富田高至 編者
恩頼堂文庫旧蔵本 『仁勢物語』 46 二十一丁裏 二十二丁表と、『伊勢物語』岩波古典文学大系9
和泉書院影印業刊 65(第四期) 1998年
46 二十一丁裏 二十二丁表
二十一丁裏
◯をかし男、いとうるハしき友ありけり、片時さらす
相思ひけるを、播磨國明石へいきけるを、いと麗と
思て別にけり、月日へて、鰧魚(シコデ)に名そへて、「あさ
ましくの鯛もくハて、月日へにける事、料理は
し給ひにけんと、いたく思侘くなん、侍る、ナセにある
人の心には、目張るまとゝハ、わすれ給ひへき物によつて、あハれ」
二十二丁表
といへりけれハ、よみてやる、
目張をも鰧魚(シコデ)もえやわしらるゝ
残しなけれハ おもかけに鯛
『仁勢物語』和泉書院影印業刊
目張をも鰧魚(シコデ)もえやわしらるゝ
残しなけれハ おもかけに鯛
『伊勢物語』岩波古典文学大系9より写す
目かるとも 思えなくに話すらるゝ
時しなければ 面影にたつ
片時さらす
片時去らず
鰧魚(シコデ)
竈神,鰧魚
妖怪(カマドカミ),オコゼ (『和漢三才図会』)
東備の田間で瘧を患っている者がいれば、竈神に鰧魚(オコゼ)を供えて祈願すれば、瘧はたちまち癒えるという。
オコゼは竈神の好物なので、他の魚では霊験がないという。 (論文:緒方惟勝)
鰧(トウ、ドウ)
おこぜ
おもかけに鯛
面影に鯛