仮名手本胸之鏡 中 8 一丁裏 二丁表
早稲田大学所蔵
https://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he13/he13_01505/
仮名手本胸之鏡 中
山東京伝 作
歌川豊国 画
早稲田大学デジタル図書
通油町(江戸) [蔦屋重三郎]
寛政11 [1799]
黄表紙
仮名手本胸之鏡 中 8 一丁裏 二丁表
中 一丁裏上
たんりよこうをなさずとハ
むべなるかな、あとさきのかん
べんなくはらのたつまゝに
ことをやぶる人ハ、わが心の
つるぎをもつて
わがあしにていへをふみ
つぶし、つまや子に
なげきを
かけ、けらい、めしつかひ
にハ、ひしよくに
はなれしめ
なんぎをさする
こと、みなこれ
一人のたんりよ
しりおこるなり
中 一丁裏上 真ん中家を左足で抑え、刀を持ってたつ男
その左に刀男の腹を持って振り返る男
衣という頭の白生き物をきて去る左上の男
中 二丁表中右
「さむさにむかつて
きもの はな
するとハ
なんたる
いんぐわだ
中 一丁裏上 右女の目から
泪
泪
中 一丁裏右下
「にようぼうの
目より、なみだの
たま はしりいづる
「わがあしにて、わが
いへをふみつぶす
中 一丁裏右下座る男が、二丁表ご飯頭の男に声をかける
「しよく
にはなれて
□すがら
何にしやう
丸鏡の中の絵
仮名手本忠臣蔵 塩谷判官(えんやはんがん)切腹の場
仮名手本胸之鏡 中 8 一丁裏 二丁表
中 一丁裏上
たんりょうこうをなさずとは
むべなる哉、後先の勘
弁無く、原野たちままに
事を破る人は、我が心の
劔を持って
我が足にて家を踏み
潰し、妻や子に
嘆きを
掛け、家来、召使
には、被食に
離れしめ
難儀をさする
事、皆これ
一人の胆力
知りおこる也
中 一丁裏上 真ん中家を左足で抑え、刀を持ってたつ男
その左に刀男の腹を持って振り返る男
衣という頭の白生き物をきて去る左上の男
中 二丁表中右
「寒さに向かって
着物 離
するとは
なんたる
因果だ
中 一丁裏上 右女の目から
泪
泪
中 一丁裏右下
「女房の
目より、涙の
玉 は知り出(いず)る
「我が足にて、我が
家を踏み潰す
中 一丁裏右下座る男が、二丁表ご飯頭の男に声をかける
「食
に離れて
□すがら
何にしよう
仮名手本忠臣蔵 塩谷判官(えんやはんがん)切腹の場
(文化デジタルライブラリー https://www2.ntj.jac.go.jp/dglib/contents/learn/edc21/himotoku/d4/2a.html)
上使は、石堂右馬丞(いしどううまのじょう)と、高師直 (こうのもろのう)と懇意の薬師寺次郎左衛門(やくしじじろうざえもん)。塩谷判官(えんやはんがん)は切腹、領地は没収との上意が申し渡されます。判官は既に覚悟を決めており、死装束を整えていました。切腹の支度が粛々と進みます。切腹の座についた判官は、一目だけでも大星由良助(おおぼしゆらのすけ)に会いたいと到着を待ちわびますが、もはや猶予は許されません。ついに、刀を腹に突き立てます。
そこへ由良助が駆け付けました。判官は苦しい息の下、「無念」と伝えこと切れました。由良助の手には、判官が形見と告げた腹切り刀。由良助は、判官の最期の言葉を噛みしめます。
判官の亡骸は、泣き崩れる顔世御前(かおよごぜん)と家臣達に付き添われ、葬送のため菩提寺光明寺へ向かいました。