富田高至 編者
恩頼堂文庫旧蔵本 『仁勢物語』 12 七丁表
和泉書院影印業刊 65(第四期)
1998年 初版
1997年 第三
左
七丁表
◯をかし男有りけり、きりしたんのご法度よりて、武蔵野へ
つれて行ほとに、科人なれは、町奉行にからめら
れにけり、女も男も草村の中にをきて、火つけん
とす、女わひて
むさし野は けふハなやきそ浅草や
妻もころへり われもころへり
とよみけるを聞て、夫婦なから扶てはなちけり
七丁表
◯おかし男有りけり、切支丹のご法度よりて、武蔵野へ
連れて行くほどに、科人なれば、町奉行に絡(から)めら
れにけり、女も男も草村の中にを来て、火付けん
とす、女詫びて
武蔵野は 今日は な 焼きそ 浅草や
妻も転げり 我も転げり
と詠みけるを聞て、夫婦ながら、扶て放ちけり
きりしたん(切支丹)
扶て(たすけて)(扶 フ たすける)
妻(夫)
女詫びて
武蔵野は 今日は な 焼きそ 浅草や
妻(夫)も転げり 我(女)も転げり
と詠みけるを聞て、夫婦ながら、扶て放ちけり
『仁勢物語』和泉書院影印業刊
むさし野は けふハなやきそ浅草や
妻もころへり われもころへり
『伊勢物語』岩波古典文学大系9 「竹取物語 伊勢物語 大和物語」より写す
武藏野は けふは焼きそ若草の
つまもこもれり 我もこもれり