『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 5 高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門
早稲田大学デジタルライブラリー
5
もときし京ばしや、のだのかた町、やまと川。爰ハ名にあふ
じやみやうの松御代長久のおか山を。歌にハしのびの おか
ともよみ。さらゝ山口 一ツばし、わたせすくふ、御くハんりき。
むりやう むへんのじゆふくかく、じげんじ、しゆしやう、ねび
くハんおん。しんとくだうしやの、御ちかひ。とふもかたるも
ゆくふねも。かちゞひらふも、もろともに。まよひを
ひらく こしあふぎもたうに。ねんじやを 「くりかへす
所をとへバ、本天満町、まちのはゞさへ ほそ/″\の、柳腰、やなぎ
かみ 、とろり、とせいも たね油。ばいくハ紙こしゑの油、夫ハ。でし
まや七衛門、妻の野崎のかい帳参り。婦ハ九ツ三人娘だく手。
引手に見返る人も。子持とハ見ぬ花さかり。吉野の吉の字
をとつて、お吉とハたが名付けん。お清ハ六ツ中娘。かゝ様、ぶゞが
のみたいも、をりふし そばの出ちや屋見せ。爰かります、と、やすらひ
ぬ。是も同町、すぢむかひ。かハちや与兵衛、まだ二三、親がゝり。
爰(ここでは、此処と読まず、すえ と読ませている。)
①ここに。ここにおいて。
②かえる。とりかえる。「爰書」類換
③ゆるい。ゆるやか。「爰爰」
御くハんりき。
御願力
むりやう むへん(無量無辺)
〘名〙 物事の程度や量がはかりしれないこと。はてしないこと。
※菅家文草(900頃)四・懴悔会作「无量无辺何処起、自身自口此中臻」 〔法華経‐序品〕
じゆふくかく じげんじ しゆしやう ねびくハんおん。
聚福閣 慈眼視 衆生 念彼観音
観音経の中の最後にある一節
具一切功徳 一切の功徳を具し
慈眼視衆生 慈眼をもって衆生を視(み)たもう
福聚海無量 福聚の海は無量なり
是故応頂礼 是の故に応(まさ)に頂礼(ちょうらい)すべし
しんとくだうしや
身得度者
観音経
應以聲聞身得度者(おういしょうもんしんとくどしゃ)
とろり、とせいも たね油
とろり渡世も種油
いよいよ『女殺油地獄』らしくなってきたよ^^
ばいく
梅花
でしまや七衛門、妻の野崎のかい帳参り。
豊島屋(でしまや)七衛門、妻の野崎の開帳参り。
いよいよ豊島屋七衛門の妻が赤子を抱き、5,6歳の子を連れて、舞台登場となる^^
会場の観客、役者の拍手といった場面である。
近松の浄瑠璃本では
婦ハ九ツ三人娘だく手 とある。
子持とハ見ぬ花さかり
子持ちとは見(え)ぬ花盛り
出ちや屋見せ。
出茶店
やすらひぬ
休らいぬ
『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作
近松門左衛門 1653-1724
高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門, [出版年不明]
22cm
竹本筑後掾正本
共同刊行:山本九兵衛(大坂高麗橋)
題簽の一部を欠く 虫損あり
和装
印記:文楽蔵,渡邉蔵書
渡辺霞亭旧蔵
早稲田大学デジタルライブラリー ヘ07 04334
『女殺油地獄』 1 上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門 早稲田大学所蔵と東洋文庫所蔵は、同じ。 『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 2 高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門 『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 3 高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門 『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 4 高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門 『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 5 高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門