富田高至 編者
恩頼堂文
庫旧蔵本 『仁勢物語』 5 三丁表
和泉書院影印業刊 65(第四期)
1998年 初版
1997年 第三版
左
右
5 三丁表
◯をかし男有けり、名人の碁うちへ石なをされに
いきけり、大身なる所なれハ、たひ/\も えうたて、藁(ワラ)
苞(ツト)なとに文やり、朔日節供にかよひけり、人より下手
にもあらぬとまけ 度かさなりけれハ、あるし 其
あい手に夜ことに上手をつけてうたせけれハ、うてと
えかたて手もなをらさりけり、さて、詠める
ひとつふたつ わか手なをらぬものならハ
よひ/\ごをハ うちもしなゝむ
5 三丁表
◯おかし男有けり、名人の碁打ちへ 石直されに
行きけり、大身なる所なれば、度々も 得 打たで、藁苞(ワラヅト)
等に文やり、朔日節供に通いけり、人より下手
にも有らぬと負け、度重なりければ、主人(あるじ)其
相手に夜毎に上手を付けて打たせければ、「打て」と
得勝たて、手も尚更去りけり、さて、詠める
ひとつふたつ 我が手 直らぬものならば
宵々 碁をば 打ちも死ななん
藁苞(ワラヅト)岩波古典文学大系
藁で包んだ土産物
うちもしなゝむ
打ちも死ななん
うちも し(する)ななん
『仁勢物語』和泉書院影印業刊
ひとつふたつ わか手なをらぬものならハ
よひ/\ごをハ うちもしなゝむ
『伊勢物語』岩波古典文学大系9 「竹取物語 伊勢物語 大和物語」より写す
人しれぬ わが通ひ路の関守は
よひ/\ごとにうちも寝ななん