『人間そっくり』安部公房 新潮文庫 1976
『人間そっくり』
安部公房
新潮文庫 昭和41年発行
あー4−12
1976
194ページ
平成28年 44版
460円+税
学生時代に複数回読んだ安部公房の『人間そっくり』を一気読みした。
やはり、面白い。
ブラックユーモアというだけでは物足りない、安部公房独自の文学における価値観を感じ取ることができた。
安部公房の小説は、当時の全集や文庫本、単行本を含め殆どを所有しており、全てを複数回読んでいたが、齢を重ねて安部公房を読み返すと、若かりし高校生、大学生の頃にこういった作品が好きだったのだと懐かしく感じた。
『人間そっくり』気になる部分を抜粋
そう、ぼくはなんとしてでも知りたいのだ。いったい、この現実は、寓話が実話に負けたせいなのか。それとも、実話が寓話に負けたせいなのか。法廷の外にいるあなたに、お尋ねしたいのです。いまあなたが立っている、その場所は、はたして実話の世界なのでしょうか、それとも、寓話の世界なのでしょうか・・・・・・・・・。
《こんにちは火星人》というラジオ番組の脚本家のところに、火星人と自称する男がやってくる。はたしてたんなる気違いなのか、それとも火星人そっくりの人間なのか、あるいは人間そっくりの火星人なのか? 火星の土地を斡旋したり、男をモデルにした小説を書けとすすめたり、変転する男の弁舌にふりまわされ、脚本家はしだいに自分が何かわからなくなってゆく……。異色のSF長編。(新潮文庫より引用)