富田高至 編者
恩頼堂文庫旧蔵本 『仁勢物語』 13 「武蔵坊 さすがほどなる薙刀を 振らぬもつらし 振るもうるさし」「
ふれはいふ 振らねハうらむ武蔵坊 かゝる折にや 人ハいふらん」七丁表 七丁裏
和泉書院影印業刊 65(第四期)
1998年 初版
1997年 第三
左
七丁表
◯をかしむさしと云男京なる女のもとに「聞ゆ
れははつかし、聞えねハ、くさし」とかきて、うはかき
に「むさし坊弁慶」と書て、ほそ心さしをこせて
後音もせすなりにけれハ、京より女
武蔵坊 さすがほどなる薙刀を
右
七丁裏
振らぬもつらし 振るもうるさし
とあるをみてなん、はつかしき心ちしける
ふれはいふ 振らねハうらむ武蔵坊
かゝる折にや 人ハいふらん
七丁表
◯おかし武蔵と云う男京なる女の元に「聞ゆ
れば 恥ずかし、聞えねば、くさし」と書きて、上書き
に「武蔵坊弁慶」と書て、細心さしを越せて
後音もせずなりにければ、京より女
武蔵坊 流石ほどなる薙刀を
七丁裏
振らぬも辛し 振るも煩(うる)さし
と有るを見てなん、恥づかしき心地しける
振れは言う 振らねば恨む武蔵坊
かかる折にや 人は言うらん
くさし(くさす 腐す)
《五他》悪く言う。けなす
『仁勢物語』和泉書院影印業刊
武蔵坊 さすがほどなる薙刀を
振らぬもつらし 振るもうるさし
『伊勢物語』岩波古典文学大系9 「竹取物語 伊勢物語 大和物語」より写す
武蔵鎧(あぶみ) さすがにかけて頼むには
とはぬもつらし とふも五月蠅し
『仁勢物語』和泉書院影印業刊
ふれはいふ 振らねハうらむ武蔵坊
かゝる折にや 人ハいふらん
『伊勢物語』岩波古典文学大系9 「竹取物語 伊勢物語 大和物語」より写す
とへばいふ とはねば恨む武蔵鎧(あぶみ)
かゝるおりにや 人は死ぬらん