『パイドン』 16 プラトン著(ソクラテス「ある種の放縦によって節度があるのではないか。快楽によって支配されることを、人々は放銃とよんでいる。」)
プラトン P.40-43 (三)
(三)(要約)
哲学者は死を恐れない。死とは魂と肉体の分離であり、哲学者は魂そのものになること、すなわち、死ぬことの練習をしているものであるのだから。
ソクラテス
哲学者以外が死を大きな災いと捉えていることは、君も知っているね。
ソクラテス
哲学者以外のすべての人々は、恐るという恐怖によって、勇敢なのである。
けれども、人が恐怖と臆病によって勇敢であろうというのは、確かに不合理である。
ソクラテス
ある種の放縦によって節度があるのではないか。
ソクラテス
快楽によって支配されることを、人々は放銃とよんでいる。
放銃とは
魂の三区分説による節制の説明
プラトンは『国家』第四巻で,魂を三つの部分に区分した上で,「節制」を 「支配する部分と支配される二つの部分とが,<理知的部分>こそが支配すべ きであることに意見が一致して,その支配者に対して内乱を起こさない場合の こと」と説明しているが,節制のこの説明は,事実上どのような意味に解する ことが出来るのか。
また,この説明によって,節制のない状態,即ち「放縦」 はどのように説明することが出来るのか。
第一に,「意見が一致する」と言われる場合に,それはどの程度まで比喩的に 解されるべきなのか。
つまりプラトンはここで(もちろん『国家』全体にお いても)国家の構造を手懸かりにして人間の魂の構造を説明している訳だが, その際に「意見の一致」という,人間同士,あるいは階級間で使われる言葉を, どこまで人間の魂の説明に適用出来るかということである。
換言すれば,魂の 三つの部分にどの程度まで知的要素を認めれば,それらの部分間の「意見の一 致」ということが言えるのか,ということである。
第二に,人間の魂を三区分することによって,プラトンは「放縦」の可能性を 認め,ソクラテスのあの「徳は知なり」という逆説を放棄したのだ,という見 解があるが,その「可能性」とはどのような意味の可能性であるのか。
また, 「徳は知なり」という説の放棄とは一体どういう意味で言われているのか。
つまり「徳は知なり」という説を保持する限り,何らかの意味での知を含んだ 現象と考えられる「放縦」(普通「悪いと知りつつしてしまった」という形で 述べられる)は説明出来ないことになるが,プラトンはこの現象を説明するた めに魂の三区分説を導入したのだ,という解釈において,その知の理解と,先 の魂の三つの部分の知的要素の理解とは,どこまで一貫した形で考えることが 出来るのか,ということである。
一般的に考える放銃とは
振り込むこと
振り込む
[1] 〘他マ五(四)〙
① 振って内へ入れる。勢いよく押し込む。 ※たけくらべ(1895‐96)〈樋口一葉〉一〇「万燈を振込(フリコ)んで見りゃあ唯も帰れない」
② 振替口座や預金口座などに金銭を払い込む。預金する。 ※談義本・身体山吹色(1799)五「遊金あらば安い利足で丈夫な所へ振込(フリコン)で置がよい」
③ マージャンで、相手が上がろうとして待っている牌(パイ)を捨てる。 ※花影(1958‐59)〈大岡昇平〉七「飲みながらやると振り込むぞ」
[2] 〘自マ四〙 勢いよく入り込む。押しかける。闖入(ちんにゅう)する。 ※歌舞伎・暫(日本古典全書所収)(1714)「『勇み勇んで』『振込むべいか』」 ふり‐こみ【振込】
〘名〙
① なじみでもなく、約束もない客が、突然遊女の所へ来ること。 ※洒落本・白狐通(1800)姐妓「そんなやすいては、ふり込(コミ)の未至客(はんかきゃく)のする事で、傾城買のきらふ事さ」
② 口座などに金銭を払い込むこと。 ③ マージャンで、他人の上がりになる牌(パイ)を捨てること
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『パイドン』魂の不死について
プラトン著
岩田靖夫訳
岩波文庫 青602-2
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