山東京傳作 ゑとむまれ『艶氣樺焼 下』一ウ 二オ(浮気の蒲焼 下)稀書複製会 19
一ウ
ゑん二郎いよいよのりがきて
かれこれとするうち七十五日の
日ぎりがきれうらかたゟハ
かんどうをゆるさんと
まい日のさいそく
なれども
いまだうわきを
したりねバ
しんるい中の
とりなしにて
廿日の日のへ
をねがひ
どふして
もしんぢう
ふどうり
きなものハ
あるまいと
てまへハいのちも
すてるき
なれども
それでハうきなか
ふしやうちゆへ
うそしんぢうの
つもりにて
さきへきのすけと
二オ
しあんを
ゆつておき
なむあミ
だぶつと
いふをあいづニ
とめさせる
ちうもんにて
まづうきなを
千五百両にて
身うけてをし
しんぢうの道ぐ
だてをかいあつめる
ついの小そでの
もよふにハかたにかなてこ
すそにハいかりしちに
おゐてもん下がれの
ミといふ古かの
こゝろを
まなばれたり
これも中やと
やまざきの
もうけ
ものなり
一ウ
ふたりが
じせいの
ほつくハ
すりものに
して
中の丁へ
くば
らせる
花らんが
二オ
かいたはすのゑを
大ぼうしよへから
ずり
とハ
いゝ
おぼし
めし
つき
だ
古かもこゝろ =古歌の心
謡曲『邯 鄲(かんたん)』
「不老長寿の前には日月遅しといふ心を学ばれたり」などの文勢を真似たり。(『黄表紙 洒落本』日本古典文学大系 頭注引用)
謡曲『邯 鄲(かんたん)』
【分類】四番目物 (雑能)
【作者】不詳
【主人公】シテ:盧生
中国、蜀の国の盧生という青年が、人生に迷いを感じ、楚の国羊飛山に住む賢者に人生とは何か、問うてみようと旅に出ます。
途中、邯鄲の里へ着き、一見の宿屋に泊まります。
その宿の女主人は、かつて仙人の法を使う人を泊めたときにそのお礼にと不思議な枕をもらいました。その枕を使って寝ると、夢によって悟りを開くというのです。女主人は盧生の素性や旅の目的などを聞くと、食事の用意が出来る間、しばしその枕を試してみるように勧めます。
そこで盧生も、その枕を借りて一眠りすることにします。
うとうとすると起こす人がいます。楚の国の帝が位を盧生に譲るという勅使です。
盧生は勅使に促されて、天にも昇る心地で輿に乗って宮殿に赴き、王位につきます。
それから50年酒宴は続き、盧生も歓喜の舞をまい、栄華を極めた毎日を送ります。
と、その時、宿の女主人が粟の飯が炊けたと起こしに来ます。
目を覚ました盧生は、全ては夢であったのかと、しばらくは呆然としますが、人生何事も一炊の夢と悟り、不思議な枕に感謝しながら、自分の故郷である蜀の国へと帰っていくのでした。
(http://www5.plala.or.jp/obara123/u1201kantan.htm)
中やと =中宿(なかやど→なかじゅく)
1602年(慶長7年):徳川家康の命により中山道が整備され、伝馬制度により板橋宿が中山道の江戸日本橋側より最初の宿場として設置される。
板橋区の南東部に位置する。
狭小な町域を持ち、北端で石神井川に接する。
北で石神井川を隔てて本町および稲荷台、東で加賀、南で板橋、西で氷川町と隣接する。
西辺を国道17号(中山道)および首都高速5号池袋線が南北に通じる。
南端に東京都道317号環状六号線(山手通り)の終点がある。町域は旧街道沿いを中心に商業地域となっている。 (ウィキペディア引用)
ほつく =発句
花らんがかいたはすのゑを大ぼうしよへからずりとハ
いゝおぼしめしつきだ =花魁が描いたはずの絵を大奉書へ空摺りとは、いい思し召し付きだ
大奉書 =大判の奉書紙。縦約40センチ、横約55センチ。
空摺り =からずり
版画技法の一種。
凸版、凹版にかかわらず、版面にインクをつけずプレスなどで圧力を加え、紙に凹凸を刷り出す方法。
またはそのようにして刷ったもののことをいう。
