富田高至 編者
恩頼堂文庫旧蔵本 『仁勢物語』 37 十七丁裏
和泉書院影印業刊 65(第四期) 1998年
37 十七丁裏
◯をかし男、銭えりける女に、いへりけり、うしろめた
くや、おもひけん
破ならて こと銭選るな かたなしや
ころかけとらぬ 法度なりとも
返し
札立て きハめし銭を ひとりして
あひよみはかり えらしとそおもう
◯おかし男、銭選(え)りける女に、言えりけり、後ろめた
くや、思いけん
我ならで こと銭選(え)るな 形無しや
ころ 掛け 取らぬ 法度なりとも
返し
札立て 極めし銭を 一人して
相読み計り 選(え)らじとぞ思う
破ならて
(われならで 我ならで)当て字
缺(かけ-る)
欠ける、完全な形では無い、
『仁勢物語』和泉書院影印業刊
破ならて こと銭選るな かたなしや
ころかけとらぬ 法度なりとも
『伊勢物語』岩波古典文学大系9より写す
我ならで 下紐(したひも)とくな 朝がほの
夕影(ゆうかげ)またぬ 花にはありとも
『仁勢物語』和泉書院影印業刊
棚せハみ みちまてほせる唐油蓑
あそぶとさらに わがおもハなくに
『伊勢物語』岩波古典文学大系9より写す
二人して 結びし紐を ひとりして
あひ見るまでは 解かじとぞ思(ふ)
↧
恩頼堂文庫旧蔵本 『仁勢物語』 37 十七丁裏
↧