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乱鳥の今更人に聞けない言葉の混乱 19  合巻とは (そして、合本、合冊とは)

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 乱鳥の今更人に聞けない言葉の混乱 19  合巻とは (そして、合本、合冊とは)



 合巻(ごうかん)とは    (ウィキペディア)
 合巻(ごうかん)は、寛文期以降江戸で出版された草双紙類の、1804年(文化元年)頃に始まった最終形態。
 それまで5枚(5丁)1冊に別々に綴じていたのを、纏めて厚く綴じた。明治初期まで続いた。


 合巻(ごうかん)の歴史
 赤本・黒本・青本・黄表紙と時代を下った挿画入り娯楽本草双紙は、左右1ページずつ木版摺りした和紙を2つに折り、その5枚(5丁)10ページ分に表紙・裏表紙を付けて1冊に綴じるのが原則。
 それの数冊で1編の絵物語になっていた。
 大きさは、美濃紙半裁二つ折りの中本(約14×20㎝)が普通だった。現在のB6よりやや大きい。

 古典を下敷きに、洒落・滑稽・諧謔を交えて風俗・世相を諷刺的に描き綴って売れていた黄表紙類が、松平定信の寛政の改革期に、相次いで発禁にされ、業界は当座の厄除けに、黄表紙を勧善懲悪の仇討話に方向転換し、仇討話は筋が複雑で長編化して、10ページ1冊の冊数が増えた。
 そこで数冊を纏めて綴じてしまう工夫が生まれ、それを『合巻』と呼んだ。

 1804年(文化元年)の、春水亭元好作・歌川豊国画『東海道松之白浪』が、表紙に『全部十冊合巻』とうたっている。

 1806年の式亭三馬の『雷太郎強悪物語』が合巻の始まりとの説は、三馬の自己宣伝に発すると言う。

 読者の好みと世相の変遷に従い、内容は、仇討・お家騒動・古典の翻案・歌舞伎・教訓・変態・猟奇などに変遷した。

 作者には、
     山東京伝、
     十返舎一九
     曲亭馬琴、
     山東京山、
     式亭三馬、
     柳亭種彦、
     為永春水、
     一筆庵主人、
     墨川亭雪麿、
     笠亭仙果、   らがいた。

 絵師には、
     北尾重政、
     歌川豊国、
     勝川春扇、
     葛飾北嵩、
     二代目歌川豊国、
     歌川国貞、
     渓斎英泉、
     歌川国直、
     歌川国安、
     歌川貞秀、
     貞斎泉晁、
     歌川貞重、
     四代目歌川豊国、
     落合芳幾、    らがいた。

 装丁も派手になったが、水野忠邦の天保の改革(1841-1843年)で地味になる。
 そして又華美に戻ったものの、改革のあおりで為永春水と柳亭種彦は没す。
 作品の質はエログロの方向に低俗化して、明治に入り、大衆向けの小新聞の影響を受けて消滅した。


 主な合巻とその厚さ
 主な合巻を、年を下る順序に列記する。
 各行末の括弧内の、例えば(50×2)とは、50ページ(25丁)ずつ綴じた2冊、計100ページ、の意である。
 表紙・裏表紙・口絵・広告などは、数えていない。

