181:『幸四郎的奇跡のはなし』
松本 幸四郎 (著)
東京新聞出版局
2011年10月
173ページ 1,890円
松本幸四郎が昨年十一〜十二月、東京新聞夕刊などに連載した「この道」が「幸四郎的奇跡のはなし」(東京新聞、千八百九十円)と題して本にまとめられ、出版された。今年は幸四郎襲名三十年の節目、来年は古希を迎える幸四郎の話。
【目次】
奇跡のはなしその一(弁慶の旅/一期一会 ほか)
奇跡のはなしその二(三代襲名と父母との別れ/内蔵助と由良之助 ほか)
奇跡のはなしその三(現代劇ハムレット/王様と越路さん ほか)
奇跡のはなしその四(黄金の日日/山河燃ゆ ほか)
奇跡のはなしその五(四つのちょっとしたエピソード/権ちゃん、早いよ! ほか)
【著者情報】
松本幸四郎(マツモトコウシロウ)
歌舞伎役者。1942年、八代目松本幸四郎(初代松本白鸚)の長男として東京に生まれる。3歳で初舞台。1981年、九代目松本幸四郎を襲名。2008年、『勧進帳』の弁慶役で1000回を達成。『ラ・マンチャの男』は1100回を記録。また、演劇企画集団「シアターナインス」、歌舞伎企画集団「梨園座」を立ち上げ、自ら演出も手がける。1980年に芸術院賞、2006年に紫綬褒章、2008年に芸術院会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
『幸四郎的奇跡のはなし』を楽しむ。
こういった本は非常に早く読めるが、何しろ高校生の頃から好きな幸四郎丈の事。丁寧に時間をかけて読むことにした(^^)v
何やら幸四郎さんらしい内容がつづられている。
中でも家族に対しての愛情の深さには、心が温かくなる。
そういえば南座の楽屋の、幸四郎さんのお机の上にはお子様たちのお写真が飾られていた。
高校の頃から感心するのは、気品に満ちた優雅でお美しい藤間則子さん。
楽等の廊下や、南座ロビーでご贔屓さんにご挨拶なされている美しさは、長年見続けている。
幸四郎さんはお内儀様の思いやりやご協力も言葉になさっておられ、主婦のわたくしは幸四郎さんの奥様に対するおやさしい表現が心暖かく、嬉しい思いで本書を拝見させていただいた。
幸四郎さんは舞台に非常に熱心な方で、この本でも舞台や歌舞伎等の核部分に触れられている。
その中でわたくしが心に残った歌舞伎部分のごく一部だけを記録しておきたい。
…歌舞伎を含めたすべての演劇の台詞には、耳の修練が必要…。修練というよりしつこいまでの「真似る学び」…。ヨーデルのように裏返った声や、意味のへったくれも無く何でも大声で間延びした歌舞伎の台詞などあるはずがない。
(本書60より引用)
加えて本書最後の方で、最近のお客さんは歌舞伎でも能楽・狂言でもまた他の舞台でも、良いものだけ見るといった人が増えている(要約)ともおっしゃっていた。
幸四郎さんは観客の動向も把握されている。昨今の商業演劇のさらなる目指す方向の中で、幸四郎さんを含めた基礎ベースがあり古典歌舞伎が演じられる多くの役者さんのジレンマを感じる。
……と、友人が申しておりました(*^-^*)
わたくしごとに置き換えるならば、このまま歌舞伎とは縁遠くなるのか…TVで見る歌舞伎でさえ時間が惜しく感じる舞台が増えるのかと思うと、冬は長く心寒く感じる。
……と、友人が申しておりました(*^-^*)