正月 八坂神社『翁』
映画『北の零年』 3,7★/5 2004年 監督:行定勲 脚本:那須真知子 吉永小百合 石橋蓮司 柳葉敏郎 豊川悦司 石原さとみ 香川照之 平田満 渡辺謙 他
映画『北の零年』を見た。
私のこの映画に対する満足度は一応3,7★/5としたが、下のように分けて記録したい。
筋書き 2,8★
配役 4,3★
全体 3,7★
まず、吉永小百合が美しい。
美しいが、渡辺謙との年の差が目につく。
オープニングからしばらくは歴史映画のようで、どこぞの局のドラマを思い浮かべる。
ただし、役者たちは、ドラマに対し熱意がこもる。
石橋蓮司や柳葉敏郎などは始終いい意味で手抜かりなく力を入れて本腰で演じておられる。
石橋蓮司や柳葉敏郎の表情や動きは絶えずかっこよく視聴者の心を捉える。
吉永と渡辺の濡場がある。
普通は俳優は除痛を美しく見せる場合が多い。
だが、この映画に至っては、渡辺の顔の表情がえらくエロい。
映画やドラマの濡場で、こういった男性俳優の表現を見たのは、、私は初めてである。
何しろエロすぎる、、、、と感じていたら、渡辺の役所の変わり身のエグさで納得。
『命を助けてもらったとて、妻を裏切るか、、、』
『他で結婚したなら、せめて待たせている妻子に知らせなさいよ。』
『開拓地!!!で裏切り知らせず、5年はひどすぎる。』
『結婚を知らせてないなら最後まで知らせなさんな。』
『お役柄とはいえ、馬の件は他に任せる引きであろう。』
『元妻と実子に対し冷酷すぎる。』
と釈然としない気持ちを映画を見ながらぶつぶつといっていると、家族曰く、
「映画だから、、、、」
その言葉を聞き、納得したことにする。
あのエロい夫はエグい男であったのだ。
香川照之の商魂たくましいひどい絵描かれ方の男は、渡辺謙の夫としてのひどさの足元にも及ばないような気がした。
この映画は史実に基づいてが、開拓などの頑張りだけではなく、性を一つのテーマにしている、
言葉を選ぶならば、、愛と言うべきか。
それは直接的なエロスのように表現であったり、プラトニックなものであったり、ややもすると、アガペーに近い表現さえ使われている。
若干哲学的表現を含みたかったのだろうとは感じるが、少し滑り気味である。
上に石橋蓮司と柳葉敏郎の表情の素晴らしさを書いたが、豊川悦司もまた良し!
始終心の通った優しさを描き、観客の心をを惹きつける。
豊川悦司の存在は大変大きく、芸術作品に仕上げたかった監督の意図する映画から3Dの世に飛び出した大変格好の良い劇画のような場面がある。
ここの部分は素晴らしく格好が良く、今も余韻に浸っているが、この映画の全体像からはかけ離れた違った場面が展開される。
豊川悦治は良いのだが、浮き出た場面を描く演出を考えると一体何を求めてこの映画を作っているのかと言いたくならないでもない。
かといって、豊川悦司のあの場面は歌舞伎でいうと山場の見栄のようで大変好きなので、豊川悦司特集映画を作っていただきたいと感じる。
表だってないが、大事な一コマ一コマに映し出された平田満の表情が素晴らしい。
文の句読点くらい大切な役割を果たされていた。
子役が小学生の低学年くらいの幼さに見えたが、5年の月日が流れ、石原さとみに変わりずいぶん成長していたのに違和感を感じた。
子役は、許嫁がいたわけだから、私が感じているよりも大きい、12,3歳の役柄を演じていたのであろう。
だが、随分幼く感じた。
渡辺が稲を求め、開拓の地を去る時の子役は、
「お父さん、、、」
と言いつつ口角を上げて笑みを浮かべていたが、これは不自然である。
日本の子役は、いつもいつも口角を上げて笑みを浮かべることが正しい演じかただと思っているのかもしれないが、『オスマン帝国』の子役は父親がさる場面では本気で状態に合わせて演技をしている。
そんなこともあって、子役は随分幼く見えたが、5年の月日でかぐや姫のように成長し美しい可憐な女性に成長していた。
設定は不自然だが、石原さとみの演じかたも好感が持てた。
全体を通して、映画と俳優たちには満足したが、設定や筋書きは釈然としない部分があると感じる。
印象に残った場面は二つ。
吉永と子役が吹雪の中、夫(渡辺)を求めて歩く。
男女ではないが『冥途の飛脚』の道行きのようである。
この表現は美しい。
この場面に移る矛盾は感じるが、それを上回るほどに美しい表現であり、芸術性を感じる。
豊川悦治の終始一貫した母娘に対する思いやり、転じて愛情が素晴らしい。
それを受け止めプラトニックに表現する吉永の愛情の表現も美しい。
この二人がこの映画の質を高める。
満足のいく部分と首をかしげる部分が混在していたが、概ね楽しい時間を過ごし、見終わって満足した。
今回も見たという簡単な記録だけで失礼致します。
監督:行定勲
小松原志乃:吉永小百合
アシリカ(会津藩士・高津政之):豊川悦司
馬宮伝蔵:柳葉敏郎
小松原多恵:石原さとみ、大後寿々花(少女時代)
長谷慶一郎:吹越満
内田:中原丈雄
長谷さと:奥貫薫
友成洋平:田中義剛
窪平:モロ師岡
高岡:榊英雄
中野又十郎:阿部サダヲ
中野亀次郎:藤木悠
長谷すえ:馬渕晴子
川久保栄太:平田満
川久保平太:金井勇太
馬宮雄之介:大高力也
花村莞爾:寺島進
モノクテ:大口広司
エドウィン・ダン:アリステア・ダグラス
殿:忍成修吾
おつる:鶴田真由
堀部賀兵衛:石橋蓮司
馬宮加代:石田ゆり子
持田倉蔵:香川照之
小松原英明:渡辺謙
木下ほうか、戸田昌宏、
山田明郷、大口広司、及森玲子、岡元夕紀子、所博昭 ほか
『北の零年』(きたのぜろねん)は、2004年製作、2005年公開の日本映画。
主演は吉永小百合。
明治3年5月13日(1870年6月11日)に起こった庚午事変に絡む処分により、明治政府により徳島藩・淡路島から北海道静内へ移住を命じられた稲田家と家臣の人々の物語である。
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