『源氏物語』「桐壺」一冊 - 4(四丁表) 紫式部著 三条西家旧蔵 三条西実枝(写)
4(四丁表)
うなりゆくに似て、いとはしたなきこそ、おほ
かれと、かたしきなき御こゝろはへのたくひ
なきをたのみにて、まよひあひ給、ちゝの大納
言ハなくなりて、はゝ きたのかたなん、いにし
へのほ人のよしあるにて、おやうちくし、さしあ
たりて世のおほえ、はなやかなる御かた/″\
にもおとらす、なにことのきしきをも も
てなし給けれと、とりたてゝ はか/\しき
御うしろみししなけれは、ことある時ハなを
よりところなく、こゝろを細けなりたき
大納言
1 律令制で、太政官 (だいじょうかん) の次官。大臣に次ぐ官で、正三位相当。大臣とともに政務に参与し、大臣不参のときは代行した。
亜槐 (あかい) 。亜相。おおきものもうすつかさ。
2 明治初期の太政官制における官職。左右大臣・参議とともに太政官を構成した。
3 「大納言小豆 (あずき) 」の略。
おやうちくし
親うち具し
具す
[一]自動詞サ行変格活用 {語幹〈ぐ〉}
①いっしょに行く。連れ立つ。従う。
出典大和物語 一四四 「この在次君(ざいじぎみ)の、ひと所にぐして知りたりける人」
[訳] この在次君が、同じ場所に連れ立っていて知っていた人が。
②連れ添う。縁づく。
出典大鏡 師輔 「かの大臣(おとど)にぐし給(たま)ひにければ」
[訳] (その女御(にようご)は、)あの大臣に縁づきなさったので。
③備わる。そろう。
出典源氏物語 蛍 「人ざま容貌(かたち)など、いとかくしもぐしたらむとは」
[訳] 人柄や顔かたちなど、たいそうこれほどにも備わっていようとは。
[二]他動詞サ行変格活用 活用{せ/し/す/する/すれ/せよ}
①連れて行く。引き連れる。伴う。
出典平家物語 九・木曾最期 「木曾殿の最後のいくさに、女をぐせられたりけりなんど言はれんことも、しかるべからず」
[訳] 木曾(義仲(よしなか))殿が最後の合戦にまで、女をお連れになっていたなどと言われるのは、残念である。
②備える。そろえる。添える。
出典竹取物語 ふじの山 「かの奉る不死の薬に、また、壺(つぼ)ぐして」
[訳] あの(かぐや姫から帝(みかど)に)差し上げた不死の薬に、また壺を添えて。
ことある時ハ
事ある時は の事
重要だという場合のことがある場合は。
ここでは、「あとみし」の「し」の強調。
早稲田大学図書館 (Waseda University Library)
ヘ02 04867 0051
三条西家旧蔵
三条西実枝(写)
書写年不明
54冊 25cm
三条西家旧蔵