『源氏物語』 一冊 - 4(三丁裏) 紫式部著 三条西家旧蔵 三条西実枝(写)
4(三丁裏)
なりゆき、ものこゝろほそけにさとかちなる
を、いよ/\「あかすはれなるもの」に、おほ
ほして、人のそしりをも え、はゞからせた
まはす、世のためしにもなりぬへき 御も
てなしなり、かんたちめ、うへ人なとも
あいなくめをそはめつゝ、いと、まはゆ
き人のをこりにこそ、世も見たれあし
かりけれと、やう/\あめのしまにも
あらきなう人のもてなやみくさになりて
楊貴妃のためしもひきいて、川へ
さとかちなる
里がちなる
実家に籠ることが多くなること。
「あかすはれなるもの」
一段と。「おほし」にかかる。
はゝからせた(憚る)
[動ラ五(四)]
1 差し障りをおぼえてためらう。気がねする。遠慮する。
「世間体を―・る」「他聞を―・る」「だれにも―・らず自由に生きる」
2 幅をきかす。増長する。いばる。「憎まれっ子世に―・る」
3 いっぱいに広がる。はびこる。
「一間 (ひとま) に―・るほどの物の面 (おもて) 出で来てのぞき奉る」〈平家・五〉
はゞからせたまはす
憚らせ給わす
かんたちめ
上達部(かんだちめ)名詞
公卿(くぎよう)。
大臣・大納言・中納言・参議、及び三位(さんみ)以上の者。
上級の役人。「かんだちべ」とも。
出典今昔物語集 三一・三三
「しかる間、その時のもろもろのかんだちめ・殿上人(てんじやうびと)、消息(せうそく)をやりてけさうしけるに」
[訳] そのうち、その当時の多くの上達部、殿上人たちが手紙を送って求婚したが。
うへ人
上名 名詞
①「てんじゃうびと」に同じ。
出典源氏物語 桐壺 「上達部(かんだちめ)・うへびとなども、あいなく目をそばめつつ」
[訳] 上達部や殿上人なども、みな気に入らなくて目をそむけて。
②天皇付きの女房。
③「てんじゃうわらは」に同じ。
早稲田大学図書館 (Waseda University Library)
ヘ02 04867 0051
三条西家旧蔵
三条西実枝(写)
書写年不明
54冊 25cm
三条西家旧蔵