらぬじゃ。

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