『小林秀雄集』「徒然草」(昭和十七年八月) 筑摩現代文学大系 43 memo
小林秀雄の「当麻」に続き、「徒然草」を読むが非常に短い。
「徒然なる儘に、日ぐらし、硯に向ひて、、、、物狂ほしけれ」はあまりにも有名なフレーズだが、小林ひでをはその言葉の重要性から取り上げる。
「徒然草」は教科書にも出てきて、出だしのところは多くの方が知っていらっしゃると思う。
実際に私も「徒然草」は岩波で何度かは読んだことがある。
興味深いので、笠間書院刊の「徒然草」を購入していたが、情けないことに、未読。
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笠間書院刊「徒然草」 吉田幸一、大西善明 編
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笠間書院刊「徒然草」
静喜堂文庫蔵 正轍筆
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永享三年三月廿七日
非人 正轍(花押)
さてさて、小林秀雄の「徒然草」に細々とて、戻りたい。
「徒然なる儘に、日ぐらし、硯に向ひて、、、、物狂ほしけれ」
徒然草の名は、後人の思いついたもの(通例)
どうも思いつきが、うますぎたようである。 (372)
兼好の苦い心が、洒落た名の後に隠れた。
一片の洒落もずゐ分色々なものを隠す。
、、、、、、、、、、、、、、、、、
徒然草という文章を、遠近法を謝らずに眺めるのは、思いのほかの難事である所以に留意することは良いことだと思う。(372)
「つれづれ」という言葉は、平安時代の詩人等が好んだ言葉の一つ。
誰も兼好のように辛辣な意味を、この言葉に見出した者はいなかった。
「徒然わぶる人は、いかなる心ならむ。紛るゝ方なく、唯独り在るのみこそ良けれ」
「紛るゝ方なく、唯独り在るのみこそ良けれ」
「徒然わぶる人」は徒然を知らない、やがて何かで紛れるであろう。
わぶるとは (ウェブ 古語辞典)
【侘ぶる】わびしく思う。 気落ちする。
わぶとは (古語日本語)
わぶ【侘ぶ】
1 辛と思う。嘆く。悲観する。
2 困る。当惑する。
3 心細く感じる。
4 おちぶれる。貧乏になる。
5 許を請う。
6 閑寂な生活をする。 (補助動詞)~しかねる。
兼好は徒然なる儘に書いたのであって、徒然わぶるままに書いたのではない。(373)
徒然ワブルままに書いたのではないのだから、書いたところで彼の心が紛れたわけではない。紛れるどころか眼が冴えかへつて、いよいよものが見え過ぎ、物が解り過ぎる辛さを「怪う物狂ほしけれ」と言ったのである。
兼好は誰にも似てゐない。よく引き合いに出される長明などは一番似てゐない。
歌集(巻物) 京都国立博物館
アカアカヤ アカアカアカヤ アカアカヤ アカアカヤ アカアカの月 長明
仮名文字ばかりの歌が並ぶ中、鴨長明の和歌は突然カタカナで書かれていた。
本当に真っ暗な夜空の中、赤い月が光光と眩しいくらいに照り出しているように感じた。
この歌は今も私の心に刻まれている。
この歌を考えると、兼好は少し違うかなとは感じる。
彼には常に物が見えている、どんな思想も意見も彼を動かすに足りぬ。(373)
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筑摩現代文学大系 43『小林秀雄集』「徒然草」(昭和十七年八月)
『人と文学 小林秀雄』 細谷博著 勉誠出版
みなさま、みてくださいまして、誠にありがとうございます。