富田高至 編者
恩頼堂文庫旧蔵本 『仁勢物語』 42 二十丁表と、『伊勢物語』岩波古典文学大系9
和泉書院影印業刊 65(第四期) 1998年
41 二十丁表
二十丁表
◯をかし男、馬このみにて荒馬を相持ちけり、されと
癖ハたあらさりけり、しは/\責けれと猶いと
うしろめたく、さりとていかしなといえ、有まし
かりける、猶、裸背(ハタセ)にて乗ける事也けれは、ふつと
かけ出て、え追つかてかくなん
出て逃げしあとたにみえぬ河原毛を
誰か逸物とはいまハなるらん
ものうさによめる也けり
『仁勢物語』和泉書院影印業刊
出て逃げしあとたにみえぬ河原毛を
誰か逸物とはいまハなるらん
『伊勢物語』岩波古典文学大系9より写す
出でてこし あとだにいまだ変らじを
たが通い路と 今はなるらん
癖ハたあらさりけり
癖はた有らざりけり
人に噛み付いたりする癖は、およそ無かった。
うしろめたく
不安で。
なんとなく気がかりで。
いかし
行かじ
裸背(ハタセ) 裸背、肌背〘名〙
① はだ。はだえ。 ※類従本赤染衛門集(11C中)「なみなみの事にも非ず天川さてはだせをもかくぞうたまし」 ② 「はだせうま(裸背馬)」の略。 ※塵袋(1264‐88頃)四「一、黒駒と云ふは、〈略〉はたせにてとりあえすはせけるにこそ」 ここでは、「はだせうま(裸背馬)」 裸背馬(はだせうま)〘名〙 はだかうま(裸馬) ※曾我物語(南北朝頃)六「はだせ馬にうちのりて」 裸背馬(はだせうま)〘名〙鞍を置かない馬。はだか馬。
「鞍おくべき暇なければ、―にうち乗りて」〈曾我物語六〉
ふつ
思いがけず。急に。ふと。
河原毛 (ウィキペディア)
河原毛(かわらげ、英: buckskin、羅: gilvus badius)とは、原毛色が鹿毛で、変異型MATP遺伝子(クリーム様希釈遺伝子)をヘテロで持つ馬が発現する毛色である。
薄墨毛と混同されやすいが、別の遺伝子による。
関連する毛色にSmoky Blackがある。
これは、原毛色が青毛、かつクリーム様希釈遺伝子をヘテロで持つ馬のことを言う。
遺伝上は河原毛ではないが、日本馬事協会はこの毛色を定義していないため、河原毛または青鹿毛として登録されている馬の中に、この毛色を持つ馬が含まれている可能性がある。
逸物
特に優れたもの。
馬、犬、鷹などを言う。
逸物
群を抜いて優れているもの。
特に、犬・牛・馬、または人などにいう。いちもち。いちぶつ。いつぶつ。
「犬は三頭が三頭ながら、大きさも毛なみも一対な茶まだらの―で」〈芥川 偸盗〉