『疱瘡心得草』10 09丁裏 10丁表 志水軒朱蘭 述
『疱瘡心得草』 志水軒朱蘭 述
一冊
出版 蓍屋善助
寛政10 [1798]
国立国会図書館デジタルコレクション
請求番号 852-26
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『疱瘡心得草』
国立国会図書館所蔵
09丁裏
出(いで)て、その色上(いろうへ)へ白(しろ)く、根(ね)あかくして、瘡(かさ)に光(ひか)り有(あつ)て、手に
て 探(さぐ)れば、さわる度(たび)に、熱(ねつ)さつはりと覚(さ)め、食事(しょくじ)すゝみ
大便小便(だいべんせうべん)常(つね)の如(ごと)きは、吉痘(きつとう)なり、頭面(かしらおもて)にあまた出(いづ)るといへ
ども、粒(つぶ)わかれて肌(はだ)の地(ぢ)あざやかなれバ、気遣(きづか)ひなし、
もしハ蚕(かいこ)の種(たね)のごとくなるものもらハ、其色(そのいろ)白(しら)け 肌(はだ)の
色(いろ)と同(おな)じ やけどの様(やう)なるもの、出(いづる)かと思(おも)へば 隠(かく)れかくるゝ
かと思(おも)へば、顕(あらハ)るゝもの、発熱一二日にして見点(けんてん)し、又は
熱(ねつ)なくして見(み)へて熱(ねつ)出(いづ)るものは、至(いたつ ママ)つて大切(たいせつ)なり、
始(はじめ)額(ひたい)よりみゆるを、吉(よし)とす、頤(おとがひ)咽(のど)の下より見(み)ゆるハ
必(かなら)ず出物(でもの)多(おゝ)し、両(りやう)の頬(ほう)の痘粒(いもつぶ)分(わか)れて出(いづ)るは吉(きち)
熱(ねつ)さつはりと覚(さ)め
熱さっぱりと冷め
蚕(かいこ)の種(たね)のごとくなるものもらハ
蚕の種(たね)の如くなる物(を)もらば(貰えば)
国立国会図書館所蔵
10丁表 左
症(しやう)なり、いづれ両(りやう)の頬(ほう)ハべつたりとて、粒(つぶ)たち分(わか)れ
がたきものなり、両(りやう)の頬(ほゝ)さへたち出(いつ)れバ、跡(あと)より多(おゝ)く出(いて)ぬ
もの也、惣(そう)じてよひ疱瘡(ほうさう)ハ、むね、腹にはなきもの也
又 頭面(かしらかほ)に見(み)へずして、手足(てあし)或(あるひ)ハ 腰尻(こししり)のあたりより
見(み)ゆるものは 逆(ぎゃく)にしてよろしからず、又 此時(このとき)皮(かわ)ひとへ
内にありて、出(い)で浮(う)かざるものハ、甚(はなは)た 六ヶ敷(むつかし)、是非(ぜひ)に
狂騒(くるいさわぎ)て、むしやうになくものなり、介抱(かいほう)の人(ひと)随分(ずいぶん)と
心(こゝろ)を附(つく)べし、見点 三日を出そろひとす、足に出るを
云(い)ふ、軽(かろ)きは足(あし)のうらになくても、三日になれば
出揃(いでそろい)とすべし。疱瘡(ほうさう)の三関(さんせき)は 先(まづ)弐度(にど)の関所(せきしよ)