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恩頼堂文庫旧蔵本 『仁勢物語』 47 二十二丁表と、『伊勢物語』岩波古典文学大系9

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富田高至 編者

恩頼堂文庫旧蔵本 『仁勢物語』 47 二十二丁表と、『伊勢物語』岩波古典文学大系9

和泉書院影印業刊 65(第四期) 1998年

 




47 二十二丁表

 

二十二丁表

◯をかし男、賃とりてむかんとおもふ、田の草有

けり、されと、この男を無性なりと聞て、つれなく

雇(やとハ)さりつゝいへる、

   大勢の ひくてあまたの草なれば

   御身を得こそ 雇はさりけれ

返し

   おほせいと 何雇さるなにかしと

   つゝと夜まで ひかんすものを

『仁勢物語』和泉書院影印業刊       

   

   大勢の ひくてあまたの草なれば

   御身を得こそ 雇はさりけれ

返し

   おほせいと 何雇さるなにかしと

   つゝと夜まで ひかんすものを

 

『伊勢物語』岩波古典文学大系9より写す

   大幣(おほぬさ)の 引く手あまたになりぬれば

   思へどえこそ 頼まざりけり

返し

   大幣(おほぬさ)と 名こそたてれ てもつゐ(ひ)に

   寄る瀬はありと いふものを

    

田の草

 田に生えた雑草。田草(たぐさ)。 「 -取り」

 

「田の草取り」の発音をアナウンサーでさえ「ーーーー/\」という方がある。

 正確には「田の草取り」の発音は、「ーーーーー\」である。

 

ひかんすものを

 引かんずものを

 

引く手数多の草なれば

 「引く」と「草」

引く手数多

 来てくれと誘う人が多いこと。「技術者が少なくて引く手数多だ」

数多(あまた)

 たくさん。数多く。

 

大幣(おほぬさ)  (名詞)

 ①大串(おおぐし)に付けた「幣(ぬさ)」。

「祓(はら)へ」に用い、終了後、人々がこれを引き寄せて体をなで、罪やけがれを移して川や海に流した。

 出典古今集 恋四 「おほぬさの引く手あまたになりぬれば思へどえこそ頼まざりけれ」

 [訳] (あなたは)大幣のように(女たちから)引っ張りだこになっているから(私が)恋しく思ったところで頼りにできないことだなあ。

 ②引く手あまた。引っ張りだこ。

 多情。移り気。

 ▽①の用例の和歌から生じた比喩(ひゆ)。 出典大和物語 

 一六〇 「おほぬさになりぬるひとのかなしきは」

 [訳] 引っ張りだこになったあなたが気の毒なのは。

 ◆①の用例の和歌は『伊勢(いせ)物語』四十七段にも見える。⇒ぬさ終了後、人々がこれを引き寄せて体をなで、罪やけがれを移して川や海に流した。

 出典古今集 恋四 「おほぬさの引く手あまたになりぬれば思へどえこそ頼まざりけれ」

 [訳] (あなたは)大幣のように(女たちから)引っ張りだこになっているから(私が)恋しく思ったところで頼りにできないことだなあ。

 ②引く手あまた。引っ張りだこ。多情。移り気。

 ▽①の用例の和歌から生じた比喩(ひゆ)。

 出典大和物語 一六〇 「おほぬさになりぬるひとのかなしきは」

 [訳] 引っ張りだこになったあなたが気の毒なのは。

 ◆①の用例の和歌は『伊勢(いせ)物語』四十七段にも見える。⇒ぬさ

 

 

 

 


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