仮名手本胸之鏡 上 3 一丁裏 二丁表
早稲田大学所蔵
https://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he13/he13_01505/
仮名手本胸之鏡 上
山東京伝 作
歌川豊国 画
早稲田大学デジタル図書
通油町(江戸) [蔦屋重三郎]
寛政11 [1799]
黄表紙
仮名手本胸之鏡 上 3 一丁裏 二丁表
人のざい、一につゝ
しむべきハしきよく
なり、むかし
よりこのた
めに、いへを
やぶり、みを
ほろぼせし
人、うそへつく す
べからすこと、たとへバ
おんなのゑくぼのうち
より
まよひ
のくも
といふわる、きくも
あらわれいでゝ
おとこの
心の名月(めいけつ)
をおほひ
かくす
しるとき
ハ、おとこの
そめし人
の
やみとなり、たちまち
ぼんのうのいぬ、わがむねより
とびいでゝ、わがみをくらふ、
これをこひのやみといふる也
おかめ八目といゝて、おかめから
みることきハ、八ツの目(め)ありて、これ
をあしきことゝ、名人ごと、わがみに
なりてハ、もろともに、恋の
やみにまよふなり、つゝしむ
べし
名月(座る男の画)
(立って男を見る女の画)
ほんのうのいぬほたる
「はなにあそばゞ
ぎをんあたりの
二丁裏
いろぞろへ
わん/\の
わん、とさ (犬がなく画)
二丁裏 (丸枠に立つ女に文を渡す男と、覗く男の画)
しきよくのかがみ
色欲の鏡
女色(じやじやく)のために、人を
そこなひ、そのみを
ほろびし、いへとかし
のうことハかゞみに
うつる、きやうげん、ゑの
ごとし
仮名手本胸之鏡 上 3 一丁裏 二丁表
人の財、一に慎む
べしは しき 良く
也、昔
よりこのた為
に、家を
破り、身を
滅ぼせし
人、嘘へつく す
べからす事、例えば
女の笑窪(えくぼ)の内
より
迷い
退くも
と言うわる、聞くも
あらわで出(いで)て
男の
心の名月
を覆い
隠す、
知る時
は、男の
染めし人
の
闇と成り、たちまち
煩悩の犬、我が胸より
飛び出でて、我が身を喰らう、
これを恋の闇と云うる也
岡目八目と云いて、岡目から
見る如きは、八ツの目有りて、これ
を悪しき事と、名人ごと、我が身に
成りては、もろともに、恋の
闇に迷うなり、慎む
べし
名月(座る男の画)
(立って男を見る女の画)
煩悩の犬蛍
「花に遊ばば
祇園辺りの
二丁裏
色添えへ
わん/\の
わん、とさ (犬がなく画)
二丁裏 (丸枠に立つ女に文を渡す男と、覗く男の画)
しきよくのかがみ
色欲の鏡
女色(じやじやく)の為に、人を
損なひ、その身を
滅ぼし、いへとかし
のう事は、鏡に
写る、狂言、絵の
如し