富田高至 編者
恩頼堂文庫旧蔵本 『仁勢物語』25 「秋の夜に さハしら柿の味よりも あわせさるにも 味まさりけり」十五丁表
和泉書院影印業刊 65(第四期) 1998年
左
十五丁表
をかし男有りけり、熟(シュクシ)柿ともいはさりける柿の
さすかにうまけりけれハ、女の元にいひやりける、
秋の夜に さハしら柿の味よりも
あわせさるにも 味まさりけり
柿このみなる女返し
残もなき われをハすきとしらねハや
こる/\柿の あちよくもくふ
十五丁表
◯おかし男有りけり、熟し柿とも云わざりける柿の
流石に美味けりければ、女の元に言いやりける、
秋の夜に さ は 知ら柿の味よりも
合わせざるにも 味勝りけり
柿好みなる女返し
残も無き 我をば好きと知らねばや
コルコル(コリコリ)柿の 味良くも食う
熟柿(シュクシ あわじ →会わじ)
『伊勢物語』では、「言わざりける女」おとこに会おうとも言わず、また、あわないとも言わなかった。思わせぶりなしぎさをする女で、しかもそう云いながら、情ありげで、いざとなると会おうとしない女。 岩波古典文学大系『伊勢物語』 頭注
こる/\
こり/\(柿の食感)
『仁勢物語』和泉書院影印業刊
秋の夜に さハしら柿の味よりも
あわせさるにも 味まさりけり
『伊勢物語』岩波古典文学大系9 「竹取物語 伊勢物語 大和物語」より写す
秋の野に 笹わけし朝の袖よりも
逢はでぬる夜ぞ ひぢおまさりける
『仁勢物語』和泉書院影印業刊
残もなき われをハすきとしらねハや
こる/\柿の あちよくもくふ
『伊勢物語』岩波古典文学大系9 「竹取物語 伊勢物語 大和物語」より写す
見るめなき わが身をうちと知らねばや
かれなで海人(あま)の 足たゆく来る