『認知症の人の心の中はどうなっているのか?』
一方、最近のニュース
殺人は悪だが90歳の母を殺す至った65歳女性介護者の根本的原因やそこに至った行政指導の有無などが、知りたいと切に願う。
佐藤眞一著
光文社新書
2018年
292ページ
840円+税
これまでの認知症に関する本とは違う『認知症の人の心の中はどうなっているのか?』と云った視点を変えたタイトルの本を読んで見た。
誠、初めの方は、認知症の方々の見え方や物の捉え方が載っており、興味深く読ませていただいた。
ところが 1/5も過ぎた頃から様子が違う。
一般的認知症の関する内容が書かれていた。
この本でも運動とバランスの良い食事が良いとされている。
運動に関しては海馬が発達し、劣化した部分を補う可能性(要約)について書かれていた。
この本でも認知症の方への理想的接し方が書かれている。
心の底より納得する。
そのようなできた人間やできた家族がマニュアル通り理想論でことを運べてば良いのだが、、、
一方 ここ一日二日前にも、娘が母を殺したという悲惨な事件が報道されていた。
母親90歳、娘65歳。
65歳といえば自分の人生を見つめ直し、生き方を選択して、残りの人生を有意義に過ごしたいと思う時代に突入していることであろう。
ところが、年老いた母親の介護だけの人生に終わると考えると、殺人の良し悪しは別として、追い詰められた女性ばかりを避難することはできないと感じた。
一方、認知症などの本を読んでいると、介護者の認知症患者への接し方の理想論ばかりが述べられている。
行政の手続きの方法はむずがしいとお聞きするし、担当者の腹一枚で、なかなか認定もされない話を多々聞く。
介護で時間を費やし介護で心が弱った人間が行政に突き放され、国は自宅介護を推進し、介護本を介護者の理想論を述べるに過ぎない。
マスコミは母殺しの残虐さのみを報道し、どの局も暗黙の了解かお達しが来ているのかは定かではないが、国の根本的問題点には一切触れようともしない。
殺人は悪である。
だが90歳の母を殺す至った65歳女性介護者の根本的原因やそこに至った行政指導の有無などが、知りたいと切に願う。
理想論の書物ばかりが出ても、介護者のなんの心の支えにもならない。
介護研究者や行政が介護者のあり方を唱えるのであれば、孤独に介護する介護者に対しての専門家や国のあり方をも唱えるべきだと感じる。
世の中、狂っている。
以下はデーターベースより引用
「認知症になって記憶が失われても、心が失われるわけではない」とは、よく聞くフレーズです。では、その「心」とは、一体どのようなものなのでしょうか? それを本書では、できる限り具体的に示したいと考えています。心の内を知り、その人の内なる世界を尊重することが、認知症の本質である「生活の障がい」と「孤独」の軽減につながり、幸福につながると信じるからです。
――日常会話によって認知症の人を知り、会話を増やすためのツール「CANDy」とは。認知症の人の孤独とプライド、そして苦しみとは。最新の研究成果に基づく、認知症の人の心の読み解き方。
はじめに
第1章 認知症の人との「会話」を取り戻す
第2章 認知症の人のコミュニケーションの特徴を知る
第3章 認知症の人が見ている世界を知る
第4章 認知症の人の苦しみを知る
第5章 共によりよく暮らす方法を知る
佐藤眞一
1956年東京都生まれ。大阪大学大学院人間科学研究科臨床死生学・老年行動学研究分野教授、博士(医学)。早稲田大学大学院文学研究科心理学専攻博士後期課程を終え、東京都老人総合研究所研究員、明治学院大学文学部助教授、ドイツ連邦共和国マックスプランク人口学研究所上級客員研究員、明治学院大学心理学部教授を経て、現職。前日本老年行動科学会会長、日本応用老年学会常任理事、日本老年社会科学会理事等を務める。著書に『ご老人は謎だらけ 老年行動学が解き明かす』(光文社新書)、『認知症「不可解な行動」には理由(ワケ)がある』(SB新書)、『仕切りたがる人 相手を見抜くタイプ心理学』(マイコミ新書)、『「結晶知能」革命 50歳からでも「脳力」は伸びる!』(小学館)、『後半生のこころの事典』(CCCメディアハウス)、共著に『老いのこころ 加齢と成熟の発達心理学』(有斐閣アルマ)、『老いとこころのケア 老年行動科学入門』(ミネルヴァ書房)、『エイジング心理学 老いについての理解と支援』(北大路書房)など多数。