『高砂』 3 『伊勢物語』百十七段と高砂の関わり
むかし、みかど、住吉に行幸したまひけり。
我見ても久しくなりぬ住吉の岸の姫松いくよへぬらん
おほん神、現形(げぎやう)し給(ひ)て、
むつましと君は白浪瑞垣(みづがき)の久しき世よりいはひそめてき
(岩波 日本古典文学大系9 『竹取物語、伊勢物語、大和物語』から引用)
昔、帝が住吉に行幸されました。
私が見てからも久しくなった、住吉の岸の松は、どれほど時代を経ているのでしょうか。
住吉の大御神(おおみかみ)がお姿を現されて、
私が帝に親愛の情を抱いているのを、ご存知では無いでしょう。
久しい昔の世から、ずっとお守り申し上げているのですよ。
神が現れて、歌を詠む。
あなたは知らないでしょうけれど、お守りしてきたんですよと詠み、
むつましと君は白浪瑞垣(みづがき)の久しき世よりいはひそめてき
で、掛詞。
「しら浪」
「しらない」
「瑞垣」は、「久し」にかかる枕詞。
住吉神社は古くから海の安全を護る神として信仰された。
上を総合的に考えると、謡曲『高砂』が『伊勢物語』百十七段を引いたことがわかる。
『高砂』 続く