67: 『(霊媒の話より)題未定』安部公房初期短編集
より、 「白い蛾」「悪魔ドゥベモオ」「憎悪」
『(霊媒の話より)題未定』(安部公房初期短編集)より、 「白い蛾」「悪魔ドゥベモオ」「憎悪」を読む。
「白い蛾」に対して いったんはずいぶん長い感想を書いていたが、消去。
力不足のためにあまり感想の言葉を持たないので、ここではわたくしの作品に対する感想は今回も省略させて頂いた。
三編共に 面白かったとだけ、書いておきたい。
あまりにも短いので 「憎悪」より 一部分だけ抜き出して書いておこう。
「憎悪」
ーーーつまりそんな具合だ。君は俺をきぶんでしか捉えていないのだ。何度も言ったじゃないか、あらゆる言葉が存在し意味を持ち、存在が存在し、意味が意味を持つ実存の了解がどんなに大きな人間の保証であるか・・・・・・俺のことは俺にとっても無なんだ。僕には矛盾というものが無い、存在の抵抗も無い。君の言い分によれば人間を一番愛しているのは回虫(かいちゅう)だの條中(じょうちゅう)だのという寄生虫だと言うことになるじゃないか。奴らは(…省略)。俺はどうにか斯うにか現代の人間を夜の中に追い込んだが,人間が斯うまで懶け者で臆病なものだとは考えていなかった。想像と手を自分の絵の具のようにまぜ合わせるのだな。懶け者の世界は,だからいつも灰色なんだ。しかし君までがそんなじゃ・・・・・・勿論君は灰色でない世界を知っている、だからこそ君に頼っているんだ。存在が存在である意味が始めて人間を想像するんだ。何故君は悪魔になりたいと願う在り方の意味を了解しようとしないのだ。
(P.179)
若き安部公房は、すでに安部公房そのものだった! 没後二十年記念出版――。
昨年、新たに発見された幻の短編「天使」をはじめ、十九歳の処女作「(霊媒の話より)題未定」など、戦中から戦後にかけて執筆されながら、作家生前は発表されなかった十編に加え、敗戦で混乱する奉天を舞台にした稀少な一編「鴉沼」を収録。やがて世界に名を馳せる安部文学の、まさに生成期の息吹きを鮮烈に伝える短編集。(新潮社公式HPより)
安部公房
新潮社
2013/01/22
295ページ
1680円
題未定(霊媒の話より)
老村長の死
天使
第一の手紙〜第四の手紙
白い蛾
悪魔ドゥベモオ
憎悪
タブー
虚妄
鴉沼
キンドル氏とねこ