『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 7 高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門
早稲田大学デジタルライブラリー
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よにしつてゐるか。なぜつれ立て参らせぬと。ばつとのすれハふハと
のり。残多イあつはれけふハ、物の見事なことて。参りのくんじゆに、めをさまさ
せうと。此中から もがいたれと、びぜんやの松かぜめハ 先やくが有て。もらひ
もかしもならぬと、ぬかす。天わうじ屋の小きくめハ、野ざきへハ方がわるい。
どなたの御ことでも参ぬといひ切。それに聞て下され。小きくめが、けふ
会津の客にあげられ。早 天から川御座で参りおつた。いなか者にしま
けてハ此与兵衛がたゝぬ。小きくめが帰るを待て一出入と噺の内から
二人のつれ。うで押もんで、りきみかけ。鬼共組べきいきほひ也。その連ゝ
とふには落ず かたるに、落ると。利口そうにそれが信ゝのくハん音参りか。
けんくハののら参り。かハしやんすお山も、けいせいも。何やのたれと。
親御達かよふ、しつていとしぼや。そちへハ与兵衛めが間がなすきがない、ひた
つておる。異見して下されと、わしらめうと に折入て、くどき事。こちの七左衛門
殿もいやらぬ事ハ有まい。さだめしこな様の心にハ。所そ、あれ野、げに
ちやみせで、わかい女ごのだまで。入子鉢(はち)の様なめん/\の子とものせハ計
参りのくんじゆ
参りの群衆
此中からもがいたれと、
此中から、もがいたれど
方
1 方向。方角。方位。「西の方」「駅の方へ歩く」「声のする方を見る」「九州の方に行く」
2 部門・分野を漠然と指す語。その方面。また、指し示すものをあいまいにするために使う語。
3 二つ以上あるもののうちの一つをとりあげてさす語。
4 どちらかといえばこちらだという部類。
6 四角。また、正方形の一辺の長さ・距離を示す語。
しまけて
しまける
時雨が降る、時雨れる という意味です。
「しまけるまえにでかけよう」 (時雨れる前に出かけよう)
「はれやとおもったらしまけてる」 (晴れだと思ったら時雨が降っている) という風に使われます。
けんくハ
喧嘩
かハしやんす
買わしゃんす
わしらめうと
私等夫婦
入子鉢(いれこばち)〘名〙
大小が順にはいるように組み合わせになった鉢の一組。
普通七個から成る。七つ鉢。 ※俳諧・六百番誹諧発句合(1677)五一番
「八重霞よし野のそこや入子鉢〈如流〉」
『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作
近松門左衛門 1653-1724
高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門, [出版年不明]
22cm
竹本筑後掾正本
共同刊行:山本九兵衛(大坂高麗橋)
題簽の一部を欠く 虫損あり
和装
印記:文楽蔵,渡邉蔵書
渡辺霞亭旧蔵
早稲田大学デジタルライブラリー ヘ07 04334
『女殺油地獄』 1 上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門 早稲田大学所蔵と東洋文庫所蔵は、同じ。 『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 2 高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門 『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 3 高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門 『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 4 高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門 『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 5 高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門 『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 6 高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門 『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 7 高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門