竜田川
『池の水 ぜんぶ“は” 抜くな』池田清彦監修 月刊つり人編集部編 つり人社 2019
外来種を多角的に捉えられた『池の水 ぜんぶ“は” 抜くな』は、外来種のみの問題ではない。
現在抱えるコロナにおける医療崩壊問題の命の選択を考えると、人ごと(いや、外来種ごと)ではない。
池田清彦氏が語る第7章 外来種問題の現在での命の選別は許されるのかでは、ついつい深刻に考えてしまう。
池田清彦氏の「外来種駆除については、はっきりと言ってしまえばナチスの優生思想に通じる」とキッパリと言い、その上で「命の洗濯はしないほうがいいんです」と述べている。
尤!
多くの印象に残る部分はあったが、上以外でもう一つ。
令和の「令」は『万葉集』からの引用だということは、記憶に新しい方も多いと思います。
『万葉集』「梅花の歌」歌三十二首并序 原文「梅披鏡前之粉」(梅は鏡の前の美人が白粉白粉で装うように花が咲き云々)から引いたものだが、「梅」もまたしかり。
カミツキガメやブラックバスを見て外来種だから排除しなければならないという人はいても、美しさや身の恵みをもたらす梅を見て、「全部抜かねばならない。」という人はいないであろうと、著者は云う。
尤!
ことごとく納得がいく。
読みやすい。しっかりとした内容の本であった。
外来種問題は「ケース・バイ・ケース」で考える必要があるのではないか。共存可能なら共存していくのが、今後のありかたではないか−。外来種の駆除について考える。池田清彦が語る「外来種問題の現在」
人間の都合で持ってきた生きものを、同じく人間の都合で、今度は駆除する……。
外来種というのは、本当に駆除すべきワルモノなのか?
ブラックバスやコイを駆除するため池の水が抜かれた後、酸欠で口をパクパクさせる魚たちは、私たちに何かを訴えているように思えてなりません。
本書では、近年注目されている外来種問題について考えます。
この問題に詳しい池田清彦先生、岸由二先生らに取材を行ない、まとめました。
外来種は、なぜこれほどまでに嫌われているのか?
彼らを根絶した先に、いったい何があるのか?
そしてそもそも、外来種は完全にいなくなったほうがいいのか?
そして、単に外来種だからといってひとくくりに駆除することは、差別につながるのではないか……?
身近に棲む生きものたちについて、改めて考えてみるきっかけを作る一冊です。
目次
第1章 外来種と在来種の境界線
第2章 なぜ外来種はワルモノにされるのか?
第3章 外来種を駆除して何を守るのか?
第4章 人が手を加えるのはそこまで悪なのか
令和元年に思う「梅」のこと
第5章 必要なのはケース・バイ・ケースの対応
第6章 群馬県邑楽町に見る外来魚駆除の現実
第7章 池田清彦が語る外来種問題の現在
命の選別は許されるのか