仮名手本胸之鏡 下 14 二丁裏 三丁表
早稲田大学所蔵
https://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he13/he13_02946/he13_02946_0054/he13_02946_0054.html
仮名手本胸之鏡 下
山東京伝 作
歌川豊国 画
早稲田大学デジタル図書
通油町(江戸) [蔦屋重三郎]
寛政11 [1799]
黄表紙
仮名手本胸之鏡 下 14 二丁裏 三丁表
下 一丁裏 上
やけのゝきゞす、よるのつるてう
るひ ちゝとひでさへしさぬ
ものハ なし、
しかる
をおや
のみ
にて
子を
かさ
ん
と
する
ハ
これ
み
な
の
ぎりにせめらるゝ
なり、そのくるしみ
いかばかりならん
「こなせがかたなをふり
あげたところハ、こなみが
いのちハまことにかぜのまへの
ともしびのごとくなり
刀を振り上げる鬼の頭に ぎり
なんとぎりハかれまいが
ぎり/″\むすめをころ
せやひ
風神のような鬼
油壺には 命
鬼は油壺の灯火に大風を吹きかける
女の着物に も
女は刀を持ち、刀を持つ鬼と戦っている。
「おやの身で
なんとかたなが
あてらりやう
あゝ、くるしや
/\
泣き崩れる女
おん
あい
親の帯は、泣き崩れる女(娘)に繋がっている。
娘が親に引かれているような状態
親の着物は、波文様
袖に 本 (親の名は本ぞう)の文字
下 三丁表 下
本ぞう、子ゆへの
やみにまよひて
おん、あいにひか
るゝ
鏡に写る画
家に中では祈る女に、刀で切りつける女
外戸口で虚無僧に扮した男が、家の中をのぞいている
鏡の下には
おや の おん の かゞみ
親の恩の鏡
下 三丁表 下
ほんぞうが子ゆへのやみに
まよひて、おん、あいにひる
るゝところあたりも、おゝつ
ゑのざとうのごとし
「かゝるおやのおんをしらぬ
子ハとり、けだものにもおとるべし
これらがよきおやのおんのおんぞ、こと
なり
仮名手本胸之鏡 下 14 二丁裏 三丁表
下 一丁裏 上
やけのの きぎす、夜の鶴、鳥
類 父とひでさえしさぬ
ものは 無し、
しかる
を親
のみ
にて
子を
かさ
ん
と
する
は
是
皆
の
義理に責めらるる
也、其苦しみ
如何ばかりならん
「こなせが刀を振り
上げたところは、こなみが
命は誠に風の前の
灯火の如く也
刀を振り上げる鬼の頭に ぎり
なんと義理が枯れまいが
ぎりぎり娘を殺
せやい
風神のような鬼
油壺には 命
鬼は油壺の灯火に大風を吹きかける
女の着物に も
女は刀を持ち、刀を持つ鬼と戦っている。
「親の身で
なんと刀が
当てらりょう
ああ、苦しや
苦しや
泣き崩れる女
恩
愛
親の帯は、泣き崩れる女(娘)に繋がっている。
娘が親に引かれているような状態
親の着物は、波文様
袖に 本 (親の名は本ぞう)の文字
下 三丁表 下
本蔵、子故の
闇に迷いて
恩、愛に引か
るる
鏡に写る画
家に中では祈る女に、刀で切りつける女
外戸口で虚無僧に扮した男が、家の中をのぞいている
鏡の下には
おや の おん の かゞみ
親の恩の鏡
下 三丁表 下
本蔵が子故の闇に
迷いて、恩、愛にひる
るる所辺りも、大杖
の座頭の如し
「かかる親の恩を知らぬ
子は鳥、獣にも劣るべし
これらが良き親の恩のおんぞ、こと
也
こなせ(固有名詞)、こなみ(固有名詞)
「こなせが刀を振り
上げたところは、こなみが
命は誠に風の前の
灯火の如く也
→父親の着物が波文様なのは、娘の名によるものか、、、
ざとう 座頭
1盲人の琵琶(びわ)法師の位。勾当(こうとう)の下。
2頭髪をそった盲人で、琵琶・三味線(しゃみせん)をひいて語り物を語ったり、あんま・はり等を業としたりした者。