『明暗』1 夏目漱石全集 8 筑摩全集類聚 昭和46年
取り急ぎ図書館に行き、筑摩全集類聚の『明暗』を借りる。
だが、某優良書には新潮文庫のページが記されていたので、時々利用する日本の古本屋で急遽頼むことにした。
『明暗』は読んだが記憶にない。
漱石は小学生、中有学生の頃に有名なものだけはほとんど読んでいるが、漱石の小説内での書生に対しての態度の描き方に引っかかりを持ってしまったことがある。
しかし、今更に思う。
こういった細かなところで漠然とした感情を生じさせるのではなく、物事の本質を捉えなければいけないのではないか、と。
漱石に対しコンプレックスを持ち続けて行きてきたが、家族はそんな私を横目に、毎晩のように全集に明け暮れていた。
長年持ち続けた失態から、今、解き放たれるかもしれないという期待は大きい。
とりあえず、文庫本が届くまでは筑摩全集類聚で読む。
『明暗』は以下のように始まる。
医者は探りを入れた後で、手術台の上から津田を下ろした。
「矢張穴が腸まで続いてるんでした。此前探った時は、途中に瘢痕(はんこん)の隆起があったので、ついそこが行き留りだとばかり思って、ああ云ったんですが、今日疎通をよくする為に、其奴(そやつ)をがりがり掻き落として見ると、まだ奥があるんです」
「そうして夫(それ)が腸に届いているのですか」
私はこういた始まり方の作品は好きだ。
加えて、医学的な書き方をされた作品も好きである。
木木高太郎の『網膜脈視症』などは好きでたまらない。
ちなみに木木高太郎の作品も、全集で読んでいるがただ読んだだけで、全くわかってない。
話を戻そう。
医者は探りを入れた後で、手術台の上から津田を下ろした。
「矢張穴が腸まで続いてるんでした。此前探った時は、途中に瘢痕(はんこん)の隆起があったので、ついそこが行き留りだとばかり思って、ああ云ったんですが、今日疎通をよくする為に、其奴(そやつ)をがりがり掻き落として見ると、まだ奥があるんです」
「そうして夫(それ)が腸に届いているのですか」
上はさらりと書き出されているが、実際には恐ろしい。
それをシャァシャァと述べる。
「そうして夫(それ)が腸に届いているのですか」
とは、誠に素っ頓狂である。
まだ、物語の導入にも達してないが、『明暗』は読者の心を鷲掴みにする。
「そうして夫(それ)が腸に届いているのですか」
と。
ここから先は、書き留めず、少し先に読み進む予定です。
『悪夢』1857年
フレディック・サンディーズ
ビクトリア・アンド・アルパート博物館
あべのハルカス美術館「アリス展」にて
『明暗』1 夏目漱石全集 8 筑摩全集類聚 昭和46年 332ページ
『夏目漱石最後の〈笑い〉 『明暗』の凡常』 細谷博 著 進典社 南山大学学術業書
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