山東京傳作 ゑとむまれ『艶氣樺焼 下』三ウ 四オ(浮気の蒲焼 下)稀書複製会 21
三ウ
さいごのばも
いきなばつとした
ところとの事にて
三めぐりのどてと
きめよが老けてハ
きミが悪いから
よいのうちの
つもりにて
ゑん二郎につとめ
ちややふる宿
たいこまつしやげい
しやどもだい/″\
こうのおくりの
やふニはつま
はおりにて
大川ばしまで
おくり申たゞの
やくしの
あたりして
ミな/\にわかれ
ゑん二郎ハ日ごろのねがい
かるいしとこゝろうれしく
道行をしてゆきこゝこそ
よきさいごばとはくおきの
四オ
わきざしをぬいてすでに
こうよとミへ
なむあミだぶつといふを
あいずニいなむらのかげゟ
くろしやぞくの
どろぼう
ふたりあら
われ
い
て
ふ
た
り
を
まつ
ぷたつに
して
はぎ
とる
わいらハ
とふで
しぬものだ
から
おいらが
かいしやく
して
やろ
う
三ウ
これ/\
はやまるまい
われ/\ハ
しぬための
しんぢうでハ
ない、こゝへ
とめてが
でるはづだ
どふま
ちがつた
か
しらん
きものハミんな
あげましやう
からいのちハ
おたすけ/\
四オ
もうこれニ
こりぬ事ハ
ござり
ません
此いで
こんな
おもい
つきハ
せないか
/\
三ウ
どうでこんなことゝ
おもいん
した
だい/″\こう =太太講 (大辞林 第三版)
太太講 =伊勢太太講
室町時代以後、無尽のような仕組みで、交代で伊勢参りをして太太神楽だいだいかぐらを奉納する費用を積み立てた組合。
江戸時代に盛行。伊勢講。太太講。
此処はあまり言葉を調べる必要がないので、芝居がかったゑん二郎の行動の面白さに注目したい。
黒装束の泥棒はといえばおかるのちとやから金を盗む『仮名手本忠臣蔵』の定九郎を思い浮かべる。
こやから手を出し、殺したおかるの親の懐から金を抜き取り、右手でその重みを測り一言曰く、
「ごじゅぅりょぉう〜(五十両)」
悪者だが、定九郎のこの場を待ち望んでいる観客は少なからずいらっしゃるであろう。
本文では黒装束の泥棒は二人と書かれているので、『仮名手本忠臣蔵』の定九郎のその場とは違うが、そんなことを思い浮かべた。
狂言心中は江戸時代には多かったのか。
江戸時代には心中が流行り、心中に憧れる女性も多かったという。
狂言自殺で、本当に死んでしまったら、どうしようもない。
この草紙ではそこのところは気をつけているようだ。
それにしてもモテない男がモテようとするこの話は面白い。
微笑ましささえ感じるゑん二郎の書かれた顔の鼻は、京傳鼻(京伝鼻)という。
(読み間違いはお許しください。)
山東京傳作 ゑとむまれ『艶氣樺焼 上』(浮気の蒲焼 上)稀書複製会 1
山東京傳作 ゑとむまれ『艶氣樺焼 上』一オ(浮気の蒲焼 上)稀書複製会 2
山東京傳作 ゑとむまれ『艶氣樺焼 上』一ウ(浮気の蒲焼 上)稀書複製会 3
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山東京傳作 ゑとむまれ『艶氣樺焼 上』二ウ(浮気の蒲焼 上)稀書複製会 5
山東京傳作 ゑとむまれ『艶氣樺焼 上』三オ(浮気の蒲焼 上)稀書複製会 6
山東京傳作 ゑとむまれ『艶氣樺焼 上』三ウ(+4オ)(浮気の蒲焼 上)稀書複製会 7
山東京傳作 ゑとむまれ『艶氣樺焼 上』四オ(浮気の蒲焼 上)稀書複製会 8
山東京傳作 ゑとむまれ『艶氣樺焼 上』四ウ(浮気の蒲焼 上)稀書複製会 9
山東京傳作 ゑとむまれ『艶氣樺焼 上』五オ(浮気の蒲焼 上)稀書複製会 10
山東京傳作 ゑとむまれ『艶氣樺焼 上』五ウ(浮気の蒲焼 上)稀書複製会 11
山東京傳作 ゑとむまれ『艶氣樺焼 中』一オ(浮気の蒲焼 中)稀書複製会 12
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山東京傳作 ゑとむまれ『艶氣樺焼 中』二ウ、三オ(浮気の蒲焼 中)稀書複製会 14
山東京傳作 ゑとむまれ『艶氣樺焼 中』三ウ、四オ(浮気の蒲焼 中)稀書複製会 15
山東京傳作 ゑとむまれ『艶氣樺焼 中』四ウ、五オ(浮気の蒲焼 中)稀書複製会 16
山東京傳作 ゑとむまれ『艶氣樺焼 中』五ウ(浮気の蒲焼 中)稀書複製会 17
山東京傳作 ゑとむまれ『艶氣樺焼 下』一オ(浮気の蒲焼 下)稀書複製会 18
山東京傳作 ゑとむまれ『艶氣樺焼 下』一ウ 二オ(浮気の蒲焼 下)稀書複製会 19
山東京傳作 ゑとむまれ『艶氣樺焼 下』二ウ 三オ(浮気の蒲焼 下)稀書複製会 20
山東京傳作 ゑとむまれ『艶氣樺焼 下』三ウ 四オ(浮気の蒲焼 下)稀書複製会 21
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第三七號(第37号)
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