恩頼堂文庫旧蔵本 『仁勢物語』 95 四十二丁表 四十二丁裏と、『伊勢物語』岩波古典文学大系9
富田高至 編者
和泉書院影印業刊 65(第四期) 1998年
下 95 四十二丁表 四十二丁裏
四十二丁表
◯をかし、二條の北につかうまつる男、有けり、女とも
をあまたつかひて、常にみかハして、夜ハひ渡けり、いかて
物かたりハかりして、おそろしく思つめたる山の神の
四十二丁裏
心はるかさんと思ひけれハ、女 「いと忍給ふ(ママ)、しハぶきの聞
ゆるに」といひけれと、物ともせす(ママ)、女、
源七か 顔をするとも咳気ゆへ
かくれぬセキを 今はやめてよ
此せきにめいわくして、いにゝけり
『仁勢物語』和泉書院影印業刊
源七か 顔をするとも咳気ゆへ
かくれぬセキを 今はやめてよ
『伊勢物語』岩波古典文学大系9より写す
彦星に 恋はまさりぬ天(あま)の河
へだつる關(せき)を いまはやめてよ
しハぶき
咳
物ともせす
物音もせず (岩波古典文学)
關(せき)
①「せき」
「関所(国境や国内の要所に設けて、通行人や貨物の出入りを取り締まる所)」
②「閉ざす」、「閉じる」、「閉める」、「ふさぐ(塞)」
③「かかわる・かんする・あずかる(関係する)」
④「かんぬき(門戸を閉ざす横木)」
⑤「からくり」、「仕組み」、「仕掛け」(例:機関)
⑥「人体の要所(重要な部分)」、「要所」
⑦「ものの形容」 ⑧「引く」、「矢を引く」
關(せき) ここでは
①「せき」「関所(国境や国内の要所に設けて、通行人や貨物の出入りを取り締まる所)」は、
天の河によって恋が閉ざされている様子。