金々先生造化夢 2 自叙 山東京伝 作 北尾重政 画
寛政6年 版元 蔦屋重三郎
金々先生造化夢 山東京伝 作 北尾重政 画
山東京伝 1761-1816
北尾重政 1739-1820
[江戸] : [蔦屋重三郎],
寛政6[1794]序
黄表紙
一冊 19cm
読んでいるのは、早稲田大学デジタルライブラリー
ヘ13 02056 0012
一丁表
自叙
自叙
李紳憫農詩曰、鋤ノ木日當午、汗滴禾下土、誰知
李紳(りしんのう)憫(あわれむ)農詩(しに)曰(いハく)、鋤ノ木(のぎをすいて)日當(ひごま、あたり)午、汗(あせハ)滴(たる)禾(くわ)下(かの)土(つち)、誰(たれか)知(しる)
盤中飧粒々皆辛苦、と、宣哉 盤中の飧とハ一膳
盤中(ばんちうの)飧(そん)粒々(りゅうりゅう)辛苦(しんくせん)と、宣哉(むべるもがな)盤中(ばんちう)の飧(そん)とハ一膳(いちぜん)
の水漬飯といふことなり、米一粒、布一寸といふとも
の水漬(みづづけ)飯(め)といふことなり、米(こめ)一粒(いちりょう)、布(ぬの)一寸(いつそん)といふとも
何ぞ謾に用んや、其恩 沙弥よりも高し、況衣食
何(なん)ぞ謾(ひたり)に用(もちひ)んや、其(その)恩 (をん)沙弥(しゃみ)よりも高(たか)し、況(いわんや)衣食(ゐしょく)
器財屋室、人間一生日用の、萬物を制し出す
器財(きざい)屋室(おくしつ)、人間一生(にんげんいつしよう)日用(にちよう)の、萬物(ばんもつ)を制(せい)し出(いだ)す
事、幾萬人の辛苦を負けん、量尽がたし、於是偶季
事(こと)、幾萬人(いくまんにん)の辛苦(しんく)を負(をひ)けん、量(はかり)尽(つくし)がたし、於(ここに)是偶(たま/\)季(り)
神が詩を、感ずるのあまり三巻の稗史小説を作り、
神(しん)が詩(し)を、感(かん)ずるのあまり三巻(さんくわん)の稗史(ていし)小説(しやうぜつ)を作(つく)り、
其大意を書して、序となす而已
其(その)大意(たいゐ)を書(しょ)して、序(じょ)となす而已(のみ)
寛政六甲寅孟陬 山 東 京 傳 題 印
寛政六甲寅孟陬 山 東 京 傳 題 印
憫
1 憫む(あわれむ)
2 うれえる(うれふ)
3 もだえる
李紳(りしんのう)憫(あわれむ)農詩(しに)曰(いハく)、
→ 李紳農(りしんのう)憫(あわれむ)詩(しに)曰(いハく)、
鋤
すき
鋤ノ木(のぎをすいて)
芒(ノ木)を鋤(す)いて
日午當(ひごま、あたり)
午
「午」は「忤」(ご:「つきあたる」「さからう」の意味)で、草木の成長が極限を過ぎ、衰えの兆しを見せ始めた状態を表しているとされる。
後に、覚え易くするために動物の馬が割り当てられた。
2月の最初の午の日は初午と呼ばれ、稲荷社の縁日となっている。
相場格言に「辰巳天井、午尻下がり、未辛抱、申酉騒ぐ。
戌は笑い、亥固まる、子は繁栄、丑はつまずき、寅千里を走り、卯は跳ねる」があり、午年の相場は俗に一服する相場といわれる。
禾
イネ科、アワ科の植物
飧
ソン、ばんめし
粒々
一粒一粒。全ての粒。
辛苦
《名・ス自》つらく苦しいこと。苦労すること。難儀。
謾(ひたり)
おこたる/あなどる/軽く見る/あざむく/だますなどの意味をもつ漢字。
季神が詩を、
季神(固有名詞)
陬
[音]スウ(慣)
片すみ。片いなか。