恩頼堂文庫旧蔵本 『仁勢物語』 (ここから、下)
富田高至 編者
恩頼堂文庫旧蔵本 『仁勢物語』 49 (49から、下巻) 二十二丁裏と、『伊勢物語』岩波古典文学大系9
和泉書院影印業刊 65(第四期) 1998年
48 二十二丁裏
二十二丁裏
◯をかし男、いもうとのいと赤顔也けるを見をりて、
つらあかみ くさけに見ゆるわか草を
人のむすハん 人おしそおもふ
ときこへける、返し、
はつかしや なとあてことの言の葉そ
めんほくなくも おもひけるかな
『仁勢物語』和泉書院影印業刊
つらあかみ くさけに見ゆるわか草を
人のむすハん 人おしそおもふ
ときこへける、返し、
はつかしや なとあてことの言の葉そ
めんほくなくも おもひけるかな
『伊勢物語』岩波古典文学大系9より写す
うら若み 寝よげに見ゆる若草を
人の結ばん ことをしぞ思ふ
と聞こへり、返し、
初草の などめずらしき言の葉ぞ
うちなく物を 思(ひ)ける哉
くさけに
臭げに
人のむすハん 人おしそおもふ
人の結ばん 人をしぞ思う
はつかしや なとあてことの言の葉そ
めんほくなくも おもひけるかな
恥ずかしや など当て 言の葉ぞ
面目無くも 思いけるかな