『風流 妖化役者附』上 二ウ 三オ(ふうりゅう ばけものやくしゃづけ) 鱗形屋孫兵衛, [江戸 明和6(1769)] 3
『風流 妖化役者附』上 二ウ
此芝居、初日はじまりハ夜の
八ツ時丑三ツとて、ばけものがでる
時分のよし、申つたふる一座
のかしらの大あたま
後見(くわけん=こうけん)となり、とうざ
いくと扇をひらき
。やくわんばけて茶うり
なり、口よりつぎかける
。ああやおこしばけてわ が
でにうつはこかす ●中う り
のふしめ、酒ばけてのミくいしな
いはやく、北の木、つい大入だ
出街につめ
もたし
ぬりし
ハらかん
へでも
いかう
か
「き つ印 そ の
ばん
づけも
とう
り
た
い
「 ばん
よう
まづ
あ心さ
ぎやの
あ
か
□
も
ま
い
れ
さ
『風流 妖化役者附』上 三オ
さてに口上やくハま。御さだま
まり。ついだてのがぼミせ座
付口上に罷出△たろうハで
たり ますれど これより 申
上
まする
ばけも
の芝
居ゟ
とりたてと
あつて夜の
九ツゟ御出被
下まするさん越座
中
べつしてたいけいにぞんし奉りまする
さそ 何がな御地走(ちそう)のためぢくちばけ物
と だいして役者の名に によふ
まし たるばけ物ニ仕内を
致させ御三急と入まする、さた
めて御めだるいがちに
ごさりませうが御よう
しやのほどねがい奉り
ます、まずハばけものきやうげん
はじ まり、さやうにおほし めし
ませう
やくわん =(湯を沸かす)ヤカン
夜間とヤカンの掛詞
ついだてのがぼミせ座付口上に罷出
= ついたての顔見世座付き口上罷(まか)り出で
たろうハで
たり ますれど これより 申
上
まする
= 太郎は(芝居に)出たりますれど、これより申し上げまする。
夜の
九ツゟ御出被
下まするさん越座
中
= 夜の九つ(時間)よりおんいで下されまする、さんこし座中
さんこし座中(三越座中か )
江戸時代の時間 (『大江戸ものしり図鑑』)
午前
0時-夜九ツ(子ノ刻)
1時-九ツ半
2時-夜八ツ(丑ノ刻)
3時-八ツ半
4時-暁七ツ(寅ノ刻)
5時-七ツ半
6時-明け六ツ(卯ノ刻)*日の出の30分前
7時-六ツ半
8時-朝五ツ(辰ノ刻)
9時-五ツ半
10時-昼四ツ(巳ノ刻)
11時-四ツ半
午後
12時-昼九ツ(午ノ刻)
13時-九ツ半
14時-昼八ツ(未ノ刻)
15時-八ツ半
16時-夕七ツ(申ノ刻)
17時-七ツ半
18時-暮れ六ツ(酉ノ刻)*日没の30分前
19時-六ツ半
20時-宵五ツ(戌ノ刻)
21時-五ツ半
22時-夜四ツ(亥ノ刻)
23時-四ツ半
べつしてたいけいにぞんし奉りまする
= 別して大計(或いは、大慶)に存知たてまつりまする
別して = (古語辞典)
《多くはあとに打消しを伴って》 《副ノ》とりわけて。ことに。特別に。
大計 = (三省堂 大辞林 第三版 )
大きな計画。遠大なはかりごと。 「国家百年の-」
大慶 = 大いに喜ぶこと
さそ = さぞ
さそ 何がな御地走(ちそう)のためぢくちばけ物
と だいして役者の名に によふ
まし たるばけ物ニ仕内を
致させ御三急と入まする、
= さぞ、何がな、ご馳走のため、熟知、化け物
と題して、役者の何によふまじ(にあった、見合った)
たる(の)化け物に仕打ちを致させ、御さん休と入りまする。
さた
めて御めだるいがちに
ごさりませうが御よう
しやのほどねがい奉り
ます、まずハばけものきやうげん
はじ まり、さやうにおほし めし
ませう
=定めて御めだるいがちにござりましょうが、
ご容赦の程ねがい奉ります。
まずは化け物狂言、始まり
さ様に思し召しましょう。
めだるい = 【目怠い】( 形 ) めだる・し
1 見ていてもどかしい感じだ。まだるい。 「そんな-・いことはしてられない」
2 目が疲れた感じだ。
上の「見ていてもどかしい感じ」から考えて、芝居がつまらない様と考えられる。
昔は芝居が長く、捨て芝居というものも織り込まれていたらしいが、この芝居が捨て芝居か否かは定かではない。
(読み間違いはお許しください。)
話の続き方
1
『風流 妖化役者附』上 一オ(ふうりゅう ばけものやくしゃづけ) 鱗形屋孫兵衛, [江戸 明和6(1769)] 1
↓
2
『風流 妖化役者附』上 一ウ 二オ(ふうりゅう ばけものやくしゃづけ) 鱗形屋孫兵衛, [江戸 明和6(1769)] 2
↓
3
((今回の記録))
『風流 妖化役者附』上 二ウ 三オ(ふうりゅう ばけものやくしゃづけ) 鱗形屋孫兵衛, [江戸 明和6(1769)] 3
↓
4
『風流 妖化役者附』上 三ウ 四オ(ふうりゅう ばけものやくしゃづけ) 鱗形屋孫兵衛, [江戸 明和6(1769)] 4
↓
5 6
『風流 妖化役者附』上 一オ(ふうりゅう ばけものやくしゃづけ) 鱗形屋孫兵衛, [江戸 明和6(1769)] 1
『風流 妖化役者附』上 一ウ 二オ(ふうりゅう ばけものやくしゃづけ) 鱗形屋孫兵衛, [江戸 明和6(1769)] 2
『風流 妖化役者附』上 二ウ 三オ(ふうりゅう ばけものやくしゃづけ) 鱗形屋孫兵衛, [江戸 明和6(1769)] 3
『風流 妖化役者附』上 三ウ 四オ(ふうりゅう ばけものやくしゃづけ) 鱗形屋孫兵衛, [江戸 明和6(1769)] 4
『風流 妖化役者附. 上』(ふうりゅう ばけものやくしゃづけ)
鱗形屋孫兵衛, [江戸 明和6(1769)]
19cm
黒本
書名は題簽による 版心書名:役しや 角書付書名:風流妖化役者附
墨書入あり
和装
黒本(くろほん、くろぼん)とは
江戸時代に書かれた挿絵が描かれた本、草双紙の一種。
子供向けの赤い表紙の赤本が発展して、青少年向きの黒い表紙の黒本になった。
題材は、浄瑠璃、歌舞伎、英雄伝、戦記が多い。草双紙 黒本
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