39: 『古代オリエント集』筑摩世界文学大系1 から 「二人兄妹の物語」
杉勇・三笠宮崇仁編、昭和53年4月所収
杉勇、屋形禎亮訳
出版社:筑摩書房
2900円(現在15000円くらい)
『古代オリエント集』筑摩世界文学大系1 から 「二人兄妹の物語」を読む。
まずは解説。そのあと、物語。
解説はたいへんわかりやすく、物語の話の展開は面白い。
兄&弟 畑仕事
弟、父のような存在の兄の家に種を取りに帰る
母のような存在の姉(兄嫁)「小一時間、一緒に云々」
弟「行けません!あなたは母のような方ではありませんか。」
姉(兄嫁)、夫(兄)に告げ口
家に帰ろうとしている音迂路に、兄が弟を殺そうとしている事を告げる。
それを教えたのは、牛
兄 弟を殺す為、追いかける
弟、自分の○を池に切り落とし、「ワタシは兄のところへは、帰りません」と、真相を打ち明ける
わたしは糸杉の上に心臓をおき、空の身体で云々、もし糸杉が切り倒され、わたしの心臓が地に着くような事があれば、七年間探して、見つかったならば、神聖な水の入った瓶にいれて下さい。
兄、弟を哀れに思う
兄、家に帰ると即座に妻を殺し、犬にくわせる。
心臓が空になった弟に美しい嫁
糸杉を切り倒す
弟、心臓がないまま、倒れる(死ぬ)
兄心臓を探す。
三年目、種を見つける、それはまさしく弟の心臓だった
兄
神聖な水のはいった瓶に入れる
種は膨らみ、心臓に戻る
瓶の水ごと、心臓を横たわった弟に飲ませる
神として牛の姿で蘇る
王の嫁実は弟の嫁
真実を打ち明けられる事を恐れ、牛の肝を食べたいと申し出る。
王、悲しみを飲み込んで、承諾
犠牲祭のように、首がかっ切られる
神聖な牛はニ本の木に姿を変える
王は喜ぶ
真実を打ち明けられる事を恐れ、妻は王に 二本の木で家具を作って欲しいという
王、悲しみながらも承諾
家具を作る最中にでた鉋屑が、妻の口から体内に入る。
即座に懐妊
子が夫である事を告げる
王は死ぬ
妻は殺される
夫は王となり、三〇年間生きる
夫(弟)が死ぬと、兄が王の座を継ぐ。
なんだか色々な話がつまった、どこかで聞いたような「二人兄妹の物語」です。
このお話は3000年前にパピルス(エジプトの紙)に記されていたそうです。
二人の妻がそれぞれの夫(兄、弟)を裏切り、最後は兄弟めでたしのお話
男性中心の社会ですね。
「二人兄妹の物語」を読んでいると話の展開の面白さから、場面場面の動きがイメージとして壮大にに広がり、オペラ的発声のミュージカルで台詞や様子が聞こえてきます。
もしかすれば、古代エジプトのお話なので、『アイーダ』のイメージが影響しているかもしれません。
「二人兄妹の物語」を読んだ後に『図説 古代エジプト生活誌 上巻』 (原書房)を読み始めました。
すると『図説 古代エジプト生活誌 上巻』 のごくはじめの方に「二人兄妹の物語」が引用されていました。
古代エジプトでは口からでも、懐妊すると思われていたそうなのです。
「二人兄妹の物語」では牛が二度出てきます。
殺されようとしている事を、弟に知らせる。
神聖な牛に姿を変えて、再生する
古代エジプトでは、妊娠した女性を牛は神で、雄牛で描く例がある
(二つ角のある動物は、女性の子宮と考えられていた。また、子宮を碓で現す事もあったという。)
この物語を読むと
自分の○を池に切り落とす
懐妊する神聖なる雄牛になる為には、自分の○をそぎ落とし、神聖なる水に戻し、或は神に捧げ、神の存在に近づく必要があったのではないだろうか…
そんな事を考えてしまう。
(何の根拠もありません。全く方向違いかもしれません。
何しろ古代エジプトを軽く読み始めたのは、ここにニ、三日です)
牛に姿を変えた弟は再生に再生を重ねて、裏切り者を処罰し、王となる。