映画『美しい星』 (2,9★/5或いは3,4★/5) 三島由紀夫原作(1967) 2017年 吉田大八 (監督) リリー・フランキー (出演), 亀梨和也 (出演)
映画『美しい星』 を見た。
大変面白い部分と、すこしだれた説教くさい部分が見受けられた。
しかし原作は1967に書き下ろされている。
三島由紀夫が今現代に抱える切羽詰まった問題点を、見事に捉え描いていた。
此処で面白く感じるのは、彼の作品が、一方向からのみ見るのではなく、人間がこまねいた温暖化と、自然界の大きな力によってもたらす影響力の二方向から問題を切り取るところ。
映画を見進めるにあたり、どちらの言い分も正論であり、またおかしな部分があり、何が正しいのかはわからなくなる。つまり見方によって多くの捉え方が正論であり誤りとなり得ている点である。
上にも書いたが、この小説は1960年代後半に書き下ろされている。
ちょうどその頃、ショートショートの神である星新一をはじめ多くの小説家が宇宙や地球をテーマにした作品を書き上げていた。
また、ハードロックやグラムロック界でも、宇宙やスターマンなどを取り上げて演奏するグループの多さに驚く。
そんな時代の中で、三島由紀夫もこういった作品を残したの妥当かと、映画を見ながら考えていた。
映画そのものは今ひとつ工夫が欲しかったと感じるが、それでも人の感情や捉え方など、部分的には強烈に面白みを感じる部分もあった。
上に書いたように時代性を考えると、こういった作品が書かれたのは興味深い。
三島の現在にも通じる問題点と捉え方を、吉田大八 監督は映画という形を通して2017年に今一度表現したかったのではないかと考える。
三島由紀夫の異色SF小説を、「桐島、部活やめるってよ」「紙の月」の吉田大八監督が映画化。平凡な家族が突如として「宇宙人」に覚醒する姿を、舞台を現代に置き換えた大胆な脚色で描く。予報が当たらないことで有名なお天気キャスター・大杉重一郎は、妻や2人の子どもたちとそれなりの暮らしを送っていた。そんなある日、重一郎は空飛ぶ円盤に遭遇したことをきっかけに、自分は地球を救うためにやって来た火星人であることを確信。さらに息子の一雄が水星人、娘の暁子が金星人として次々と覚醒し、それぞれの方法で世界を救うべく奔走するが……。父・重一郎役をリリー・フランキー、息子・一雄役を亀梨和也、娘・暁子役を橋本愛、母・伊余子役を中嶋朋子、大杉家に近づく謎の代議士秘書・黒木役を佐々木蔵之介がそれぞれ演じる。
2017年製作/127分/G/日本
三島由紀夫作品『美しい星』
発売日:1967/11/01
大杉家には秘密ができた。一家全員、宇宙人だと自覚したのだ。父は原水爆を憂い米ソ首脳にメッセージを送り、金星人の同胞と称する男を訪ねた娘は処女懐胎して帰ってきた……。対立する宇宙人〈羽黒一派〉との人類救済の是非を巡る論争は『カラマーゾフの兄弟』「大審問官」の章とも比肩する。三島文学の主題がSFエンターテインメントと出会った異色作。
星新一作品 一部【1960年代】
1 人造美人 新潮社/1961.02/短編集
「人造美人 ―ボッコちゃん―」「おーい でてこーい」「生活維持省」「廃墟」「たのしみ」「年賀の客」「包囲」「患者」「雨」「螢」「愛の鍵」「水音」「早春の土」「月の光」「鏡」「天使考」「冬の蝶」「最後の地球人」「食事前の授業」「セキストラ」「空への門」「ツキ計画」「開拓者たち」「宇宙通信」「探検隊」「最高の作戦」「桃源郷」「親善キッス」「信用ある製品」「処刑」
2 ようこそ地球さん /新潮社/1961.08/短編集「来訪者」「狙われた星」「人類愛」「傲慢な客」「弱点」「約束」「友好使節」「霧の星で」「通信販売」「宇宙からの客」「復讐」「待機」「思索販売業」「暑さ」「猫と鼠」「西部に生きる男」「テレビ・ショー」「マネー・エイジ」「デラックスな拳銃」「悪を呪おう」「証人」「最後の事業」「見失った表情」「ずれ・ずれ・ずれ・ずれ」「闇の眼」「小さな十字架の話」「殉教」
*「ようこそ地球さん」は「第一話・不満」「第二話・神々の作法」「第三話・すばらしい天体」のオムニバス構成。『ようこそ地球さん』新潮社(新潮文庫)/1972.06には、それぞれ独立した作品として収録されている。
3 悪魔のいる天国/中央公論社/1961.12/短編集
「合理主義者」「調査」「デラックスな金庫」「天国」「無重力犯罪」「ロケットと狐」「誘拐」「情熱」「お地蔵さまのくれた熊」「黄金のオウム」「シンデレラ」「こん」「ピーターパンの島」「夢の未来へ」「肩の上の秘書」「殺人者さま」「ゆきとどいた生活」「夢の都市」「愛の通信」「脱出孔」「もたらされた文明」「エル氏の最期」「サーカスの旅」「かわいいポーリー」「契約者」「となりの家庭」「もとで」「追い越し」「診断」「告白」「交差点」「薄暗い星で」「帰路」「殉職」「相続」「帰郷」
4 ボンボンと悪夢/新潮社/1962.07/短編集
「椅子」「雪の夜」「処方」「凝視」「夜の道で」「夢の男」「利益」「不運」「症状」「顔のうえの軌道」「友を失った夜」「健康の販売員」「むだな時間」「乾燥時代」「囚人」「白昼の襲撃」「転機」「宇宙のネロ」「オアシス」「賢明な女性たち」「宇宙の指導員」「上流階級」「夜の侵入者」「鋭い目の男」「再認識」「目撃者」「報告」「循環気流」「専門家」「年間最悪の日」「模型と実物」「老後の仕事」「悪魔のささやき」「組織」「報酬」「すばらしい食事」
5 悪魔の挨拶 早川書房(ハヤカワ・SF・シリーズ)/1963.08/短編集
「宇宙のあいさつ」「願望」「貴重な研究」「小さくて大きな事故」「危機」「ジャックと豆の木」「気まぐれな星」「対策」「宇宙の男たち」「愛用の時計」「悪人と善良な市民」「不景気」「リンゴ」「解決」「その夜」「初夢」「羽衣」「期待」「反応」「治療」「妖精」「タイム・ボックス」「景品」「窓」「適当な方法」「運の悪い男」「贈り主」「タバコ」「初雪」「被害」「白い記憶」「救助」「繁栄の花」「泉」「美の神」「ひとり占め」「冬きたりなば」「プレゼント」「奇妙な社員」「砂漠の星で」「夜の流れ」「あとがき」