『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 10 高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門
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三つ出る程ふかい/\と。いひ立れたふたりの。中つれ立て参らぬも
みんな こな様のいともさやへ。人にそだてれけしかけられ、何じやの。わしが
心ハせいもんかうじやと。ひつたりざきよせ、しみ/″\さゝやく。色こそ見へね、河与
が悦喜。エ、忝いと、のびた顔付、客ハたまらす、そばに。どうと腰かヶ。小きく
どの、お身ハ聞えぬ。いか成縁にか、会津様程いとしい人ハ。大阪中にないとゆ
つたぞよ。国本のぐハいぶん、身の大けいと。大じの金銀を湯水の様に川遊び。
ちよがらかされにや、来申さない。其男が聞まへで。各のことく、いはない
けりやと/\、通うのむや/\のせき。二度とこゝ申さない。どうだ
/″\とせめせちかぶ。いひあハせし二人のつれ、つか/\と寄て。ヤイもさめ。此
女にこつちへもらふ、置て帰れ。但あづまみやげに、川のどろ水、ふるまるふ
こと。両方より立はさみ、なげてくれんず、つらかまへ。ばんどう者のどうつ
よく。何さぶい/″\共。人おどゝのかいなに色ゝのほり物、せけんくハに事
よせ。ふところの物取と聞及ぶ。びんぼうにすねをなぐれ。腰
ひざも立ぬ遊女ぐるひ。上方のどろ水より、おうしう者のどろ足くらべと。
せいもんかうじや
誓文、こうじゃ
忝い
かたじけない
もさめ
田舎者め
もさ(もっさい、田舎者)
『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作
近松門左衛門 1653-1724
高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門, [出版年不明]
22cm
竹本筑後掾正本
共同刊行:山本九兵衛(大坂高麗橋)
題簽の一部を欠く 虫損あり
和装
印記:文楽蔵,渡邉蔵書
渡辺霞亭旧蔵
早稲田大学デジタルライブラリー ヘ07 04334
『女殺油地獄』 1 上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門 早稲田大学所蔵と東洋文庫所蔵は、同じ。 『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 2 高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門 『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 3 高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門 『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 4 高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門 『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 5 高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門 『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 6 高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門 『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 7 高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門 『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 8 高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門 『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 9 高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門 『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 10 高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門