 春水亭元好作、歌川豊国 画:『東海道松之白浪』、永寿堂 (1804)(50×2)
 式亭三馬、歌川豊国画:『雷太郎強悪物語』、西村新六 (1806)(50×2)
 山東京伝作、歌川豊国画:『糸車九尾狐』、永寿堂 (1808)(30×3)
 山東京伝作、歌川豊国画:『岩井櫛粂野仇討』、永寿堂 (1808)(30+40)
 山東京伝作、歌川豊国画:『累井筒紅葉打敷』、耕書堂 (1809)(80×1)
 山東京伝作、歌川豊国画:『志道軒往古講釈』、(1809)(60×1)
 山東京伝作、歌川豊国画:『男草履打』、甘泉堂 (1811)(30×2)
 山東京伝作、勝川春扇画:『暁傘時雨古手屋』、耕書堂 (1811)(60×1)
 柳亭種彦作、葛飾北嵩画:『鱸庖丁青砥切味』、永寿堂 (1811)(70×1)
 山東京伝作、歌川国貞画:『薄雲猫旧話』、岩戸屋 (1812)(60×2)
 山東京伝作、歌川豊国画:『娘清玄振袖日記』、永寿堂 (1815)(60×1)
 柳亭種彦作、歌川国貞画:『正本製 初編 - 12編』、永寿堂 (1815 - 1831)(編により80×1、60×1、40×1)
 山東京伝作、歌川豊国画:『琴声美人伝』、丸屋甚八 (1816)(60×1)
 山東京伝没 (1816)
 山東京伝作、歌川国貞画:『長髦姿蛇柳』、東永堂 (1817)(30×1)
 十返舎一九作、歌川国直画:『糠三合有卦入聟』、鶴屋喜右衛門 (1820)(20×1)
 十返舎一九作、歌川国直画:『御あつらへ出来合女房』、鶴屋喜右衛門 (1820)(20×1)
 北尾重政没 (1820)
 為永春水作、歌川国直画:『総角結紫総糸』(1822)(50×1)
 式亭三馬没 (1822)
 曲亭馬琴作、歌川豊国画:『諸時雨紅葉合傘』、甘泉堂 (1823)(50×1)
 幽月庵元越作、十返舎一九校合、北尾美丸画:『附祭踊子新書』、伊藤与兵衛 (1823)(50×1)
 曲亭馬琴作、歌川豊国画:『膏油橋河原祭文』、仙鶴堂 (1823)(30×2)
 曲亭馬琴作、渓斎英泉画:『金毘羅舩利生纜』、和泉屋市兵衛 (1824)(30×2)
 曲亭馬琴作、二代目歌川豊国(初編)・歌川国安(2編以降)画:『傾城水滸伝 初編 - 13編上』、仙鶴堂 (1825 - 1835)。(編により、20×1か40×1)
 歌川豊国没 (1825)
 為永春水作、春川英笑画:『腹内窺機関』、永寿堂 (1826)(20×1)
 為永春水作、歌川国丸画:『浦島太郎珠家土産』、青林堂 (1828)(80×1)
 為永春水作、歌川国丸画:『風俗女西遊記』、青林堂 (1828)(60×1)
 柳亭種彦作、歌川国貞画:『偐紫田舎源氏初編 - 38編(未完)』、仙鶴堂 (1829 - 1842)(各編とも、80×1)
 西来居未仏作、歌川国兼画:『忠臣合鏡 前 後編』、森屋治兵衛 (1829)(30×2)
 為永春水作、春川英笑画:『愚智太郎懲悪伝』、(1829)(60×1)
 為永春水作、渓斎英泉画:『繋馬七勇婦伝』、(1829)(50×2)
 曲亭馬琴作、歌川国安画:『新編金瓶梅 1 - 10集』、甘泉堂 (1831 - 1847)(各集とも、80×1)
 十返舎一九没:1831、歌川国安没:1832
 歌川雪麿作、貞斎泉晁画:『宇治拾遺煎茶友』、喜鶴堂 (1834)(60×1)
 柳亭種彦作、歌川国貞画:『邯鄲諸国物語 1 - 8編』、栄久堂 (1834 - 1841)(編により、20×1、40×1、60×1)
 墨川亭雪麿作、渓斎英泉画:『洗鹿子紫江戸染』、(1835)(60×1)
 為永春水作、歌川貞秀画:『笠松峠薊花恋苧車』、(1835)(40×1)
 二代目歌川豊国没 (1835)
 山東京山作、歌川国貞画:『廓花勝山話』、福川堂 (1840)(30×1)
 水野忠邦の天保の改革(1841 - 1843年)
 美濃屋甚三郎(初 -5編)・楓川市隠(6編)・柳下亭種員(13 - 39、41編)・柳水亭種清(37 - 40、42編)作、歌川国貞(初 - 15編)・一雄斎国輝(16 - 28編)・一竜斎国盛(29 -31編)・一寿斎国貞(32 - 35、42編)・一勇斎国芳(36 - 38編)・一恵斎芳幾(38 - 41編)画:『児雷也豪傑譚』、甘泉堂 (1841 - 1865)(各編とも80×1)
 為永春水没 (1841)、柳亭種彦没 (1842)
 一筆庵主人作、渓斎英泉画:『心学教訓誰身の小槌』、(1844)(40×1)
 一筆庵主人作、渓斎英泉画『絵本二十四孝』、(1844)(20×1)
 万亭応賀作、渓斎英泉画:『忠臣国性爺将棋合戦』、(1844)(40×1)
 万亭応賀作、渓斎英泉画:『教訓浮世眼鏡』、(1844)(60×1)
 墨川亭雪麿作、渓斎英泉画:『紅粉絵売昔風俗』、(1845)(60×1)
 半俗退士作、渓斎英泉画:『拍掌奇譚品玉匣』、(1845)(60×1)
 

 ついでに現代における合本と合冊についても記しておきたい。

 合本とは [名]     (大辞泉)
  1 数冊の本や雑誌などをまとめ、1冊として製本すること。また、その本。
   合冊(がっさつ)。「合本された雑誌」
  2 分冊して発行した図書を、新たに1冊にまとめて発行したもの。合冊。 
 合冊とは [名]     (大辞泉)
   「合本(がっぽん)」に同じ。ごうさつ。
 つまり   合本(がっぽん) = 合冊(がっさつ) である。


 
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 乱鳥の今更人に聞けない言葉の混乱 19  合巻とは (そして、合本、合冊とは)






 トップの写真は、中国の刺繍  クリムトの絵画を題材に制作されている。
 手の込んだ詩集の中には、表から見ても裏から見ても別の絵に仕上げられている神戸の技術のものもある。

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