『ギリシア神話』3 カッサンドラーの悲鳴 クリュタイムネーストラー
『ギリシア神話』(高津春繁著 岩波文庫)によると、アガメムノーンが自分の妃とその情夫であり、従兄弟であるアイギストスによって殺されたようとした、まさにその時、
「わたしのまわりで、あり余る富と権力のある男の館で、結婚や自弁の会食か招待の盛んな宴席で、屠殺される白い牙が豚のように、相次いで一人残らず殺された。・・・・・われらが酒や甕の上に盛られた食卓のまわりに、広間で横たわり、床はどこも血にまみれているさまを・・・・・中でも哀れであったのは、プリアモスの姫 カッサンドラーの悲鳴であった。・・・・・だが、あの売女目(クリュタイムネーストラー)は、あの世に行こうとしているわたしの目をつぶらせようとも、口を閉じてくれようともしなかった。」
カッサンドラー
カッサンドラー(ラテン語: Cassandra)もまた、神話上に人物。
ギリシア神話に登場するイリオス(トロイア)の王女である。
悲劇の予言者として知られる。
カッサンドラーは、プリアモス王とヘカベーとの間に生まれた。
長兄にイーリオスの英雄ヘクトール、兄に「パリスの審判」で知られイーリオスに戦乱(ひいては滅亡)をもたらしたパリスを持つ。
同じく予言能力を持つヘレノスとは双子だという。
アポローンに愛され、アポローンの恋人になる代わりに予言能力を授かった。
しかし予言の力を授かった瞬間、アポローンの愛が冷めて自分を捨て去ってゆく未来が見えてしまったため、アポローンの愛を拒絶してしまう。
憤慨したアポローンは、
「カッサンドラーの予言を誰も信じないように」
という呪いをかけてしまった。
カッサンドラーは、パリスがヘレネーをさらってきたときも、トロイアの木馬をイリオス市民が市内に運び込もうとしたときも、これらが破滅につながることを予言して抗議したが、誰も信じなかった。
イーリオス陥落の際、小アイアースにアテーナーの神殿において凌辱された。
小アイアースは、これによってアテーナーの怒りを買い、ギリシアへの航海の途中で溺死させられた。
カッサンドラーはアガメムノーンの戦利品となり、ミュケーナイにつれてゆかれた。
そして、アガメムノーンと共に、アガメムノーンの妻クリュタイムネーストラーの手にかかり、命を落とした。
クリュタイムネーストラー
クリュタイムネーストラー(英語: Clytemnestra, Clytemestra)は、ギリシア神話の女性である。
長母音を省略してクリュタイムネストラとも表記される。
ミュケーナイ王アガメムノーンの后。
父親はスパルタ王テュンダレオースで母親はレーダー、兄は英雄カストール、異父兄弟(父はゼウス)に英雄ポリュデウケースとスパルタ王妃ヘレネーという名家の出。
娘にイーピゲネイアとエーレクトラー
息子にオレステース
姉妹のヘレネーがパリスに誘惑されトロイアへ逃げた間に、置き去りにされたヘレネーとメネラーオスの娘ヘルミオネーを養育した。
本来の夫はアガメムノーンの従弟タンタロスで、死別後(実際には謀殺)アガメムノーンと再婚、トロイア戦争中にアガメムノーンの従弟で先夫タンタロスの実弟アイギストスを情夫とした。
父アガメムノーンを彼女に殺された息子オレステースが彼女を殺害する。
『ギリシア神話』 高津春繁著 岩波文庫 参考
ウィキペディア参考
『ギリシア神話』1 オレステース 『ギリシア神話』2 アガメムノーン 『ギリシア神話』3 カッサンドラーの悲鳴 クリュタイムネーストラー