仮名手本胸之鏡 中 9 二丁裏 三丁表
早稲田大学所蔵
https://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he13/he13_01505/
仮名手本胸之鏡 中
山東京伝 作
歌川豊国 画
早稲田大学デジタル図書
通油町(江戸) [蔦屋重三郎]
寛政11 [1799]
黄表紙
仮名手本胸之鏡 中 9 二丁裏 三丁表
中 二丁裏上
とかく人ハ心にくろしやうぞくを
きせ、はぢをしのばざれバ、忠臣(ちうし)」の
ろうにおさめたる大功(たいこう)とたから
ものハゑがたし、むせう向きの
みじかき人ハ、いつしやう大(たい)
功(こう)ハさてぞかし
中 二丁表中央 算盤を持ってたつ男の言葉
黒装束の顔に 心
胸に 大功
「かうはぢを
しのんでハたれ
ことさとら
れることでハ
ねへ、大ぐわん
じやう しゆハ
まだゞ/″\、うつた
中 二丁表中央 右下の座る男
手ぬぐいに 気 の文字
なるほど
うらぎが
みしかく
てハ、てぬ
ぐひにも
ならぬ
中 二丁裏中央 左下の座る男
手ぬぐいに 気 の文字
中 三丁表中央 左下の座る男
い
きとくしる
きもみし
かうこざる
中 三丁表中央 丸鏡の下
たいこうのかゞみ
大功の鏡
はぢをしのひ
いかりをこしへて
大功をたつる人ハ
此心のみにうつるきやう
げんのごとし
仮名手本胸之鏡 中 9 二丁裏 三丁表
中 二丁裏上
とかく人は心に黒装束を
着せ、恥を忍ばれざれば、忠臣(ちゅうしん)の
楼に納めたる大功(たいこう)と 宝
物は、得難し、むしょう向きの
短かき人は、一生 大(たい)
功(こう)は、さてぞかし
中 二丁表中央 算盤を持ってたつ男の言葉
黒装束の顔に 心
胸に 大功
「こう 恥を
忍んでは、誰、
事悟ら
れる事では
ねへ、大勘
定 しゅうは
まだだ、まだだ、売った(打った)
中 二丁表中央 右下の座る男
手ぬぐいに 気 の文字
なるほど
裏着が
短く
ては、手ぬ
ぐひにも
ならぬ
中 二丁裏中央 左下の座る男
手ぬぐいに 気 の文字
中 三丁表中央 左下の座る男
い
きとくしる
気(着)も短
こうこざる
中 三丁表中央 丸鏡の下
たいこうのかゞみ
大功の鏡
恥を忍び
怒りを越し経て
大功を達つる人は
此心の身に写る狂
言の如し
くろしやうぞく
黒装束