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恩頼堂文庫旧蔵本 『仁勢物語』 62 二十六丁表と、二十六丁裏『伊勢物語』岩波古典文学大系9

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恩頼堂文庫旧蔵本 『仁勢物語』 62 二十六丁表と、二十六丁裏『伊勢物語』岩波古典文学大系9

 



富田高至 編者

和泉書院影印業刊 65(第四期) 1998年

 




下 62 二十六丁表と、二十六丁裏

 

二十六丁表

◯をかし、年比つかひたりける女、心、びつちうや

有けん、馬迦なる人のことにつきて、近江國成

ける旅籠屋につかハれて、もとみし人の前に出でゝ

めしくハせなとしける、夜さり、「此ありつる人さまへ」と、

あるしにいひけれハ、おこせたりけり、「われをハ見(ママ)忘

たりや」とて、

   いにしへの にきび(二水編に座)(ニキビ)出づらんさくろ鼻

   こけらくずとも なりにけるかな

といふを、いとはつかしと思て、「いきもせぬ」とゐたるを

 

二十六丁裏

なと、「息もせぬ、」といへハ、「水はな(さんずいへんに、夷)のたるに目もわろく、

物いわれす」といふ、

   これやこの われにあふみのかゞみ山

   とらへハすれと まじめなる顔

といひて、足袋脱て、とらせけれと、素足にて逃

にけり、いつちいぬらん、ともしらす

 

 

『仁勢物語』和泉書院影印業刊       

    

   いにしへの にきび(二水編に座)(ニキビ)出づらんさくろ鼻

   こけらくずとも なりにけるかな

 

   これやこの われにあふみのかゞみ山

   とらへハすれと まじめなる顔

 

 

『伊勢物語』岩波古典文学大系9より写す

 

   いにしへの にほひはいづら櫻花

   こけるからとも なりにける哉

 

   これやこの 我にあふみをのがれつゝ

   年月ふれど まさりがほなき

   

 

年比

 年頃

 

馬迦

 馬鹿

 

びつちう(岩波古典文学大系では、意味は不詳とされている)

 越中 ( ゑつちう ) を 備中 ( びつちう )で無い事は確かである。

 

 び 美

 ちう (土、地)

 名詞

 ①大地。地面。土の上。

 出典竹取物語 かぐや姫の昇天 「つちより五尺ばかり上がりたる程に」  [訳] 地面から五尺ほど上がったあたりに。  

 ②土。土くれ。

 ③醜い容貌(ようぼう)のたとえ。

  出典源氏物語 蜻蛉

 「御前なる人は、まことにつちなどの心地(ここち)ぞするを」

  [訳] 御前にいる人は、ほんとうに土のように醜い容貌といった気がするのを。

 ④「ぢげ①」に同じ。

  出典落窪物語 一

 「つちの帯刀(たちはき)の、歳(とし)二十ばかり」

  [訳] 地下(じげ)の身分の帯刀で、年齢が二十歳ぐらい。

 

年比つかひたりける女、心、びつちうや

有けん、

 年頃つかいたりける女、心(は、が)びつちうや(美しく、くらいの意味か)有りけん

 岩波古典文学大系では、意味は不詳とされているが、上のように解釈してみた。

 

さくろ鼻

 柘榴(ざくろ)鼻

 ニキビが多く出来た鼻

 花と鼻

 

こけらくず

 杮屑

 

いつち

 (いづこ)どこへ行ったのかわからなくなった。

 

足袋脱て、とらせけれと、素足にて逃

にけり、いつちいぬらん、ともしらす

 足袋脱ぎて、とらせけれど、素足にて逃げ

 けり、いづち(いづこ、どこへ行ったのかわからなくなった)いぬらん、とも、知れず。

 

 


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