エンボッシュという、いわゆる空押しも空刷りと同義語。
浮世絵版画では伝統的に空摺りと書き、ばれんで圧力を加えて衣服のひだや文様、波文や鳥の羽毛などを無色の凹線であらわす
画面をより精緻に表現する手法として、錦絵の草創期に鈴木春信によって盛んに用いられ、その後も摺物や絵本など小画面の彩色摺に用いられた。
広義には色刷を終えた画面を凹版にあて、裏面から圧力を加えることで浮彫風に画面を盛り上げるいわゆる木目込(きめこみ)技法を含む。
空摺りは浮世絵の好きなかたには馴染みの言葉だと思う。そういう私も多少ではあるが、江戸時代!の浮世へを集めている。
昔おもしろい方に巡り合ったことがある。
空摺りで有名な浮世絵師の一人、鈴木春信の雪の中傘をさす二人の美人画のこと。
その紳士所蔵の明治にすられた外人向けお土産品用の品で、ごねられた。
鈴木春信は空摺りではい。鈴木春信は○○刷りが特徴であると書物に書いてありました。だから素人は怖い(笑)、と。
確かに雪の部分は真綿を使い質感を出しておられたが、二人美人の着物の部分は、丹後縮緬の地織りの質感を表すために、空摺りがなされている。
私は素人だが、出身地がら、着物に触れる機会が多かった。
一見紳士風に思えたが、知的に見えても怖い人がいるものだと感じた。
空摺りという言葉が出てきて、ふとそのようなことを思い出した。
文中に、
ふたりが
じせいの
ほつくハ
すりものに
して
中の丁へ
くば
らせる
とあるが、故勘三郎さんが演じられた『浮かれ心中』を思い浮かべた。
彼の役どころは売れない草紙作家で、山東京傳(本書の作家)に憧れている。
彼は、江戸時代に流行った心中にちなみ、心中の狂言を体当たりではって草紙にすれば売れると考えたのだが…
結論として女だけ生き残り、売れない草紙作家は本当に亡くなってしまったと言った芝居であった。
そんなこともふと思い出した。
(読み間違いはお許しください。)
山東京傳作 ゑとむまれ『艶氣樺焼 上』(浮気の蒲焼 上)稀書複製会 1
山東京傳作 ゑとむまれ『艶氣樺焼 上』一オ(浮気の蒲焼 上)稀書複製会 2
山東京傳作 ゑとむまれ『艶氣樺焼 上』一ウ(浮気の蒲焼 上)稀書複製会 3
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山東京傳作 ゑとむまれ『艶氣樺焼 上』三オ(浮気の蒲焼 上)稀書複製会 6
山東京傳作 ゑとむまれ『艶氣樺焼 上』三ウ(+4オ)(浮気の蒲焼 上)稀書複製会 7
山東京傳作 ゑとむまれ『艶氣樺焼 上』四オ(浮気の蒲焼 上)稀書複製会 8
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山東京傳作 ゑとむまれ『艶氣樺焼 上』五オ(浮気の蒲焼 上)稀書複製会 10
山東京傳作 ゑとむまれ『艶氣樺焼 上』五ウ(浮気の蒲焼 上)稀書複製会 11
山東京傳作 ゑとむまれ『艶氣樺焼 中』一オ(浮気の蒲焼 中)稀書複製会 12
山東京傳作 ゑとむまれ『艶氣樺焼 中』一ウ、二オ(浮気の蒲焼 中)稀書複製会 13
山東京傳作 ゑとむまれ『艶氣樺焼 中』二ウ、三オ(浮気の蒲焼 中)稀書複製会 14
山東京傳作 ゑとむまれ『艶氣樺焼 中』三ウ、四オ(浮気の蒲焼 中)稀書複製会 15
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山東京傳作 ゑとむまれ『艶氣樺焼 下』一ウ 二オ(浮気の蒲焼 下)稀書複製会 19
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第三七號(第37号)
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