源氏物語 【語り手と読者に共有される物語(語り) 2】鈴木日出夫
『源氏物語 一』新日本古典文学大系日本古典文学大系19より
物語
『源氏物語』に先立つ十世紀の物語は、概ね短編。
『源氏物語』が長編と見られるのは、光源氏の一生を淡々と描いたものではなく、刻々と変化する人生や世界を動態的に語るから。
長編的構造をとって、物語の方法として、語りが重要な機能を果たしている。
作者は決して、物語には顔を出さない。
感想や推測なども、語り手の言葉。
作者といえども、人物や事件を勝手気ままに操作することは許されない。
それにより、作品自体が固有の世界として、自律的に展開しようとする。
語り手を、読者と共同しあうものとして仮構。
語り手と読者に共有される伝承や先行物語、あるいは、和歌など持ち込まれ、二者の協働により想像が広がりを見せる。
語り手を、読者と共同しながら、この物語(語り)を展開していく。