『日本絵画の転換期 酒飯論絵巻』「絵巻」の時代から「風俗画」の時代へ 並木誠士 著 2017年 4,8★
某公機関の書棚で、酒飯論絵巻という私の知らない絵巻物の名に惹かれ、『日本絵画の転換期 酒飯論絵巻』を手にとってみる。
『日本絵画の転換期 酒飯論絵巻』をパラパラと開き、インデックスをみ、最初と最後を読み初めて本書をお借りした。
『日本絵画の転換期 酒飯論絵巻』の中には、実際に読んだ絵巻物や博物館や寺で見たものが多く載せられており、多少絵巻物に関心のある私にとっては楽しい本である。
読んだものや見たものを思い返しながら、ウンウンと頷き、早々と声に出しながら読み進める。
この本は言葉がすんなりとしていてひとかたまりを人忌避、あるいはブレス1,2回で読みやすく、音読をしながら楽しんだ。
著者 並木誠士氏は徳川美術館学芸員をなさっておられたという。
徳川美術館は昨年春に楽しんだ。
また、京都大学助手や京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科教授をなさっておられたという。
京都生まれの私にとっては、とても親しみやすい感じがする。
こういった先生の講義を聞いて見たかったなと感じる。
いやいや、まだお若いので、朝日カルチャーセンターなどでは聞けるのかもしれないが。
いちいち納得できる『日本絵画の転換期 酒飯論絵巻』は、家に居ながらにして講義を聞いているようで、二日に分けて一気に読めた。
他にも旅行書と古文書関係一冊を読み、テレビで歌舞伎を見て居たので、子に二日間も読書三昧、舞台三昧であった。
脇道はさておき、本書を読み心に残った部分としては、
酒飯論絵巻は「絵巻の時代」と「風俗画の時代」という二つの時代が交替する、ちょうど「潮目」に当たる作品 (P.155)
ということであった。
絵巻が表現形式として中心的位置を占めて居た時期は、宮中のロマンスや合戦、高僧の生涯などが、まず「文字」化され、その後に絵巻として鑑賞されるようになった。
しかし、挿図的な位置であった絵巻の「絵」は、やがて詞書から離れて汁つすることになる。
それは同時に、屏風という新しい絵画の確率で亜もあった。
そしてそこで人々の目を楽しませたのは、自分たちのどう時代の人々の様子、つまり風俗であった。
風俗画の成立である。
その転換期にあった作品こそが『酒飯論絵巻』であった。 (P.156)
『日本絵画の転換期 酒飯論絵巻』「絵巻」の時代から「風俗画」の時代へを読み進める間中、楽しく過ごさせていただいた。
時間を見つけて、所蔵の絵巻物全集の読みを再開したいと思う。
また時々は美術史を読むのも良いものだと感じた。
『日本絵画の転換期 酒飯論絵巻』「絵巻」の時代から「風俗画」の時代へ
食と酒を楽しむ姿を赤裸々に描いた『酒飯論絵巻』は、日本美術、それを支える社会が大きく変わるターニングポイントを映している。
著者 並木 誠士 著
出版年月日 2017/08/04
判型・ページ数 菊判変・192ページ
定価 本体3,000円+税
プロローグ――日本絵画史の見直し・試論――
第Ⅰ章 《酒飯論絵巻》の概要
第Ⅱ章 絵巻の時代
Ⅱ―1 絵巻とは?
Ⅱ―2 やまと絵と四大絵巻
Ⅱ―3 絵巻の諸相
Ⅱ―4 絵解と画中詞
Ⅱ―5 小括――「絵巻の時代」の終焉
第Ⅲ章 風俗画の時代
Ⅲ―1 「風俗」を描くこと
Ⅲ―2 新しい画題の成立――洛中洛外図
Ⅲ―3 近世初期風俗画の展開
Ⅲ―4 江戸時代――浮世絵への展開
Ⅲ―5 小括――「風俗画の時代」の幕開け
第Ⅳ章 ふたたび、《酒飯論絵巻》
Ⅳ―1 「酒飯論絵巻」研究史
Ⅳ―2 再考:《酒飯論絵巻》の作者と制作年代
Ⅳ―3 《酒飯論絵巻》の特質
エピローグ――《酒飯論絵巻》の絵画史的位置――
著者について
京都工芸繊維大学教授
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
並木/誠士
1955年東京都生。徳川美術館学芸員、京都大学助手、京都造形芸術大学助教授を経て、京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科教授、同大学美術工芸資料館長