恩頼堂文庫旧蔵本 『仁勢物語』 64 二十七丁裏 と、『伊勢物語』岩波古典文学大系9
富田高至 編者
和泉書院影印業刊 65(第四期) 1998年
下 64 二十七丁裏
二十七丁裏
◯をかし、男女、みそうをくらふわさも、えさりけれハ
鞍馬へ参りて、祈りて詠める、
福の神 わか身に金をたひたまへ
貧も富つゝ あるへきものを
毘舎門(ママ)返し
生まれつかぬ かねをハわれも給(ママ)わらし
しハくなりなん ひんもとむへし
『仁勢物語』和泉書院影印業刊
鞍馬へ参りて、祈りて詠める、
福の神 わか身に金をたひたまへ
貧も富つゝ あるへきものを
毘舎門(ママ)返し
生まれつかぬ かねをハわれも給(ママ)わらし
しハくなりなん ひんもとむへし
『伊勢物語』岩波古典文学大系9より写す
吹(く)風に 我が身をなさバ玉簾
ひま求めつゝ いるべきものを
とりとめぬ 風にはありとも玉簾
たがゆるさば かひま求むべき
みそう
味噌汁の雑煮の意味
をかし、男女、みそうをくらふわさも、えさりけれハ
おかし(いことでした。)、男女、味雑を食らう技も、得ざりければ
鞍馬へ参りて
鞍馬の毘沙門天
金をたひたまへ (金をたび給え)
金を与え給え(授けてくださいませ)
たひ(たび)
授けてください
毘舎門(ママ)
毘沙門
毘沙門天の事
[1] (Vaiśravaṇa の音訳)
① =びしゃもんてん(毘沙門天)
※仁王般若経疏(8C中か)上一「北方毘沙門、此云二多聞主一」
② 狂言。大蔵流。前半は「毘沙門連歌」と同一で、最後は毘沙門が舞い納める。
[2] 〘名〙 (①の使いといわれるところから) 百足(むかで)をいう。
※雑俳・削かけ(1713)「そりゃそりゃそりゃ・びしゃもん様かかぢはらか」
百足
信貴山朝護孫子寺には百足の彫りやかたどった絵馬が多くある。
人によっては
「お銭(おあし)が出ないように。」とおっしゃる方も多いが、毘沙門天の使いという意味で、毘沙門とは百足をさす場合がある。
物事には多説や多意味がある。人によっても違うことを言う。だから面白い。
給(ママ)わらし
賜わらじ
しハくなりなん
けちんぼになったら
しハく(けち)